阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2008年4月30日ゴードン・トーマス氏に感謝します

    本誌4月号(3月20日刊)に「『北朝鮮の核密輸』をモサド暴露」を寄稿してくれた英国のジャーナリスト、ゴードン・トーマス氏に改めて感謝申し上げたい。

    4月24日にホワイトハウスが米議会の非公開説明会で報告、その後にシリア奥地に建設中だった原子炉施設の映像まで公開したものだから、モサドに強いトーマス氏が本誌で特報してくれたこの施設へのイスラエルの空爆作戦の詳細は、世界の耳目を集めるにふさわしいスクープだったことが裏づけられたと思う。

  • 2008年4月29日ジェラルド・カーティス「政治と秋刀魚――日本と暮らして45年」のススメ

    アメリカから日本の政治を研究しにやってきた青年が、1967年の衆院選挙で大分二区に立候補した佐藤文生氏(中曽根派)の事務所に飛び込み、舞台裏を活写した『代議士の誕生――日本保守党の選挙運動』(1971年)以来、ジェラルド・カーティスの名はいわば「密着取材」の先駆者の代名詞だった。

    この処女作のことはよく覚えている。まだ私は新聞記者ではなかったが、やられたという悔しさより、その密着手法がえらく新鮮に思えた。ライシャワーはじめアメリカの日本通はどこか雲の上の存在であり、日本の政治のような下々の泥臭い世界には下りてこないものと決めてかかっていたが、カーティス氏の手法は大所高所ではなかった。ブルックリンのリアリズムを体現したかのような「あたって砕けろ」式の現場主義は、自分にもできるのではないか、と私には思えた。

  • 2008年4月24日畔蒜泰助「『今のロシア』がわかる本」のススメ

    ロシアの魂とは何かについて、私には何もわからない……

    佐藤優との対談を新書にした「ロシア 闇と魂の国家」で亀山郁夫が何度もそう呟いている。私にもこの北のラビリンスはさっぱり分からない。ツルゲーネフ、トルストイ、ドストエフスキー、チェホフ、ブルガーコフ……と人並みに訳書は読んでみたが、ロシア語を学んだこともない身では謎だらけの国である。

  • 2008年4月19日5月号の編集後記

    FACTA最新号(5月号、4月20日発行)の編集後記を掲載します。フリー・コンテンツの公開は28日からです。

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    ものみな、ういういしい春。わがFACTAも今号から3年目。終始温かい支援を惜しまなかった愛読者の方々や、鋭い切り口の記事を数々寄稿してくれた記者の方々、そしてこの雑誌の刊行を有形無形に支えていただいた関係者に、心からお礼申し上げます。思えば恵まれていました。調査報道を旗印にクオリティーマガジンをめざすといっても、時代を切り開く幾多のスクープを連打できなかったら、世の読者にこれほど認知してもらえなかったろう。

  • 2008年4月 9日日銀新総裁・白川方明氏の新著を真剣に書評する

    タイミングが良すぎたというか、してやったりとういうか――空席だった日銀総裁に、先に副総裁に就任していた白川方明氏がきょう(4月9日)昇格するが、4月6日付の熊本日日新聞で、白川氏が先月出版した大著の書評を掲載したので、ここに再録する。

    書評にもあるように、彼とは年齢も近く、日銀取材を通じて知己となった。個人的には「大変な重責ですが、おめでとう」とお祝い申し上げたい。しかし知己であるがゆえに、書評で変にじゃれたくはない。

    同じ6日付の日本経済新聞で、ロンドン特派員の女性記者が「独立性揺るがぬ英中銀」と題してコラムを書いていたが、その不勉強にちょっとあきれた。97年にブレア政権発足後すぐ、ブラウン蔵相(現首相)が行なったイングランド銀行改革をとり違えている。あれは独立性をイングランド銀行に与えたのではない。剥奪したのだ。当時、私はロンドンに駐在していたが、銀行監督部門を切り離してFSAを創設することによって、中央銀行の権限を限定し、金融政策専従にしたのだ。

    表向き金融政策運営に独立性を与えるという見かけをとっているが、イングランド銀行は金融街シティに君臨する法王の座から蹴落とされたのだ。ブラウンの剛腕をかいまみた。当時の総裁、エディ・ジョージの複雑な表情が忘れられない。

