阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2012年1月31日岩下尚史『ヒタメン』――半玄人の告白

    いまどき、江戸・明治風の擬古文など綴る人はめったにいない。ゆくりなく、とか、疝気筋、とか、後生楽、とかをつかう作者(岩下尚史)は、わざとらしいと言われるのは承知の上なのだろう。その文章修業、さしずめ泉鏡花あたりに属魂だった時期があるにちがいないと見た。

    風姿花伝に言うとおりである。「よきほどの人も、ひためんの申楽は、年寄りては見られぬもの也」。なるほど、岩下氏も例外にあらず。長く住む三軒茶屋の人に聞けば、昔は白皙の美青年だったけれど、ちかごろはちょっとお肥りになって、だそうな。

    が、文章は脂がのっている。芸者論とその続編の名妓の資格は、いまは亡きワンダーランドの楽しみを満喫させてくれた。そのあとの駄作の小説紛いはひょいと跨ぐとして、「三島由紀夫 若き日の恋」の副題のついた今度の『ヒタメン』は、これまためったにお目にかかれない、というより羨ましいインタビュー本である。

  • 2012年1月24日大雪の緋チリメン

    私は生前の三遊亭圓生にただ一度、インタビューさせていただきました。それがなんと、私が新聞記者になって初めての取材でした。

    中野坂上に近いマンションを訪ね、ドアを開けたら奥様がソファに寝ていらした。落語家は長屋に住んでいるものと思っていたので、思わずうふっと思いました。

    でも、それから先は厳しいの一語。何を聞いても(トンチンカンな質問で、師匠、ごめんなさい)、フン、てな顔でした。以来、私は記者の才能がない、とコンプレックスになりました。

  • 2012年1月23日東証の出来レース

    ブラックアウト期間が終わってすぐ、東証自主規制法人がオリンパスの上場維持と上場契約違約金を発表した。予想通りで何の意外性もないが、結論先にありきだったことの釈明が何もないのでひとこと言いたくなった。

    12月の産経を筆頭に大手新聞紙上で何度も事前に報じられ、そのたびに「一部報道は東証の発表したものではない」とのエクスキューズのリリースを1月10日13日18日19日20日に5度も出している。そして、事前報道とぴったり同じ発表をしたのだから、滑稽だと思わないのだろうか。

    誰かがリークしたと考えるのが筋だろう。東証の上場部も広報も、単に責任逃れでこんな白々しいリリースを出しただけなのだ。自主規制法人の5人の理事による議論が始まる前からの情報漏れは、おひざ元の東証事務方からである可能性がもっとも大きい。理事の顔触れはこうだった。

    東証自主規制法人理事長  林正和(元財務次官)
    同常任理事  武田太老(元東証)
    同常任理事  美濃口真琴(元東証)
    理事(外部、非常勤)  藤沼亜起(元日本公認会計士協会会長)
    理事(外部、非常勤)  久保利英明(元日本弁護士連合会副会長)

    最初からプロパー出身が二人もいる。東証の退場審査がユルユルで、幾多のハコ企業を黙認してきたが、その問題の上場審査部門の当事者だったのだから、そもそも資格がないと言っていい。

    本誌は鳴り物入りで東証に上場した中国株、チャイナボーチー、新華ファイナンス、アジア・メディアがいずれもインチキ企業であることを誌面で追及してきたが、08年に上場廃止となったアジア・メディアを除き、残る2社についてはいまだに音沙汰なしで泳がせている。東証や幹事証券、監査法人への責任追及を恐れて及び腰だった彼らが、オリンパスに厳罰を食わせたら天に唾するようなものだろう。

  • 2012年1月11日閑話休題 ビクトリア・フォールズ

    ブラックアウト期間中ですが、オリンパスの取締役責任調査委員会報告が出たので少しコメントします。

    報告の111pにウッドフォード氏の指摘に対する取締役の反応が出てきます。弊誌を「信用性に乏しいタブロイド誌で、面白おかしく書いたいわゆるガセネタではないか」と評したそうです。さて、誰でしょうか。

    閑話休題 バンジージャンプのロープが切れて奇蹟的に生還したオーストラリア人女性のニュースについてひとこと。

    かれこれ15年前になりますか、実は独りで出張取材中に小生もあの橋の上からジャンプしました。もともと高所恐怖症で、とてもあんなところは御免でしたが、青年協力隊の誰かにどうせ行くなら肝試しと言われて、無謀にも試みた次第です。いや、怖かった…。

  • 2012年1月 8日ウッドフォード元社長にひとこと

    正月明けですが、例によって編集期間に入るので、しばらくブラックアウトに入ります。

    このブログで年末に触れた菊川剛前会長兼社長に対するオリンパスの「隠れ家提供」は、読売新聞と朝日新聞が7日付で追いかけたようです。会社側は「第三者委員会の事情聴取に応じるため用意した」と提供を認めて弁明していると書いてありますが、川崎の自宅マンションからの往復にどんな支障があったのでしょうか。

    さらに第三者委員会の聴取と、菊川氏が隠れ家に持ち込んだペット(どうやら猫らしい)代支払いにどんな因果関係があるのか、記者が突っ込んでくれていないのが寂しい。後追い記事を載せるなら、それくらい付加価値を付けないと。