阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2011年10月20日 [leaks]深みにはまるオリンパス

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マイケル・ウッドフォード社長の突然の解任(10月14日)から株価の暴落が続くオリンパスが、今度は問題の国内3社と英ジャイラスの疑惑の買収について、これまで「適切な情報開示をしている」と突っぱねていたが、とうとう公表に追い込まれた。

「情報の小出し開示」という、もっとも下手な危機対応では、ドツボにはまるばかりでしょう。FACTAの公開質問状に回答を拒否し続けていたが、やはり情報開示が適切でなかったことを認めたも同然ではないか。

しかも追い込まれての開示だから、次々と馬脚があらわれて疑惑を深めるばかりだ。つい2日前までは、ジャイラス買収のフィナンシャルアドバイザー(FA)に支払ったのは300億円としていたのが、いつのまにか6億8700万ドルに変えている(優先株値上がり分4億4300万ドルをFA報酬に入れていない)。差引2億4400万ドルだけFAの報酬としているが、これは合理的な説明とはいえない。あきらかに報酬を小さく見せるためでしょう。

2億4400万ドルでもM&A業界の常識外なのに、優先株値上がり分がその倍もあるというのは気前がよすぎる。しかもこのFAの正体について「優先株の買い取りをもって取引関係は終了しているので、その後の状況については関知しておりません」ときた。ウッドフォード前社長は、FAはケイマン籍のAXAMで、3か月後に登記抹消で消えたとしているのだ。3か月で消えるような「幽霊会社」に、こんな巨額の支払いをした理由を何も説明できていない。最初から足跡消しのためにつくったペーパーカンパニーに横流しさせたのでは?と誰だって疑うだろう。そうでないことの証明は、相手の正体に口をつぐんでいてはできない。

それから国内3社の買収。いずれも売上高数億円の小さな企業をそれぞれ288億円、214億円、231億円で買った理由について、「第三者機関である外部会計事務所の評価を得ている」と言いはっているが、その程度の権威づけでしのげると思っているのなら驚きである。この外部会計事務所は「井坂公認会計事務所」である。朝日監査法人、メリルリンチを経て独立したそうだが、3社の株主価値算定報告書のうちアルティス分を公開しましょう(井坂公認会計事務所が作成したアルティスの株主価値算定報告書/PDF・492KB)。他の2社も似たり寄ったり、単純な目くらましである。

DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法なんて御大層に言っているが、将来のキャッシュフローを過大に見積もって、そこから逆算して現在価値を膨らませただけのこと。こんな手品で投資家を騙せると思っているのだろうか。問題は08年度4億8800万円しかないアルティスが、09年度35億円、10年度57億円、11年度94億円と3年で20倍近く売り上げを伸ばせる根拠があったのかどうかだ。絵にかいたモチ、とらぬ狸の皮算用など承知の上、単なる「判断ミス」(菊川剛会長兼社長)ではなく、最初から仕組んでやったのではないか。「井坂」なる公認会計士も、金をもらって会社の言うがままの数字を出した共犯であり、事と次第によっては会計士資格が問われることになるだろう。

こんな幼稚な手口で、隠しおおせると思ったことが間違いだ。これでは海外の株主が代表訴訟を起こすことも十分考えられる。菊川氏は25日の日経フォーラム世界経営者会議に講師として出席する予定だという。テーマは「日本から世界へ」。日本から世界へスキャンダルを発信した当人が何を語るのだろうか。