    「スレッドニードル街の老女」とあだ名されたイングランド銀行が、かつて秘密めいた支配力を握って放さなかったことは、大蔵省出身の経済学者ケインズと、ドイツ賠償問題や金本位復帰などで対立した伝説のノーマン総裁を見ればよくわかる。ケインズが「野に叫ぶ預言者」だった不遇の時代、誰が沈黙して英国の金融を牛耳っていたのか。ブラウンは過たず独立性の牙城を骨抜きにし、英国経済を思うままに好調軌道に乗せ、ブレア長期政権を担保したのである。

    そういう隠微な歴史をろくに知らない記者が中央銀行論を書く時代だ。9日の場況記事では白川氏の新著――「現代の金融政策―理論と実際」(日本経済新聞出版社 6000円+税)に触れたくだりが出てくるが、時間軸効果だけとは寂しい。タカだのハトだのでなく、もっと本質を論じるべきだろう。

    それにしても、白川氏本人も金融政策の理論家として本書を執筆したときは、まさか総裁として日銀に舞い戻ろうとは考えていなかったろう。論が慎重すぎるのでは、と素直にジャーナリストの視点から苦言を呈する書評になったが、ときにないものねだりだったかもしれない。白川総裁には寛恕を願うばかりだ。

  • 2008年4月 4日高橋洋一「さらば財務省!」のススメ

    この本が出来上がったばかりの3月下旬、彼をゲストに呼ぶBSデジタル放送の番組で司会をつとめた。彼がこの本を持参したので、番組の中で紹介し、ブログで紹介することを約した。その約束をここで果たそう。

    佐藤優「国家の罠」を連想させるタイトルだが、これは講談社の編集者がつけたもので、売らんかなの思惑が見え隠れするのは、高橋氏の本意でも希望でもない。

    霞が関官僚で彼を毛嫌いする人は多い。彼の名誉のために言っておくが、恨み節や暴露本を書こうとしたのではない。彼の前著「財投改革の経済学」をやさしく噛み砕き、彼自分が左遷されるなどの個人的な体験もまじえた読み物に仕立てた本である。前著と共通しているのは、霞が関の通念と化した不条理を切り捨てて、合理性を回復させようとする情熱であって、それ以上でも以下でもない。

  • 2008年4月 3日無断のパクリ、朝日新聞のお粗末

    3月30日付の朝日新聞朝刊2面に「『北朝鮮支援の核施設』 シリア空爆でイスラエル首相」という見出しの記事が掲載された。本文をここに引用する。

    2月に来日したイスラエルのオルメルト首相が福田首相と会談した際、昨年9月にイスラエル軍が空爆したシリア国内の施設が、北朝鮮の技術支援を受けた建設中の核関連施設であるとの見方を伝えていたことがわかった。イスラエル政府は空爆の事実だけ認めているが、標的とした施設の種類については明らかにしていない。同政府首脳が外国政府に「核施設」との見方を示したことが明るみに出たのは初めてだ。

    政府内には「事実は確認できないが、首脳会談という公式の場で伝えられた意味は大きく、信憑(しんぴょう)性は高い」(外務省幹部)と受け止める一方、「イスラエル側が都合のいい部分だけを伝えた可能性もある」(別の幹部)との見方もある。

    初めて? ちょっとあきれた。これはFACTAの昨年12月号(11月20日発売)で外交ジャーナリストの手嶋龍一氏がコラムで「小麦と『アサドの核』と北朝鮮」と題して書き、さらに直近の4月号(3月20日発売)で載せたゴードン・トーマス氏がFACTAに寄稿したスクープ記事「『北朝鮮の核密輸』をモサド暴露」を下敷きにしている。

    それを首相官邸か外務省にあてて確認したという記事にすぎない。パクリを隠して、さも一から取材したかのように書いているが、書いた記者と載せたデスクには、恥を知れと言いたい。

  • 2008年4月 3日海外報道について愛読者のご注文

    創刊以来の読者から「海外にも鋭い目が欲しい」という厳しいご注文をいただいた。

    「最近のFACTAを見ていて気になっている点がある。それは国内の出来事に対しては厳しい視点で真実をえぐっているのに対し、特に欧米に話が行くと途端に盲信するような傾向が見られることである」

    そうご指摘のうえで、前号の「排出権取引で『泥縄』経産省の凋落」と「トヨタ脅かすGMの『環境対策車』」、さらに「泥仕合で浮かぶオバマの『死角』」の3本の記事の一部について、FACTAも世間の常識にとらわれているのではないかと批判している。