阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2006年8月 7日 [メディア論]インタビュー:鳥越俊太郎氏(2)――責任ある参加と「炎上」

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オーマイニュース」日本版の編集長、鳥越俊太郎氏とのインタビューの続編をお送りする。前回、鳥越氏は「21世紀メディアの可能性は双方向性にある」と言い切った。確かに上意下達という統治システムが、既存の一方通行メディアにも知らず知らず染みついているのかもしれない。文明論に入ると鳥越氏は能弁になった。

さらに、鳥越氏がITmediaのインタビュー(7月10日掲載)で「2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る」と語ったことにも触れることになった。ネット掲示板擁護派のコメントが「オーマイニュース」のサイトに殺到したからである。この事態そのものが、ネットとニュース・メディアの融合の難しさの象徴ではないかとも思えてくる。

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鳥越 これ(双方向性)はメディアのあり方だけではなくて、政治とか、経済とか、社会とか、日本の社会全体のあり方とも関係してくると思うんですよ。

欧米のように市民革命があって、市民が自分の力を自分で信頼し、獲得し、政治をつくり上げていくというのではなくて、遅れて植民地競争の中に入って行った日本は、非効率的なやり方ではなく、効率的なやり方を取らざるを得なかった。十分な資本蓄積が行われて、経済の発展がずっと地方から中央まで含めて起きて、その上にブルジアジーというものができて、その上に市民社会というものができるという形ではなくて、まさに薩長土肥と言われる藩閥政治が、上から近代化を急激に行ったわけですよね。

当然、庶民は受けとめるだけで、自分が参加することはない。ただ、お上の言うことを「はいっ」て聞く。その結果として東京大空襲、原爆2発という大変な惨害を受けるわけです。その結果、戦争はしなくなり、軍部はいなくなったけれども、戦後も基本的な構造は変わっていない。中央の省庁官庁が国会も含めてすべてを仕切っている。

もちろん、少しずつ市民の運動というか、市民が政治に参加する動きが出てきて、最近ではボランティアとか、NGOとか、NPOという形で、一般国民や納税者も何かに参加しよう、社会に参加しようという気運はないわけではない。

しかし、メディアのあり方だけを言うと、やっぱりメディアが一番遅れています。メディアとその受け手の関係は、相変わらず明治時代と同じ一方通行です。ところが、インターネットの出現と、通信手段のブロードバンド化によって、これが変わってきた。参加することができるようになった。これからは、情報を受けていた人たちも、自ら情報発信者としてメディアの中に加わる、そういう条件がようやく出てきた。

そこで大切なのは、参加するということ。もう一つは責任ということですよね。責任ある参加なんです。無責任な参加は昔からあるんですよ。匿名でいいかげんな無責任なことを言ったり、人を非難したり、中傷したり、誹謗したりすることは大昔からある。しかし責任ある参加、自分の名前をちゃんと出して発言するということは、非常に日本は遅れている。

阿部 責任ある人たちの発言でもって「オーマイニュース」を構成するというのは、鳥越さんらしい明るい楽観論だと思いますけれども、2チャンネルなどのネット掲示板で氾濫する匿名の情報や意見に対して、鳥越さんが「ゴミ」と批判的なことを口にしたがゆえに、「オーマイニュース開店準備中ブログ」に罵詈雑言に近いコメントが殺到しましたね。
 
鳥越 無責任な罵詈雑言みたいな、そういうことだけで自己満足になっているインターネットの社会はかなりあるんですよ、ブログは、かなりそういうところがあるんです。

そのためにサイトが炎上する。顔は出さないんだから、どこの誰か分からない。しかし、一丁前どころか、1.5人前ぐらい口だけ達者だという人たちが、わあっと襲いかかるわけですね。それはやっぱりすごくアンフェアです。それではいいものはできない、いい社会にはならない。密告社会みたいなものですから。

阿部 2ちゃんねる投稿者とおぼしき書き込みが相当数あり、オーマイニュース開店準備中ブログは「炎上」したとも言われています。でも、罵詈雑言に対してサイトは閉じないということですか。

鳥越 今はブログですから受け付けていますけど、本格的にインターネット新聞が創刊されたら、匿名は受け付けませんよ。だって責任ある参加ということを謳っているわけですから、無責任なものは受け付けません。そうでなきゃ、これをやる意味がない(※編集部注:8月1日よりブログへのコメントは市民記者の登録者のみの受付に変更された)。

新聞だって、雑誌だって、ちゃんとあなたは(発行兼編集人)阿部という名前を出しているでしょ。何か問題があれば、あなたは訴えられるわけでしょ。これが、やっぱりメディアの基本なんですよ。責任ある発言、責任ある参加なんですよ。それを安易にいっぱいアクセスして欲しいからといって、匿名でも何でもいいからいらっしゃいとやったら、これはもう根底からメディアとして崩れますよ。

ブログはそれでいいんです。匿名掲示板とか、ブログの存在を全く否定する気はない。彼らはそこで遊んでいればいいし、楽しんでいればいい。ただ、寄せられたコメントをお読みになって分かりますように、同じ批判でもちゃんとした批判もあります。しかし明らかに自主的偏見とか、差別的、あからさまな人種的な、これはとても読むに耐えないというようなものもたくさんあります。そういうものは、僕らは全く受け付けません。

(2/5:「日本は捨てたもんじゃない」へつづく