阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2006年6月28日電通サイトのリンク拒否

    さて、きょうのFACTA無料公開記事は、竹島一彦公正取引委員会委員長のインタビュー。わが古巣、新聞業界の「特殊指定」問題に挑んだばかりか、電通の問題にも切り込んだだけに、その本音が聞きたかった。

    ところで、電通のウェブサイトのリンク原則拒否が少し前からネットで話題になっていた。電通をからかう論戦をのぞいてみたが、これはかなり笑える話だ。

    発端は、電通のサイトに載せてある居丈高のサイトポリシーにある。

  • 2006年6月27日タルコフスキー4――ディラン・トマス

    わが知り合いのポルトガル・ファンが怒っていた。オランダは汚い、と。退場だらけの荒れた試合で、おそらく次にあたるイングランドには負けてしまいそう。

    本日無料公開するFACTA最新号の記事は、「進学塾トーマスが躓いた映像配信」。上場企業が蜜月だったベンチャー企業のシステムを採用したはいいが、そのあとでトラブルになっている事例は、いい教訓になると思う。

    さて、誰かに言われたことがある。このブログの開始早々、書いていた旧ソ連の映画監督タルコフスキーの話、尻切れになっていますが、続きはまだですか、と。忙しさにかまけていたが、続きを書く前に、書き残したことにちょっと触れておきたい。

    タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」のリメーク版「ソラリス」(スティーブン・ソダーバーグ監督)に失望したと書き、そこで引用された英国ウェールズの詩人ディラン・トマスの詩の引用がとってつけたようで納得がいかないと書いた。詩をくさしたのではない。挽歌として、あるいは弔辞として、あれはいい詩だと思う。ただ、それを得々と引用するソダーバーグの”クサさ”が嫌だったのだ。

    詩はAnd death shall have no dominion「そして死は覇者にあらず」である。懺悔をこめて、ここに原文の初聯を引用しよう。以前、引用したタルコフスキーの父アルセーニの詩と読み比べてほしい。

  • 2006年6月25日点と線

    京都へ出張したので、ブログが書けなかった。明日からは、FACTA最新号の一部記事の無料公開(フリーコンテンツ)が始まる(26日は「驕るトヨタのセクハラ訴訟」)ので、ブログも再開しよう。

    往復の新幹線で佐野真一氏の「阿片王」と「旅する巨人」を読み直した。先日、平凡社の下中直人社長と会った際、同社が出版した「戦後戦記」を頂戴したからである。書き尽くされた中内論をここで評する勇気はないが、平凡社の本をぱらぱら目を通しているうちに、佐野氏の執念の上記2作を再読したくなった。

    両作品のバックグラウンドとして出てくる戦前の民族学と軍事インテリジェンスには、私も興味があっていつか本格的に検証したいと思っている。取材先が次々に鬼籍に入ることによって、ほとんど佐野氏の取材は途絶を余儀なくされているのだが、取材先が日本に偏っているため、実はまだ広げる余地があると思えるのだ。

    戦前上海の暗部については中国とアメリカ、およびユダヤ人社会に、まだ資料が埋もれているのではないか。もちろん、情報統制がなお続く中国で当時の資料が公開されるのは当分先だろうが、アメリカには戦後日本から押収した資料も含め、まだ材料があると思う。

    そんなことを思ったのは三つほど理由がある。

  • 2006年6月22日村上叩き第二幕4――福井火砕流

    水面下の動きが速い。追うのに息せききって、このブログの執筆がついていけなくなり、数日空白ができた。

    さて、少々手前ミソ。FACTA最新号で報じたスクープ「佐藤ラスプーチンの『爆弾証人』」が、21日にさっそく裏付けられた。鈴木宗男疑惑に連座した起訴休職中の外務省職員、佐藤優氏の控訴審に、一審では出廷拒否した元条約局長の東郷和彦氏が弁護側証人として出廷したのである。

    証言内容はほぼ本誌報道どおり、裁判上そこにはらむ問題もまた本誌が先んじて書いた通りなので、22日朝刊の各紙の記事と読み比べていただきたい。それにしても、鹿取克章外務報道官に対し、霞クラブの記者の質問は甘いと言わなければならない。外務省のサイトによれば、一問一答は以下の通り。

