阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2012年6月18日 三菱東京UFJ銀行への公開質問状

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FACTAオンライン版では6月18日18時(今月号は印刷工程の関係で18時の公開とさせていただきます)からオンライン会員に記事が公開されますので、それと同時に最新号に掲載されている「三菱東京UFJ銀行の『仮面』<上>」で、同行に送った質問状をこのブログで公開します。弊誌は1年前、オリンパスに粉飾の疑いのある内外の合併案件について質問状を送り、同社の不正を暴くことができました。今年の標的はメガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行です。弊誌は2008年に民事再生法を申請し、元会長と元副会長が逮捕・起訴されたニイウスコー事件で、メーンバンクの三菱が果たした役割を再検証しました。その調査報道の第一弾が最新号に掲載されています。記事と併せて、質問状をお読みいただければ、問題の所在がどこにあり、その回答のどこが致命的かがお分かりになると思います。

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三菱東京UFJ銀行
広報部 御中

ニイウスコー事件についての質問状

ファクタ出版株式会社
月刊FACTA発行人 阿部重夫

拝啓

時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。弊誌は調査報道を中心とする総合誌で、昨年のオリンパス報道などでもご承知かと存じます。昨年9月、元会長と元副会長が横浜地裁で有罪判決を受けた元東証1部上場企業のニイウスコー事件について、弊誌編集部は再検証の取材を行っております。そこで当時のメーンバンクであった御行に対し、当時の状況を確認させていただこうと考え、下記のような質問を作成いたしました。お忙しいところ恐縮ですが、ご回答いただけたら幸いです。

1)2008年5月2日の債権者説明会では、平成19年(07年)6月期に債務超過になったことを受けてスポンサー選定に着手し、「国内外のスポンサー候補先数十社の中から選定されたロングリーチグループおよびフェニックス・キャピタルを引受先とする総額200億円の第三者割当増資を実行」(説明会資料5ページ)とありますが、同年6月期決算が確定する前の同年4月に、ニューホライズンキャピタルとシルバーレークパートナーズが御行との相談に基づいてニイウスコーへの投資を検討していたとの情報があります。これが事実なら、なぜ債権者説明会でその事実が伏せられたのでしょうか。

2)この説明会では、ニイウスコーの粉飾について「これまでの会計監査やロングリーチグループとフェニックス・キャピタルが出資前に行ったデューディリジェンスによっても発見されておらず、平成19年(07年)11月の増資完了後に旧経営陣および従業員からの告白によって初めて判明した」(説明会資料6ページ)とありますが、御行の企業審査部がそれ以前に知っていたとの情報があります。当時の企業審査部長、審査担当役員、頭取はニイウスコーの不祥事発覚を恐れ、事実に蓋をしたことはありませんか。

3)07年6月に別の監査法人が行ったデューディリジェンスでも循環取引や在庫の不透明など粉飾の可能性が指摘され、御行の指示によりその記載を削除・変更した事実はありますか。もしあったとしたら、債権者説明会での説明はもとより、10月に200億円の第三者割当増資に応じたロングリーチやフェニックス・キャピタル(発表は8月末)の投資家に対して、重大な背信行為があったことになりませんか。

4)債権者説明会資料によれば、破綻したニイウスコーの一般債権者は2%台の弁済率となり、ロングリーチやフェニックスを含む株主への弁済率はゼロでした。清算貸借対照表の長期、短期借入金を見ますと、帳簿価額と清算価額を比べた弁済率は85~100%ですから、これは04年、06年の2回の増資と07年の第三者割当に応じた投資家の資金を、銀行の債権回収に回したと見ることができます。ニイウスコーの粉飾を知りながら、株主を泣かせて銀行が債権保全を図ったとすれば、金融商品取引法違反の恐れがあると考えますが、御行のご見解をうかがいたい。

5)横浜地検によるニイウスコー捜査では、御行も事情説明を求められたと思いますが、御行幹部が早くからニイウスコーの粉飾を知っていた可能性についてどう回答されたのでしょうか。もし上記の可能性が弊誌の調査報道によって証明された場合、御行は責任問題をどう考えられますか。

質問はとりあえず以上です。この件については事実確認の質問状をニューホライズンにも送付しようとしましたが、守秘契約を理由に受け取りを拒絶されました。御行およびMUFGには株式公開企業として説明責任があると考えますので、ぜひご回答いただくようお願い申し上げます。恐縮ですが、弊誌の締め切りの都合もございますので、回答期限は今週金曜、6月8日までとさせていただきます。メール、FAX、郵送いずれでも構いません。もし面談がかなうのでしたら、当時の頭取であった畔柳信雄元会長を希望いたします。   敬具

6月4日

これに対する回答は6月8日午後9時過ぎにファクスで弊社編集部に届きました。金曜夜まで残業していただいて恐縮ですが、回答はほとんど全面否定でした。

1)ご回答
・債権者説明会は債務者が開催し、同資料も債務者が作成したものであり、当行はお答えする立場にございません。

2)ご回答
・「それ以前に知っていた」事実はございません。また、「事実に蓋をした」事実もございません。

3)ご回答
・「当行の指示によりその記載を削除・変更した」事実はございません。

4)ご回答
・ご指摘のような事実はございません。
・なお、民事再生法手続きにおきましては、再生債権に対する弁済率は、所定の手続きに基づき、少額弁済を除き、債務者に係らず同一に扱われていると認識しております。

5)ご回答
・捜査に関することはコメントを控えさせていただきます。

記事に書いたように、この高飛車な全面否定に、弊誌はほくそ笑んだ。2)と3)は明らかに虚言である。記事はその大嘘を物証によって覆すことができたと思う。最新号の誌面を見れば、「事前に知っていた」動かぬ証拠が載っている。誰かの企業小説のタイトルではないが、三菱は「広報室沈黙す」の事態にいたったことだろう。オリンパスと同じである。FACTAをなめたらあかんぜよ。

公開質問状にもあるように、畔柳前会長のインタビューは実現していない。ぜひ再考をお願いする。またデューディリジェンス報告書改竄の前後の事情を知っているニューホライズン、KPMG FASなどの関係者も、守秘義務を理由にした取材拒否を再考し、真実を語ってほしいと思う。

雑誌は誌面の制約があって報告書の一部しか載せていないが、今後はこのブログなどあらゆるメディアを通じてニイウスコーの実態を銀行がいかに蓋をしたかを暴露していく予定である。