阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2012年10月31日「一般」検査

    ようやくSBI証券のサイトで証券監視委員会が検査中であることを認めた。

    そりゃそうでしょう、監視委員会のサイトに載ってるんだから。しかしSBIホールディングスのサイトにはのっけないところがいじましい。

    23日が基準日ならそのときすぐ、お知らせにのせればいい。このブログ(週末は待っていたが)で書いたよりも後に、渋々リリースを出しているが、親サイトでなく子サイトだけ。それも「一般検査」を強調している。

  • 2012年10月30日ヨルムンガンドとリヴァイアサン9 憲法9条

    前回は「万人の万人に対する戦争」を脱するための〈第三項排除〉が、相互性の形式に頼らざるをえないというのが問題だと書きました。

    それを誰もが知っている日本国憲法に置き換えましょう。まず前文です。
      

    われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
     
    われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国との対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

    おわかりのように、敗戦国であった戦後日本の出発点において、ホッブスのいう「自然権」と「万人の万人に対する戦争」の超克がうたわれています。その帰結として、問題の第9条が定められています。

  • 2012年10月29日至急報! SBI証券に証券監視委検査入る

    新聞メディアは発表物しかもう報じられないというけれど、発表物も報じられないのだろうか。

    FACTAは月刊ですから静観してようと思いましたが、このシカトぶりではしょうがない。
    フラッシュを報じましょう。

    とうとう先週末に証券取引等監視委員会(SESC)の検査中リストにSBI証券が載りました。
    SESCのウェブサイトの検査中ページを見てくださいな。26日現在で「SBI証券」とちゃんと載っているでしょ。
    なのに、各社記者は何をしているのでしょう。これはニュースでしょうが。鈍いなあ。
    遠巻きにFACTAと北尾の戦争を眺めていて、指をくわえて見ている気ですか。
    いよいよ号砲が鳴ったのですよ。

    投資家のみなさん、大和など幹事証券、監査法人トーマツ、そして延命に手を貸している格付会社さん、ヤバイ!って思わないのかな。AIJの悪夢が頭をよぎったでしょうが。

    次号で決定版を考えますかね。

  • 2012年10月26日ヨルムンガンドとリヴァイアサン8 ツッパリ語

    さて、石原慎太郎都知事が25日に行った辞任会見は、公会計に複式簿記を導入しろ、などのまっとうな目標を掲げていて、その限りでは好感できるものがあります。しかし、あんまり彼らしくないなあ。つまりちっとも右翼らしくないころが怪しい。

    改憲とか核武装とか、いちばん言いたい本音を言わずに、新銀行東京や銀行の標準課税など、彼が失敗した経済政策を持ち出すあたりがわざとらしくて、マユに唾をつけたくなります。

    このブログでは、彼の土俵に乗ろうと思う。ただし情緒的なナショナリズムでなく、合理的な選択として何が最善かという議論として。

    でも、ホッブスとコミックスをごっちゃに議論している、と叱られそうですね。石原知事は好みじゃないでしょうけど、確かにCIAのエージェントが、中高生のツッパリ君みたいなせりふを吐いているのを煙幕とみるか、しょせんはガキの想像力とみるかは、面々のご勝手でしょう。

  • 2012年10月25日ヨルムンガンドとリヴァイアサン7 ホッブス

    あんまり『ヨルムンガンド』に淫していると、何をやっているかと怒られそうです。そろそろ本題に入りましょうか。前回、女武器商人ココ・ヘクマティアルは「リヴァイアサン」であると書きました。ホッブスの有名な一節を念頭に置いています。

    『リヴァイアサン』14章「第一、第二の自然法と契約について」です。ホッブス自身が説明するjus naturalis(自然法)とは、「理性によって発見された戒律または一般法則であり、それによって人はその生命を破壊したり、生命維持の手段を奪い去るようなことがらを行ったり、また生命がもっともよく維持されるとと彼が考えることを怠ることが禁じられる」ものです。では、第一の自然法から引用しましょう。