  • 2006年6月20日村上叩き第二幕3――戦犯

    もう応援はしないとはいえ、またもやトホホのドローだった。

    他国選手のゴールシーンを繰り返しみせられると、日本って出場国でいちばん弱いのではないかと思えてくる。

    わけても戦犯は柳沢だったと思う。肝心なときに役に立たない。絶好のシュートチャンスにも決められないふがいなさを、彼ほど堪能させてくれるFWはいない。わがニッポンの誇るべき象徴である。

    さて、一夜あけて、サッカーの試合運びになぞらえて村上ファンド叩きを再考してみる気になった。

  • 2006年6月16日村上叩き第二幕2――ザル法ならぬマス法

    村上世彰氏逮捕以来、新聞や雑誌に洪水のように流れた記事に目を通してみた。玉は少ない。月刊「文藝春秋」の記事をはじめとして、シンガポール移転を告げた村上氏の片言隻句以外、めぼしいファクツが見当たらないのだ。枯れ木も山の賑わいの焼き直しが多い。正直、編集者としては同情を禁じえない。お互いさまだが、時間のないなかでスケジュールと追いかけっこだった状況は、他人事ではない。

    しかし、「ヒルズ黙示録」の著作もあり、知人であるAERAの大鹿記者が書いた6月19日号の記事「村上『無罪』への大逆転」には、ちょっと意表をつかれた。なるほど、そういう見方もできるのかと思ったが、すこし異論がある。敬意を表した上で、何に違和を感じたかを書こう。

  • 2006年6月15日村上叩き第二幕1――村上ファンドのリストが出る

    村上ファンド叩きは「フェーズ2」に入ってきたようだ。福井日銀総裁が1000万円出資していたと告白するなんて、参院財政金融委員会で質問に立った民主党の大久保勉議員も予想外の出来事だったらしい。

    大久保氏は奇しくも孫正義氏や堀江貴文氏と同じ久留米市出身。東京銀行からモルガン・スタンレー証券を経た金融出身議員で、どちらかといえば地味な「金融オタク」だった。ごりごり暴露質問で責め立てる「爆弾男」タイプとは違う。ニセeメールで前原民主党前代表の首を飛ばした、オソマツな永田寿康前衆院議員のような山っ気はなかったのだ。

    13日の質問でも大久保氏は淡々と、村上ファンドの応援団だった福井総裁の倫理的責任を問おうとした。ところが、総裁のほうから告白答弁。ざわつく傍聴席に、あわてて深入りするのを避けたほどだ。しかし、総裁はなぜ月央の政策会合が行われる前日に、クレディビリティを問われるような告白をしたのか。

  • 2006年6月14日クローサー4――ブラック・フライアーズ橋

    あらら、である。福井俊彦日銀総裁が、国会で村上ファンドに1000万円出資し、いまなお出資者であることを明らかにした。うーん、である。脇が甘いというか、よりによってこの時期に、責任転嫁の得意な永田町のセンセイの前で、むざむざ自分を好餌にさしだすようなものである。

    ちょっと浮き世離れしたトピックを書いているうちに、だんだん風雲急を告げてきた。あすからは、なまなましい話題に復帰しよう。その前に「クローサー」の連載を本日で終えることにする。

    さて、「クローサー」の意味は何だろう。シナリオのどこにも説明されていない。

    つづりは同じでも、まさか野球用語の「クローザー」ではあるまい。最後のリリーフピッチャー、かの大魔神の役回りで、「締めくくり役」というほどの意味だが、野球と縁のない英国ではその言葉自体を聞かない。

    それに「締めくくり」という意味だったら、「se」の発音がズと濁るはずである。やはりここは「近い」「親密」という意味の形容詞の比較級だろう。だが、何により近いのか? もつれる恋愛劇だから、恋人に誰がより近いかのゲームとしてこのタイトルが考えられたのだろうか。ずっとそう思っていて、違う含意があるのに気づいた。

    ヒントは、この芝居の冒頭でアリスが事故にあう「ブラック・フライアーズ橋」だと思う。

  • 2006年6月13日クローサー3――惨敗

    見て損した。ジーコ・ジャパンの1-3の惨敗はひどかった。

    1点先制してヌカ喜びさせたぶん、罪が重い。ブラジルとクロアチアに勝てると思えないので、もう、応援するのはやめました。

  • 2006年6月12日クローサー2――スフインクスの謎

    マーバーの戯曲「クローサー」論の続き。

    当初、映画版に出演したジュード・ロウもアメリカ人かと思っていたのだが、彼もイギリス人らしい。知人から指摘してもらった。映画のよろず知識専用サイトによると、ロンドンのルイシャム出身。私の好きな怪優ゲイリー・オールドマン(少女時代のナタリー・ポートマンと「レオン」で共演)が住んでいた荒っぽい町、Deptfordのすぐ目と鼻の先にあるショッピングセンターや各種店舗や市場が立ち並ぶ繁華街である。

