阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2013年4月19日 [スクープ]フェニックス・キャピタル安東元代表への公開質問状

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三菱東京UFJ銀行(BTMU)系のファンド、フェニックス・キャピタルは2002年に設立された。手がけた最大の案件は、2004年にダイムラークライスラーの追加支援打ち切りで経営危機に陥った三菱自動車だろう。

巨大債権を抱えるBTMUは、資本増強策を柱とする再建計画を立て、三菱御三家を中心とした三菱グループ各社と中華汽車が優先株による増資に応じ、さらにフェニックスが普通株、JPモルガンが優先株での増資に応じることになった。

ところが、05年になると、これらの増資では不十分と言われ、三菱グループを中心に再増資が行われたのです。この過程でBTMUとフェニックスが対立、フェニックスが分裂する事態になりました。そこから明らかにフェニックスがBTMUに従属し、「痰壺」化していくのです。ニイウスコーなどもその過程で派生した事件です。とすれば、フェニックスの「痰壺」化の原点は、三菱自動車の再建をめぐる葛藤にあったのではないかと本誌は考えました。

そこで、フェニックスの創業者で、三菱自動車の増資に関わったのち、フェニックスと袂を分かった安東泰志ニューホライズン・キャピタル代表こそ、フェニックスの「変質」を知る人間と考えました。フェニックスに送った質問状と同日、以下のような質問状を送った次第です。

ニューホライズン・キャピタル
会長兼社長 安東 泰志 様

フェニックス・キャピタルについての質問状

ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人 阿部重夫

拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。ご承知のとおり、弊誌は昨年7,8,9月号で、ニイウスコー事件を再検証する記事を掲載いたしました。フェニックス・キャピタル創業者である安東氏は当時、ニイウスコーの経営実態を知る立場にあったと考え取材をご依頼いたしましたが、守秘義務を理由にご回答いただいておりません。そのフェニックスが最近、富士テクニカ宮津のTOBやティアック株の売却などで動きだしました。そこで改めて取材をお願いしたいと存じます。お尋ねしたい項目は以下の通りです。

① フェニックスの今回の富士テクニカ宮津へのTOBのリリースを見ますと、弊誌報道以来、フェニックスは新規募集をしていないので、安東氏がフェニックス時代に組成したファンドの投資家が支払った管理報酬があてられている可能性が高いと思います。これについてファンドの組成者として責任を感じませんか。

② ティアックへの投資も、安東氏がフェニックス代表だった時代に始めたと聞いています。結局、ディスカウントTOBになって大きな損失を被りましたが、それについてコメントをいただきたいと思います。

③ フェニックスが受け取った管理報酬は、社内でどのように分配されたのでしょうか。本来、損失を被った投資家に返済すべき性質のものと考えられないでしょうか。

④ 04~06年に発行された三菱自動車の優先株の強制転換事項に基づき、保有する三菱グループ各社の普通株転換が始まっています。この大量優先株の発行をめぐっては、当時の三菱東京UFJ銀行担当者、田中正明氏と、フェニックス代表の安東氏の間で確執があり、怪文書も出回りましたが、対立があったのは事実でしょうか。

以上でございます。弊誌次号(4月20日刊行)の締切もあり、恐縮ですが、4月8日までに直接取材、電話取材、文書回答、さらにメールの回答でも結構でございますので、ご回答をいただければ幸いでございます。よろしくご一考ください。
敬具

4月2日

この質問状について、安東氏か以下の回答をいただいた。こちらも壁は厚い。残念。尋ねたいことはいろいろあったのに……。

4月2日付質問状についての回答書

ニューホライズンキャピタル株式会社
取締役会長 安東泰志

拝啓

陽春の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。

4月2日付にてご質問を戴きました諸点につき、以下の通りご回答申し上げます。

① 弊社は、フェニックス・キャピタル株式会社(以下「同社」)の会社分割を経て、創業者(安東)及び陣容の一部を同社から引き継いで現在に至っておりますが、現在は、弊社及び弊社代表の安東は同社の経営に関与しておらず、現在の同社の新規投資や、その投資手法についてコメントする立場にはございません。

② 同上の理由により、弊社は、現在の同社の投資回収にかかわる意思決定についてもコメントする立場にはございません。

③ 上記同様、弊社は、現在の同社の経営についてコメントする立場にはございません。
ただし、業界一般的に、管理報酬は、適切な投資運営を行うための必要経費を賄うためのものと考えられています。また、一般論として、投資家との契約において、業務執行組合員は善良なる管理者の注意をもって業務を遂行することとされており、故意または重大な過失がある場合を除き、投資家に対する損失責任は負わない旨、定められていると理解しております。

④ 弊社は、現在同社の経営に関与しておらず、また、守秘義務の観点からも、同社がこれまでに行なった、いかなる取引に関してもコメントすることはできません。
弊社代表の安東と特定の人物との関係等についての「怪文書」等が存在することは弊社としては一切承知しておりません。

弊社は、投資家に対する忠実義務を確実に果たす一方、円滑な事業再生の実現のために、三菱東京UFJ銀行様をはじめ、全国の銀行・信用金庫様と一貫して良好な協力関係を維持しており、昨今の中堅・中小企業を巡る経済情勢に鑑み、特定の銀行等との利益相反を疑われることのない独立系企業再生ファンドとして使命を全うして参る所存です。

敬具

平成25年4月8日

しかたがない。最新号記事「三菱『痰壺』ファンドの原罪」では、周辺取材を通じて安東氏側とBTMU担当部長、田中正明氏側との間に確執があったとの具体的証言を得て、当時の状況を再現した。

昔話の蒸し返しではない。三菱自動車の優先株はいまだに、自工のみならず、グループ各社にとっても重荷で、その「パンドラの箱」が優先株の普通株転換によって開き始めたのである。最新号の記事では、三菱自工が05年に行った再増資の矛盾が以下のように露呈してきたと指摘しています。

①三菱自動車が当時大量発行した優先株は、三菱グループ各社も手放すに手放せないまま、無配が続いていること。

②強制転換条項の期限である2014年6月まであと1年余に迫り、昨年夏から転換が五月雨式に始まっていること。

③三菱重工に15%強持たせ持分法適用会社にすることで、BTMUは三菱自を正常債権にすることができたが、転換が進むと重工の比率が下がって持分法適用会社が外れかねないこと。

メガバンクはどこも、フェニックスのようなファンドに不良債権を放り込み、自らの債権の健全化を吹聴してきました。三菱自動車の場合は、奉加帳方式でグループに優先株を買わせてカネを出させたうえ、元親会社の三菱重工に15%出資させて、不良債権を正常債権に化けさせる手品が使われました。

そこに“銀行のエゴ”が隠れていたのですが、今になって壁の中から骸骨が出てきたのです。記事では「天ツバ」と書きましたが、まさに「痰壺」ファンドが不良債権の飛ばしに過ぎないことの証左として、記事を読んでいただければ幸いです。