    各人は望みのあるかぎり、平和を勝ち取るように努力すべきである。それが不可能のばあいには、戦争によるあらゆる援助と利益を求め、かつこれを用いてもよい。

    そこから必然的に第二の自然法が導かれます。

  • 2012年10月24日ヨルムンガンドとリヴァイアサン6 勝利の手

    ヨルムンガンド』の女武器商人、ココ・ヘクマティアルが、バグダッドにサダム・フセインが建造した巨大な二つの剣が空中で交差するイラン・イラク戦争戦勝モニュメント「勝利の手」(Swords of Qādisiyyah)の前で、あたかも剣を握っているかのようなポーズをとる絵がそのイラク編「Pazuzu」の表紙を飾っている(ちなみにパズズとはメソポタミアの悪神で、南東の熱風を神格化したもの)。

    ま、パクリだと思うが一種のインスパイアということにしましょう。

    これは10年1月、ロンドンのテート・モダン美術館「レベル2ギャラリー」の展示会「The worst condition is to pass under a sword which is not one’s own」(最悪の状況は自分のものではない剣の下を潜り抜けること)の入口にあった展示――米兵が「勝利の手」の前でポーズした写真の構図とそっくりだからです。

    アメリカのアーチスト、マイケル・ラコヴィッツが展示したもので、サダムお抱えのモニュメント設計者が、実はスターウォーズのVictory Arch (Strike the Empire Back Series)からパクったかのように見せている。それをまた日本のコミックスが借用したのだから、どっちもどっちと言うべきだろうか。

  • 2012年10月23日ヨルムンガンドとリヴァイアサン5 バイオレンス

    もちろん、コミックス「ヨルムンガンド」が、007の「スペクター団」のような世界陰謀説の焼き直しストーリーなら、ここで取り上げるまでもなかったろう。帝政ロシアの秘密警察オフラーナあたりが偽造した「シオンの長老の議定書」をいまだに信奉する陰謀史観は、ネトウヨの妄想にでも任せておけばいいだろう。

    しかしいくら北欧神話の世界蛇から名を借りたとはいえ、この作品で「ヨルムンガンド」が何を意味するのかは、物語の最後まで分からない。

    「New World Phase 11」で女武器商人ココ・ヘクマティアルの口から種明かしされるが、これこそまさにDeus ex Machinaで、アニメのとってつけたような最終兵器と同じように、ほとんど荒唐無稽で空疎な概念でしかない。それがやっぱりコミックスの限界だし、それ以上肉付けできたら北一輝の『日本改造法案大綱』になってしまうから、フィクションという安全装置は外さないための仕掛けと言える。

    かくてコミックス『ヨルムンガンド』は二つの犠牲を払った。ひとつはミクロのバイオレンスしか画かないという制約である。でも、これは制約というより、女武器商人の私兵と、それを襲う殺し屋たちの戦闘シーンを延々と続けられるから、劇画としてはメリットというべきか。

    そこから逆算すれば、殺し屋たちのキャラクターで、話がもってしまうのだ。たとえばパンツをはいていない少女殺し屋チナツと、その師匠という殺し屋「オーケストラ」の二人組。なんだかその設定自体、「修羅雪姫」を下地にユナ・サーマンにカンフーを演じさせたタランティーノを連想させる。

  • 2012年10月19日ヨルムンガンドとリヴァイアサン4 世界蛇

    リヴァイアサンが旧約聖書ヨナ記の「大魚」でないことくらい、もちろん知っている。

    旧約の預言者ヨナを呑み込んだ大魚は、三日間、その腹の中にヨナを生かしておいて吐き出した。ヨナが生還したことからみると、ピノキオを呑みこんだ鯨のようなイメージかもしれない。

