阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2006年10月 1日 [お知らせ] [スクープ]オンライン版新装と再び勝利宣言――予告スクープを掲載

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さて、オンライン版のもう一つの目玉として、9月13日に配信したスクープメールの後追い記事が、ようやく29日の各紙夕刊一面に掲載された。ご購読者限定で流したのは「安倍氏が10月にも日中首脳会談 代償には『台湾切り捨て』カードか」で、本誌10月号(9月20日刊行)に掲載されている記事の要約版である。これで、やっとあの予告スクープがいかに早かったかを証明できた。前回と同様に、スクープが新聞やテレビ等で後追いされたので、約束どおりこのブログでも全文公開します。

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安倍氏が10月にも日中首脳会談 代償には「台湾切り捨て」カードか

政権発足後も、中国に対して強硬外交を展開すると見られてきた安倍晋三新首相が「サプライズ外交」に踏み切ろうとしている。就任早々の10月にも北京を訪れて胡錦涛国家主席と首脳会談を行い、その途上でソウルに立ち寄って盧武鉉韓国大統領とも会談する構想で、水面下では日中韓の複雑な駆け引きが始まっている。

小泉首相の靖国参拝で冷え切っている日中関係を劇的に改善させるには、日中双方が国内を納得させるに足る大義名分が必要となる。安倍氏は靖国問題を曖昧にする代償に、台湾問題でカードを切る用意があるようだ。

日程については、11月18、19日にベトナムの首都ハノイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際、あわせて日米首脳会談と日中首脳会談を行うのでは「サプライズがない。埋没してしまう」としている。

現に安倍氏は自民党総裁選告示の9月8日夜、テレビ報道番組で「すでに設定されているマルチ(多国間)の会議の中で、バイ(2国間)の会談を行うことは決まっているが、それとは別にアジア外交重視を示すためにもアジアの国と首脳会談をやりたい」と述べた。これはハノイとは別の早い時期に訪中して首脳会談を行う意欲を示したものと見られる。

この大胆な外交構想の狙いは3つ。第1は自民総裁選で対立軸となったアジア外交で先手を取ることだろう。麻生、谷垣2候補はもとより、出馬を断念した福田康夫氏、反安倍色を強める加藤紘一元幹事長、山崎拓前副総裁、野党民主党の小沢一郎代表もアジア外交を批判の要としていただけに、逆手をとれば党内外を押さえ込めるとの計算だ。

第2の狙いは、本音では日中関係の悪化を危惧している米ブッシュ政権の不安を払拭できること。第3の狙いは、来夏の参議院選挙をにらんで、このサプライズ外交を攻勢の目玉にすることだ。

この安倍・胡会談実現に向けて日中は早くから動いてきた。なかでも5月にカタールの首都ドーハで麻生太郎・李肇星の日中外相会談が行われ、麻生外相が靖国神社の非政治化と非宗教法人化を骨子とする私案を提示したことが突破口となった。李外相もこれ以上の日中関係悪化は望まないとする発言があり、8月15日に小泉首相が靖国参拝しても中国は比較的冷静だった。

そして8月22日、李登輝前台湾総統の来日延期が報じられた。 9月12日から17日まで訪日すると発表して3日後、体調を理由に突如、延期を決めたのだ。

実は安倍氏が「新政権発足前なら」と李氏と日本で会談することを内諾していたが、突然キャンセルしたのだ。意味は大きい。安倍氏は日中首脳会談を実現するために、李登輝氏のみならず、台湾そのものを切り捨てたことになるからだ。祖父、岸信介元首相以来、福田赳夫、安倍晋太郎と脈々と続いてきた森派の「親台湾」は、安倍氏の手で果断に幕が引かれようとしている。

中国外務省は安倍氏の「君子豹変」を基本的に歓迎している。「靖国」と「台湾」では中国の政局のうえでも重みが決定的に違い、首脳会談受け入れへ国内説得の大義名分がつくことになるからだ。

しかし、韓国がこの動きをいち早く察知した。潘基文外交通商部長官(外相)がこのままでは日中韓3国のなかで韓国の盧武鉉政権だけ取り残されてしまうと危機感を抱き、 9月6日に訪韓した谷内正太郎外務次官に日韓首脳会談を提案した。韓国の面子を守るため、北京への途上、ソウルに先に立ち寄る歴訪案を日本側は提案している模様だ。

11日に日本記者クラブで行われた自民総裁選3候補の公開討論会では、安倍氏が「(首脳会談については)この場でつまびらかにできない」と述べたものの、麻生氏が「いろいろな形の努力が行われているのは確か」と水面下の調整の存在をほのめかしている。

ただ、ハードルがなくなったわけではない。靖国参拝自粛問題である。「参拝するかどうかは申し上げない」とする「曖昧戦略」の安倍首相がその約束を言明できないのなら、「せめて首相の名代となりうる人物からその保証を取り付けたい」というのが中国の条件だと言われている。しかし、周辺からは「靖国参拝への安倍さんの思いはまだ“成仏”していない」という声が聞こえる。

このFACTA報道で「台湾切り捨て」カードが問題視されれば、安倍氏を非難する声も出るとみられ、劇的な豹変を国内外に説明する言葉遣いは「極めて微妙でファジーにならざるをえない」。このため直前に折り合えなくなる可能性もまだ残っている。

※本誌10月号に掲載の全文はこちら(お読みいただくにはオンライン会員登録が必要です)。