阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2007年4月24日 統一地方選「東洋町ショック」

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統一地方選第二波はゴロ寝した。区議選も区長選もちょっと投票する気になれなかった。無党派のたいがいの行動原理に従えば、「面白くない」と行かない層なのである。

テレビや新聞も長崎市長選に集中したのは、弔い合戦の「イーハン」がついたからだろう。殺された前市長の女婿が身代わりに立ったが敗れ、長女の「こんな仕打ちを受けるとは」との恨み節が延々と放映され続けた。身代わり候補が新聞記者だっただけに同情したくなるが、選挙は冷酷なものだという感慨しかわかない。むしろ長崎のおかげで埋没した高知のほうが気になった。

東洋町の出直し町長選である。現職町長が負けたことは、国策から言えばショッキングな事態なのだ。

尾篭な話で恐縮だが、先日、わが家のトイレが詰まった。私道に工事のトラックが駐車、マンホールの蓋を壊して、詰まってしまったのだが、わが家はパニックだった。1階も2階もトイレが流れない。もらい水ならぬ、もらいトイレである。四の五の言っていられない。テレビで宣伝している下水詰まりのチェーン店に電話して、泣きつくしかなかった。値切るどころか、いくらでも出す気になった。

東洋町の問題も同じである。原発の使用済み核燃料の廃棄物をどこに捨てるか、で日本はトイレ詰まりを起こしている状態なのだ。核燃料サイクル計画では、六ヶ所村で再処理するが、半減期が1万年を超す高レベル放射性廃棄物が最後に残ってしまう。青森はその最終処分(地下深く埋設)を認めていない(あくまでも中間処理まで)から、日本のどこかでその最終処理地を探さなければならない。

しかし、文明成立からせいぜい5000~6000年なのだから、1万年といえばほとんど永遠である。誰だってそんな恐ろしいものを隣近所に埋めてほしくないから、当然ながら候補地選びは難航してきた。そこで電力会社の拠出金を受けた認可法人、原子力発電環境整備機構(NUMO)が、立地調査に応じてくれた自治体にカネを出す形で何とか「進行形」にしようとしてきた。

立地調査したからといって、必ずしも最終処分地になるとは限らない、というのがミソで、「調査費」だけ支出される玉虫色のはずだった。それでも手を挙げる自治体がなかった。過疎と高齢化で財政難の東洋町が、とにかく文献調査に手を挙げたのだが、カネ欲しさは明らかだった。

しかし、カネで釣る玉虫色、というのがそもそも無理だった。住民は「文献調査」という言葉に欺瞞をかぎとった。手を挙げるのが東洋町だけでは、自動的に決まってしまうし、調査だけで食い逃げできるのかどうかも不明だった。やっぱりやめたということになれば、国があの手この手で翻意を迫るからだ。

しかも、これだけ不信を買ったのは、原発の燃料棒脱落など過去の不祥事が明るみに出た上、どの電力会社も首脳陣の処分は穏便に済ましたからではないのか。過去を自ら不問に付すなら、未来についても保証がないということを、東洋町の住民たちは本能的に感じたのではないか。

逃げた魚は大きい。東洋町のような地ですらこうなのだ。これでNUMOに手を挙げた自治体の首長は、リコールか落選の憂き目を見ることが決まったようなものだ。どの首長も怖くて手を挙げられまい。NUMOも宙に浮く。処分をことなかれで済ませた保身のツケは大きい。

4月29日からは甘利明経済産業相率いる官民代表団がカザフスタンへ跳んでいく(2007年5月号記事)。埋蔵量世界2位の同国のウランが狙いだが、国内で原発がトイレ詰まりを起こし、新規原発建設のメドも立たないのに、電力会社首脳はこぞって西シベリアのステップに出現した都会アスタナに向かうという。

矛盾している。電力業界のアタマの中も、詰まったトイレではないのか。