    リヴァイアサンはもっと禍々しいイメージだ。旧約のヨブ記41章に出てくるが、巨大な鰐、または龍のような怪物と思える。

    地の上には是(これ)と並ぶ者なし、是は恐れなき身に造られたり、是は一切の高大なる者を軽視(かろん)ず。誠に諸(もろもろ)の誇り高ぶる者の王たるなり

    でも、『ヨルムンガンド』の作者は、北欧神話の世界蛇、ヨルムンガンドを持ちだしたことから、少年兵ヨナを呑みこんだ怪物を蛇のようなものとイメージしているのではないか。

    五つの陸を食らいつくし

    三つの海を飲み干しても

    空だけはどうすることもできない

    翼も足もないこの身では。

    我は世界蛇。

    我が名はヨルムンガンド

    これがこのコミックスの巻頭にあるエピグラフだが、そこにすでに結末のヒントがある。この作品が行き当たりバッタリでなく、プロットを持って書かれたことが分かるのだが、ま、それはネタバレになるのでこれ以上は触れまい。

  • 2012年10月18日ヨルムンガンドとリヴァイアサン3 饒舌

    『ヨルムンガンド』の作者に敬服すること。それは、9・11にWTCが崩れ落ちて武器取引と大量破壊兵器開発の追跡行が吹っ飛んで以来、オレはいったい何をしてきたのだ、と自問するにひとしい。

    11年も追跡をお留守にしていれば、コミックスの想像力に負けるのは是非もない。そのノウハウを、資本の悪追及とその破壊に浪費しちゃったのかもしれない。

    一撃必中、弱点連打……経済スキャンダルの調査報道にそれが有効だったことは証明できたと思うが、本命の宿題がなおざりじゃ、しゃんめえ、ということになる。

    そろそろ本道にもどりたいな、という気はするが、浪費したのは取材ノウハウだけじゃない。体力とそして年齢も、10年以上前とは違う。あれほど行きたかったアフガニスタンも、あの過酷な環境では、この夏取材に行った菅原出君のようにはとても耐えられないと思う。

    『ヨルムンガンド』の私兵チームのように、辺境から辺境を渡り歩く体力もカネも今はない。口惜しいなあ、そんな思いがこれを書く機縁になった。

    フフーフ。

    だんだん、アニメに影響されて、女武器商人ココ・ヘクマティアルの口癖に感染しそうだ。

    何が負けたって、ココの饒舌なせりふ(エンディングの布石なのだが)には頭が下がる。

    たとえばMusica ex MachinaのPhase 5

    Deus ex Machina(機械仕掛けの神)のもじりだが、そこでヨナを相手に聞かせるせりふがいい。寡黙なヨナはほとんど一方的なココのモノローグを聞くだけだ。

  • 2012年10月18日佐藤栄佐久・福島県元知事の冤罪

    最高裁の上告棄却で、二審の有罪判決が確定した。収賄罪の根底が崩れているのに、検察の控訴と被告の控訴を両方棄却する形で、国家権力のメンツを守ろうとした最高裁第一小法廷の裁判長、桜井龍子判事をFACTAは断罪する。

    桜井判事の判断は歴史的誤審であり、検察の国策捜査と同罪です。桜井判事は法曹にいる資格がない。地の果てまで、FACTAはこの裁判官を追跡します。

    この事件についてはFACTAが他のメディアに先駆けて問題性を訴えてきた。最高裁決定を受けて、佐藤氏からこのようなメッセージが寄せられたので紹介しよう。

  • 2012年10月17日ヨルムンガンドとリヴァイアサン2 武器商人

    リヴァイアサンに飛ぶ前に、もう少し武器商人の話をつづけよう。

    95年にロンドンに赴任した時、メージャー保守党政権下で第一次湾岸戦争の検証が英国の独立調査委員会(スコット委員会)で行われていた。それは事実上、サッチャー前政権が80年代のサダム・フセイン支援策でイラクのクウェート侵攻の火種をつくった――イランの脅威封じ込めのための武器供与に手を汚していたのではないか、という検証だった。

