阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2013年1月24日「ハコ企業」の相棒逮捕で鬼の居ぬ間の猫ババ?

    (この記事は本日ロイターに配信したものです)

    最近「ハコ企業とは何ですか?」という質問を受けることがある。オリンパス事件に関わっていたとみられる人物が過去に、この「ハコ企業を悪用して怪しげな増資を行ったり、社債を一般投資家に引き受けさせて損失を被らせたりしたことを、我われが散々記事に書いてきたためだろう。

    仕手筋やいかがわしい投資ファンドが上場企業を乗っ取ってこれを器(=箱)とし、資産を食い散らかしたり一般投資家のカネを巻き上げたりする。まっとうな投資を心掛けて銘柄を選んでいる投資家ほど馴染みのない言葉だから、「ハコ企業とは何ぞや」という質問が出てくるのは当然だ。

    こうした企業は単なる容れ物に過ぎないから、資産や事業の有無はどうでもいいのかもしれない。上場企業という金看板を使い、実現しそうにない新規事業立ち上げを発表、株価がポンと上がって、デイトレーダーなど何も知らない“素人”筋が食いついてきたところで、こっそり売り抜けるという手口である。

  • 2013年1月24日西武HDへの質問と回答(2)

    FACTAの質問と西武HDの回答の後半です。

    6) サーベラスは西武HDの代理人を務める森田健二弁護士に不信感を募らせているようです。プリンスホテルの日教組宿泊拒否についても、森田弁護士の強硬方針に後藤高志社長が従って、プリンスホテル社長らの書類送検(起訴猶予)を招いたと聞いております。事態打開のため、森田代理人を解任するお考えはありますか。

    (回答)
     当社は一般的な企業と同様、様々な事象に対して複数の弁護士から法的な側面でアドバイスをいただいております。それらのアドバイスは参考にしつつも、当然のことながら最終的な判断は当社の経営判断として行っております。特定の弁護士に関わることについては通常コメントはしておりませんが、森田弁護士について敢えて申しあげますと、その専門性の高さから、日頃から様々な事案について適切なアドバイスをいただいております。また、ご質問に記載されている過去に訴訟となった日教組との関係については、高輪・品川地域の近隣住民、学校、病院等へのご迷惑、損害の発生を避けようと、また何より当日の受験生への悪影響を回避するために、当社グループの経営判断として行ったものです。

    7) 西武HDが発足した2006年当初、後藤社長は2008年度中の株式上場を公言していましたが、いまだ実現していません。13年中に上場が実現できるのかどうか、御社の見通しをうかがいたい。また、サーベラスとの関係がこじれて上場できない場合の後藤氏の経営責任をどう考えますか。

    (回答)
     当社は、早期にかつよい形での上場を目指し、全力を尽くしてまいりました。上場の時期については引き続き未定ですが、今後も企業価値の向上に取り組み、そのように全力を尽くしていくことが後藤の経営責任であると考えております。なお、西武HD発足後に上場時期について、正式に発表したことはございません。

    8) 後藤氏はかねて親しい斉藤惇・東証社長に橋渡しを依頼したといわれていますが、斉藤社長とこの件についてどんな話し合いをしたのかご説明ください。

    (回答)
     ご質問に記載の事実はございません。

    9) 解体が始まった赤坂プリンスホテルの再開発「紀尾井町計画」は総事業費980億円とされています。上場の見通しが立たないなかで、連結有利子負債8470億円(12年3月末)の御社は主取引銀行のみずほ銀行などから資金調達できるのでしょうか。

    (回答)
     資金調達に問題はないと考えております。
     なお、ネット有利子負債残高につきましては、2005年3月時点では13,500億円であったのに対し、2012年9月末時点では8,242億円と大幅に改善している状況です。

    10) 西武HD傘下の「西武総合企画」がプリンスホテルのリストラ社員の受け皿になっていて、レストランのシェフが駐車場の管理係などに配転されることが頻発していると言われていますが、それでもプリンスの赤字が解消しないのはなぜですか。

    (回答)
     ご質問の趣旨の事実はありません。当グループとしては、グループ全体で人材の適正配置を行っております。

     まず、西武総合企画につきましては、当初、特定旅客自動車運送事業を営むことを目的として、1983年9月1日に設立し、平成2年以降「警備業」「清掃業」にも事業を拡大してきました。2012年10月には送迎バス事業と清掃事業・警備事業という性質の異なる事業を分割し、それぞれの事業に特化することでより質の高いサービスの提供と効率的な運営を図ることを目的に分社化をいたしました。特定旅客自動車運送事業・受託管理業部門を新設分割して、新たに「株式会社西武総合企画」に、また清掃事業・警備事業につきましては、「株式会社西武SCCAT」とし、清掃、警備に限ったサービスのご提供のみならず、清掃、警備と施設管理をパッケージにしたファシリティマネジメント事業に取り組んでいます。両社ともグループ内の戦略会社であり、ご質問に記載されたような会社ではありません。

     次に、株式会社プリンスホテルの業績についてですが、リーマンショック、東日本大震災がホテル・レジャー事業に大きく影響しましたが、財務体質の強化に粘り強く取り組み、徐々に確実に収益を上げられる体質となってきました。2013年3月期第2四半期決算で発表させていただいたとおり、2012年9月末では営業利益41億円、経常利益21億円、四半期純利益18億円となっており、現状、通期でも黒字を確保できる見込みです。

