阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2012年6月20日 [leaks]大証の不名誉な記録が85日でストップ、物笑いの種に

  • はてなブックマークに追加

大証がついにFACTAに白旗をあげました。昨日(6月19日)午後の取引終了後、セラーテムテクノロジーの上場廃止を発表したのです。一昨日(6月18日)に公開したブログ記事で「不名誉な記録を更新中」と指摘され、慌てふためいたのかどうかは知りません。が、セラーテムが6月15日に提出した四半期報告書に対して監査法人が「結論を表明しない」と通知してから、上場廃止の決断までわずか2営業日余り。イカサマ企業にやさしいことで有名な大証とは思えない早業でした。

でも、不名誉な記録は消えません。東京地検特捜部がセラーテム社長の池田修と元取締役CFOの宮永浩明らを金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で逮捕したのが今年3月6日。証券取引等監視委員会が法人としてのセラーテムおよび池田、宮永の三者を告発し、特捜部が起訴したのが3月26日のことです。証券監視委の告発から上場廃止決定まで85日もかかったのは、過去の最長記録であるライブドア(東京証券取引所マザーズ)の31日の2.7倍以上という前人未踏の新記録。東証の記録を大証が塗り替えたという意味でも、歴史に残る壮挙でしょう。大証の米田道生社長と社外取締役兼自主規制委員会委員長の川本裕子女史には、お祝いを申し上げたい。

ところで、セラーテムの上場廃止について、大証は下記の2つの理由を挙げています。

① (株)セラーテムテクノロジーの四半期財務諸表等に添付された四半期レビュー報告書において,公認会計士等によって,「結論の表明をしない」旨が記載され,かつ,その影響が重大であると(株)大阪証券取引所が認めたため

② 公益又は投資者保護のため,(株)大阪証券取引所が上場廃止を適当と認めたため

要するに、①セラーテムが6月15日に提出した四半期報告書に対して監査法人が「結論を表明しない」と通知したことと、②「公益又は投資者保護のため、上場廃止が適当」と大証自身が判断したのが理由というわけです。

大証は同時に、「セラーテムテクノロジーの上場廃止理由について」なる補足資料も発表。その内容が実にふるっており、市場関係者の間で物笑いの種になっています。順番が逆になりますが、まず②の理由から引用しましょう。

<上場廃止理由2について>
(株)セラーテムテクノロジーの行った上記開示は,投資者の投資判断にとって重要な情報を偽ったものであり,(株)大阪証券取引所の行った実質的存続性審査に対して,極めて大きな影響を与えたとともに,実質的存続性審査そのものに対する投資者の信頼を毀損したと考えられ,金融商品市場に対して悪影響を与えるものであったと認められます。加えて,(株)セラーテムテクノロジーが虚偽の開示を長期間にわたって是正しなかったことは,極めて悪質であったと認められ,(株)セラーテムテクノロジーの真相究明に対する姿勢は不十分であると認められます。また,(株)セラーテムテクノロジーが,上場会社として金融商品取引法違反(偽計)の嫌疑で告発及び起訴されたことは,重大であると認められます。これらの状況は,(株)セラーテムテクノロジーが投資者に対する重大な背信行為を行ったものと認められ,公益又は投資者保護の観点から重大であると認められます。

よくもまあ、しゃあしゃあと言えたものです。FACTAがセラーテムを「ハコ」にした北京誠信能環科技の裏口上場疑惑をスクープしたのは2010年9月号(8月20日発行)でした。当時、本誌の取材に対して「不適当な合併等にはあたらない」、「理由は個別の判断」などと強弁したのは、一体どこの誰でしょうか。大証の辞書には「恥」という言葉がないらしい。

市井の月刊誌に過ぎないFACTAをシカトするのは勝手です。しかし前述の通り、東京地検特捜部が池田と宮永を逮捕し、証券監視委が法人としてのセラーテムを告発してもなお、大証は85日間も決断を先送りし続けた。「投資者に対する重大な背信行為を行ったものと認められ,公益又は投資者保護の観点から重大であると認められる」のは、大証自身ではないのですかね。

一昨日のブログでも触れましたが、6月15日に東京地裁で開かれた池田と宮永の初公判では、大証の審査担当者が特捜部の事情聴取を受けていたことが明らかになりました。この担当者は、セラーテムが子会社化した北京誠信の売上高と利益が親会社を大幅に上回っていたことに不審を抱き、「不適切な合併」にあたるのではないかと疑った。これに対して池田と宮永は、第三者割当増資を通じて北京誠信の買収資金を提供した中国系ファンドのWCIについて、「北京誠信とは無関係」、「純投資でありセラーテムの経営には関与しない」、「将来も議決権の過半数を取得する意思はない」などと嘘をつき、担当者をまんまと言いくるめたのだとか。

しかし、北京誠信とWCI、そしてもう1社の中国系ファンドのNLGが一体である可能性は、調べればすぐにわかることでした。専門的な調査なんか必要ありません。中国語の検索サイトで社名と代表者の名前を入力するだけで、怪しげな情報がいくつも出てくるのですから。嘘だと思うなら、北京誠信の社名とNLGの代表者だった庄瑩の名前を「百度(バイドゥ)」で検索してごらんなさい。2009年6月に北京で開かれた環境関連の会議で、庄瑩が「北京誠信副総経理」の肩書きでスピーチしていたとの情報が、検索結果の1ページ目に表示されますからね。

大証はこんな初歩的な調査さえ怠っていた。前出の「上場廃止理由2」のなかで、「大阪証券取引所の行った実質的存続性審査に対して,極めて大きな影響を与えたとともに,実質的存続性審査そのものに対する投資者の信頼を毀損した」などと被害者面していますが、ご冗談でしょう。手抜き審査で投資者の信頼を毀損したは大証自身であり、その罪は万死に値します。

特捜部が大証の担当者を事情聴取した時期は不明だが、3月26日の起訴よりも前だったはずです。遅くともそれまでに、大証はセラーテムに騙された事実を知っていた。「上場廃止理由2」に鑑みれば、起訴の数日後には上場廃止を決めるべきでした。にもかかわらず決断を85日も先送りしたのは、自分の目が節穴であることを認めたくなかったからとしか思えません。

セラーテムの株価は、池田と宮永の逮捕直後の3月9日に1355円の安値をつけた後に反転し、昨日の終値は3030円と2倍以上に上昇していました。これは、大証がセラーテムを2カ月以上も放置し、「決算を訂正すれば上場は維持されるのではないか」との噂が市場に広がったことと無関係ではありません。セラーテムが出した「金商法に違反するような行為は行っていない」などという噴飯物のIR(投資家向け広報)にも、大証は見て見ぬふりを続けていた。

ここまでコケにされた株主は本当にお気の毒です。損害賠償を求める際は、セラーテム関係者だけでなく大証の責任追及もお忘れなく。

もうひとつの上場廃止理由である「監査法人の結論不表明」もケッサクなので、また次回に。