    スコット委員会の証人尋問では、サッチャー自身も証言台に立たされている。96年2月15日の報告書発表の会見は私も末席にいて、あまりに大部の報告書にうなった記憶がある。結論は、前首相の犯罪は証拠不十分というものだったが、政権ぐるみでイラクに軍民両用品を供与し、大量破壊兵器の開発を黙認していたことは明らかで、国家機密上「臭いものに蓋」をしたのである。

    それなら自分で調べ直してやろう、と思ったのが始まりだった。ついでに第一次湾岸戦争に敗れて、経済制裁下にあったサダムが、なお大量破壊兵器を隠し持っているかも調べようと思った。笑っちゃいけない。そんな不可能事(CIAやMI6も結果的には失敗)ができると思いあがった日本人記者がいただけのことだ。下調べとして、武器売買の一端を書いた本をずいぶんと読み漁った。

    ちょっと古いが、Seven SistersのAnthony Sampsonが書いたThe Arms Bazaar。

    FT記者だったAlan FriedmanのSpider’s Web

    The Guardian記者だったRichard Norton-TaylorのTruth is not a Difficult Concept

    フォーサイスの『神の拳』のタネ本になったChris CowlyのGuns, Lies and Spies

    スーパーガンに関与して暗殺された異能のゲラルド・ブル博士を追ったWillam LawtherのArms & the Man

    工作機械のイラク向け違法輸出に関わり逮捕されたメイトリクス・チャーチルのMDだったPaul HendersonのThe Unlikely Spy

    Astra Fireworksという花火企業の経営者が、1億ポンドの武器製造業者に仕立てられた内幕を暴いたGerald JamesのIn the Public Interest

    アトランタの調査報道記者でサダム・フセインの資金調達の抜け道になったイタリアの銀行BNLアトランタ支店を追跡したPeter MantiusのShell Game

    米NSCのスタッフだったHoward TeicherとGayle Radley TeicherのTwin Pillars to Desert Storm

    さらにIran Contraの関連文献――Bob Woodward のThe VeilからアメリカのThe National Security Archives がまとめたThe Chronologyまで

    そしてむろん、全4巻のスコット・リポート(Report of the Inquiry into the Export of Defence Equipment and Dual-Use Goods to Iraq and Related Prosecutions)

    FACTAの寄稿者になったゴードン・トーマスは、このなかのジェラルド・ジェームズに取材した時にお会いしたジャーナリストである。ガーディアンのノートン・テイラーもいろいろ教えていただいた。そこから先は、取材メモを一行も使えずに終わった。

    内情は言うまい。残念ながら自分一人で裏付ける作業は、私の能力を超えていた。武器輸出の一端しか見えなかったが、それでも武器商人は単なるミドルマンであり、その背後には必ず国家が隠れていることが確信できた。ミドルマンはあくまで運び屋というかダミーで、ほんとうは実利をかねた国家事業なのだ。

    NATOもロシアも中国もすべて同罪である。『ヨルムンガンド』の作者がどこまでその現実を知り、これらの文献をご存じかは知らないが、それでも武器商人をひとつの権力構造として描いた力技には敬服せざるをえない。フィクションはすでに現実との接点をみつけているのだ。

    コミックスの想像力にジャーナリズムが負けている。(続く)

  • 2012年10月16日ヨルムンガンドとリヴァイアサン1 少年兵

    下手なサブカルチャー論をぶつつもりはない。

    そんな知ったかぶりをするほど興味があるわけでもない。ニュースの一番槍、スペアヘッドたらんと突っ走るだけで、もう十分。それにもういいオッサンだから、今どきの流行なんて度外視しても、ま、世間は許してくれるだろう。

    それでもこのコミックス『ヨルムンガンド』に触れるのは、アニメ化された第2シリーズの深夜放映が、この10月9日から毎週火曜にMXテレビなどで始まったからだ。いつしか、ただのサブカルでなく、大仰だが政治論の大きな分かれ目を象徴していると見えてきて、ひとこと言いたくなった。