阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2006年2月 3日 [ときどき代行]ときどき代行1――私のビフォー・アフター

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創刊準備を控えて、当ブログの書き手の阿部編集長がてんてこ舞いなので、ときどき代行してくれ、と頼まれました。きょうはその初舞台です。

でも、「締切りは5日後。あなたの文章力が問われます」といきなり言われたら、あなたならどうしますか。悩んだのは私だけでしょうか。先輩がたからは「根拠のない自信を持ちなさい」とか「映画の話題だけは絶対に勝てないのでやめなさい」とか、アドバイスをもらいました。ためになりました。

でも、私にとって月刊「FACTA」は聖なる媒体です。練習台に使うなど自分にも他人にも許せない。いや、そんな思い込みは危険かもしれない。それこそ統帥権干犯(とうすいけんかんぱん)かもしれない。それに、ブログと雑誌は違う……などと、あれこれ悩んだ挙句、「ま、いいか。言い訳はやめよう」という結論に達しました。

きょうのトピックスは「私のビフォー・アフター」。たまたま、あるフリー(無料)マガジンに、「やんばる雑誌」という1ページのコラムがあって、月刊「FACTA」にスペースをあげるから、自分で宣伝文を書いてくださいと編集長が頼まれました。

このフリー・マガジンは大手出版取次の日販が出しているのですが、彼らにとって書店ルートで売られていない雑誌は、商売にならない“アウトサイダー”です。そういう雑誌に勝手に「やんばる雑誌」と命名しているのですが、めったにお目にかかれない天然記念物のヤンバルクイナをもじったものですから、編集長は「売れない珍品雑誌を連想させるなあ」とぶつぶつ言って引き受けたようです。

月刊「FACTA」も基本的には書店ルートに乗りません。その宣伝文を書くという役目が私に回ってきました。午後9時から午前3時までかかりました。内容は以下の通り。

プロの情報マンが情報交換する時、「確実な筋」と言われれば、情報源が誰であるかを詮索しないそうである。信頼すると決めたら、いちいち詮索しない、疑わない。世界を動かすような重要な情報は、そういうネットワークの中でだけやり取りされる。

日本のマスコミ界にも似たような世界が存在することを、会員制月刊誌「S」を通して知った。「一体どこからこんな情報を取って来るのか」とワクワクしながら読んだものだ。そんな同誌の全盛期を支え、数々の伝説を築いた最強のコンビ、阿部重夫と宮嶋巌が05年11月に出版社を設立、4月に経済総合誌を創刊する。

これで全文ではありませんが、編集長に提出したら2時間後、返ってきた原稿は以下の通り。

真実は安くない。

フリー(無料)マガジン誌上では失礼かもしれないが、タダで得られる情報は、しょせん広告や幻影であって、ホンモノではありえない。カラフルなグラビアに、一瞬目を楽しませて、あとは忘れられていく「消耗品の情報」である。

プロは情報交換する時、信じられる情報源しか相手にしない。ウソかホントかのグレーゾーンで、うろうろと付和雷同するのは素人である。それがデイトレーダーなら大損、生き馬の目を抜くビジネス界では致命傷、インターネット掲示板なら野次馬で終わる。

さわりだけですが、もはや原形をとどめないほどの大整形でした。でも、編集長は添削するのに2時間もかけた様子がなく、私の見る限りほとんど数分の作業だったはず。文章はさらにこう続きます。

月刊誌「FACTA」(4月20日創刊予定)はフリー・マガジンの逆をいく。一冊1000円、それも年間予約(12冊分、1万2000円)と高い。ワクワクするような情報は、思い切って万札をフンパツしないと買えない、と知る人のための雑誌である。

原則、書店では買えない。キオスクにもコンビニにも置いてない。読者の自宅に直接郵送されてくる。ぎりぎりまで肉薄した真実は、深窓の乙女のようなもの。街なかで気安く触れられないのだ。毎月、胸を躍らせながら封を切る楽しみは、ひとたびクセになったらやめられない。

私の言いたかったこと、そのまんまです。忘れられていく「消耗品の情報」と、「深窓の乙女のような」情報。そうそう。それが言いたかったのだ。今回は自己紹介も兼ねて2つの文章をコピー&ペーストしてみました。私の恥をさらすようだけれど、編集者をめざす人にとってはなかなか良い教材になるのではないかと思います。

ちなみに今回登場のフリー・マガジンは「さらてん」(サラリーマン天国の略)といいます。東京・新橋駅周辺だけで6~7万部も無料配布するそうです。確かに月刊「FACTA」とは究極のミスマッチかもしれませんが、手に取る機会があったらご覧になってください。