阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2012年6月18日 [スクープ]“三流証取”の大証が、不名誉な記録を更新中

  • はてなブックマークに追加

大阪証券取引所にとって、先週金曜日(6月15日)は踏んだり蹴ったりでした。この日は、本誌が疑惑を追及してきたジャスダック上場企業、セラーテムテクノロジーの四半期決算書の最終提出期限であると同時に、3月に東京地検特捜部に逮捕・起訴されたセラーテム社長の池田修と元取締役CFOの宮永浩明の初公判が東京地裁で開かれたのです。

本誌は次号の記事(ウェブサイトは6月18日18時公開、雑誌は20日発売)で、セラーテムの不正に見て見ぬふりをしてきた大証、監査法人、顧問弁護士、監査役、社外取締役など「共犯者」たちの醜悪な責任逃れを追及します。しかし発行日の関係で、締切をぎりぎりまで引っ張っても6月15日の出来事の反映は無理。そこで、記事よりも一足早くブログで補足するとしましょう。

セラーテムは、2009年6月と11月に実施した2度の第三者割当増資を通じて、英領バージン諸島に登記されたWCIとNLGという中国系ファンド2社に発済み株式の過半数を割り当て、増資により調達した資金で中国の環境関連企業、北京誠信能環科技を買収したと嘘の発表をしていました。WCI、NLG、北京誠信は実際には一体であり、一連の操作はセラーテムを「ハコ」にした北京誠信の裏口上場だったのです。

本誌はこの疑惑を10年9月号でスクープ。その後、証券取引等監視委員会が11年5月末に強制調査に着手し、今年3月6日に特捜部が池田、宮永らを逮捕しました。3月26日には証券監視委が法人としてのセラーテムと池田、宮永の三者を金融商品取引法(偽計)の嫌疑で告発。同日、特捜部が三者を東京地裁に起訴しました。

日本の証券取引所は規定上、裏口上場を禁じています。上場廃止基準に「不適当な合併等」という項目があり、怪しげな第三者割当増資や未上場企業の買収は証取の審査部門のチェックを受けなければならない。にもかかわらず、大証はセラーテムの一連の操作をあっさり通しました。それどころか、本誌が疑惑を暴いた後も「不適当な合併等にはあたらない」「理由は個別の判断」などと強弁し、セラーテムをかばい続けたのです。

大証の厚顔無恥は、証券監視委と特捜部が摘発した後も、頑として誤りを認めないことでしょう。池田と宮永が3月6日に逮捕されると、大証はセラーテムを監理銘柄(審査中)に指定しました、しかし、監視委の告発から2カ月半が過ぎた今も、審査結果を出していません。上場企業をめぐる不正について、監視委が偽計で告発したケースは過去に10件もなく、全て告発から1カ月以内に上場廃止になっています。そんななか、大証は不名誉な記録の最長不倒距離を更新中です。監視委も特捜部もなめられたものですね。

セラーテムは、事件の影響で2012年6月期の四半期報告書を期日までに提出できず、6月15日の最終期限に提出できなければ自動的に上場廃止になるはずでした。大証にとっては、決算報告書の未提出を理由に上場廃止にできれば、表向き過去の誤りを認める必要がなく好都合だったはず。ところが、セラーテムは過年度決算を修正した決算書を15日午後に提出。この決算書は、監査法人から「結論を表明しない」と匙を投げられました。

その結果、ついに大証はセラーテムを上場廃止にすべきかどうか、つまり自分の誤りを認めるかどうかの決断を下さなければならない窮地に追い込まれたのです。さらに、池田と宮永の初公判では、検察の冒頭陳述で決定的な事実が明らかになりました。セラーテムの一連の操作を審査した大証の担当者は、「不適当な合併等」に当たる可能性を認識していたのに、池田と宮永の虚偽の説明を鵜呑みにしたことを、特捜の事情聴取で証言していました。

さて、大証はどう落とし前をつけるのでしょうか。この際、決断の先送りを続けてセラーテムの上場を維持し、イカサマ企業に世界一優しい“三流証取”として売り出してはどうでしょう。中国から上場申請が殺到するかもしれませんよ。セラーテムと背後でつながったチャイナ・ボーチーを野放しにしている東京証券取引所の合併相手としても、実にお似合いです。

ちなみに初公判では、裏口上場の青写真を描いた宮永が、09年4月頃に知人のトーマツ関係者にアドバイスを求めていた事実も明らかになりました。当時、宮永はチャイナ・ボーチーの副総裁を名乗り、トーマツは現在もボーチーの会計監査人です。監査法人が顧客の裏口上場計画の相談に乗るとは、実に立派なサービス精神ですね。トーマツへの質問状のネタがまたひとつ増えました。