  • 2013年1月23日西武HDへの質問と回答(1)

    FACTA最新号は、西武鉄道やプリンスホテルなどを傘下に持つ西武グループの持ち株会社、西武ホールディングスの再上場が、なぜこじれて暗礁に乗り上げてしまったかを報道しています。昨年12月の週刊文春報道で、筆頭株主サーベラスとの間で資本提携契約解除をめぐってトラブルが起きていることが明るみに出ましたが、FACTAは西武HDとサーベラスの応酬の全容を掌握、オーナーの堤家を封じ込めてきた後藤高志社長のもとで、西武グループに何が起きたかの「決定版」報道と言えるものです。

    カリスマ堤義明逮捕後に、メーンバンクのみずほコーポレート銀行から送り込まれた後藤社長が、堤家封じに米ファンドを引っ張り込み、今度は「東証の指導により」という名目でファンドを切り捨てようとしたのは、銀行管理会社でよく起きる「株主殺し」の典型と思えます。上場仮申請を受けた東京証券取引所も含め、企業立て直しの過程で浮かぶ日本の「間接金融の病理」に光をあてました。

    FACTAは西武HDに対し10項目の質問状を送り、年明けに同社から返答をいただいた。西武HD広報は「上場準備中の会社として情報の開示に制約がある中、最大限回答させていただく方針で対応させていただきました」との前置きしており、弊誌も記事には可能な範囲で反映したが、その誠意に呼応してここにその質問と回答の全文を掲載します。各項目の前段がFACTAの質問、後段が西武HDの回答である。

  • 2013年1月22日逃げるな! 日銀

    本日(1月22日)、日銀は政策決定会合で、あれだけ抵抗していた物価目標2%を呑み、パンツを下げてしまう。FACTAは日銀総裁会見に出ても、オブザーバー参加で質問権がないから、参加しない。しかし、日銀記者クラブの諸君は、ちゃんと質問すべきである。

    総裁、あなたは安倍政権に無理を押し付けられた顔をしているけれど、自らから望んだでしょ、と。

    そしてまた、それを指摘されるのが怖いんでしょ、と。

    その証拠をお目にかけよう。

  • 2013年1月18日緊急公開 「サハラの人質」を5カ月前に予見した記事

    アルジェリア東部のイナメナスにある天然ガスのプラント建設現場が、イスラム過激派の武装勢力に襲撃され、日本人を含む多数が人質となった事件で、アルジェリア軍が攻撃を開始、多数の死亡者が出たと報じられています。原発事故でエネルギー不安を抱えた日本の資源調達の最前線で不幸な事件に巻き込まれたことは、安倍政権にとっても最初の試練でしょう。

    「三歩先を読む」FACTAは、昨年9月号でサハラ砂漠におけるテロの危険を指摘した記事「アル・カイダが制したサハラ古代都市」を掲載しています。インテリジェンス・ジャーナリストのゴードン・トーマス氏が寄稿したもので、その書き出しはこうでした。

  • 2013年1月18日「居眠り磐音」と三菱東京UFJ

    会社の経営者がどんな本を読んでいるかは、一昔前ならサラリーマンたちの関心事だった。懐かしい森繁の「社長シリーズ」の映画を思いだせばいい。1956年の「へそくり社長」に始まり、「社長太平記」や「社長漫遊記」などなどと続いて、70年の「続社長学ABC」まで延々33本もつくられた東宝の人気シリーズだった。チョビ髭の森繁社長のまわりにはべるサラリーマンたちの生態は、まさに鼻息をうかがうヒラメたちだったから、社長の話題に合せるためにその愛読書をせっせと読んだのだ。

    今はもう、サラリーマンの大半は、社長が何を読んでいようが、何を「座右の書」としているかは、自分の関心事ではない。忙しい経営者が、どうせろくな本を読んでいるわけがない。愛読書と言ってもたいがいは時代小説――かつては山岡荘八とか、海音寺潮五郎とか、司馬遼太郎と相場が決まっていた。信長や家康、信玄や謙信、竜馬や海舟を繰り返し巻き返し特集にしていたビジネス誌も、とうにその手が効かなくなったことを悟っている。

    そんな時代に珍しいものを見た。

  • 2013年1月16日鳥居民氏を悼む――未完の 『昭和二十年』シリーズ

    30年がかりで「敗戦の年の日本」を宮中から疎開先まで網羅した1年間のドキュメンタリーに凝縮しようとする『昭和二十年』シリーズを書き続けてきた鳥居民氏の訃報がとどいた。1月4日、心筋梗塞で亡くなられた。享年84歳である。

    このブログでは、09年2月に「鳥居民『昭和二十年』第一部12巻のススメ」を掲載(本来は熊本日日新聞に載せた書評の転載)したから、早いものであれからもう4年経っている。

    完結していない大部のシリーズであるため、新聞などメディアの書評の対象にならないことを惜しみ、あえて途中で応援歌を書いた。ご本人からは丁重な礼状をいただき、さらに弊誌の読者になっていただいたことは望外の喜びだった。賀状もいただくようになったが、今年は賀状の代わりに逝去の知らせになってしまったのは残念である。

    その書評で私はこう書いた。