    この知人によると、80年代後半のルイシャムは、そうとう荒れていたそうな。目の前でスリにあって、叫んでいる黒人の太ったおばさんや、カリブ系黒人やインド人の多い町だったという。「映画や小説を通して知る70年代のルイシャムは、ネオナチも暴れる人種差別の町でもあったようです」とか。

    だとするとジュード・ロウもワーキングクラスということになる。ちょっとノーブルな顔立ちなので騙されるが、コックニー(ロンドン庶民方言、「マイ・フェア・レディー」のイライザが喋るべらんめえ英語)を喋るのかいな。

  • 2006年6月11日クローサー1――ふがいなしイングランド

    つゆ空だが、いつのまにか夏が近い。頭が貧血状態ですっからかん。先週1週間は、むち打ちのあとで間なしに、嵐のような編集作業に明け暮れたせいで、ほとんどブログを書けなかった。ようやく編集作業が一巡した土曜は整体に行って昼寝して、夕方から出社した。W杯もどこか遠くのできごとである。

    それでも、土曜の開幕戦はヘトヘトで見逃したので、この日のイングランド戦からテレビ観戦。ベッカムさまのミーハー的なファンではないが、しばらく駐在したのでイングランドを応援することにしている。試合開始早々、ベッカムのFKでオウンゴールを誘った1点を入れたのはいいが、そのあとはフラストレーションの連続だった。

    ジーコ・ジャパンみたいにもたもたして、シュートが打てない。前評判では優勝候補というが、これで勝ち抜けるのかね。観客もやけっぱちみたいなゴッド・セーブ・ザ・クイーンを歌っていた。ふがいなし、イングランド。

    口直しに思い出話を書こう。

  • 2006年6月 8日電通を撃つ12――失語症

    日本に留学していた中国のジャーナリスト王建鋼氏(月刊誌「経済」主筆)に、「中国新聞週刊」6月5日号の「グローバルダイジェスト」(名刊要覧)欄で本誌を紹介していただいた。

    本誌が亀鑑とする英国のThe Economist、アメリカのTIMEとNewsweek、そしてドイツのDer Spiegel誌と並んでいる。まだよちよち歩きの本誌としては、名だたる雑誌と肩を並べるのは面はゆいが、ま、心意気はこんなところにあります。大志をくんでくれた王さんに感謝します。

    さて、編集もピーク。どれだけ他誌および新聞にリードを保てるか、厳しいところです。

    電通疑惑報道<下>の続きとして、再度チャレンジした広報室長とのQ&Aをご覧ください。<上>で恐れをなしたのか、官僚並みに前例踏襲答弁ばかり。この不誠実、この会社の体質でしょうか。

  • 2006年6月 6日「逃げなかった」村上会見は立派

    4日の日曜から実質的に編集期間が始まったので、またこのブログは綱渡りになる。体力をどこで使うかは難しい判断だ。5日午前4時まで仕事したので、家に帰って寝たのは5時近くだったと思う。

    それから6時間後、懐かしの東証兜クラブ会見室で村上氏の会見が行われた。さすがに現場には行けなかったが、睡眠を切り詰めてテレビで見守った。

    目の周りにすこし隈があったが、「娑婆の光をふり仰ぐのも今日限り」と覚悟してふっきれたのか、すっきりと論旨明快、責任を明らかにし、進退も潔く、一世一代の会見だったと思う。もともと能弁な男だが、あすこまで整理された言葉を、この屈辱の日になかなか吐けるものではない。日本に逮捕されに戻ってきたのも見上げた度胸である。彼は最後は逃げなかったのだ。

    「聞いちゃった」発言には苦笑したが、「キャッシュマウンテン」という言葉には実感がこもっていた。4000億円のファンド資金は現実には大きすぎて、運用難に陥っていたということだろう。ニッポン放送やTBS,西武鉄道や阪神など、ファンドマネジャーとしてはいかがかと思われる銘柄に深入りしたのも、その巨額資金の重圧があったからと思える。

  • 2006年6月 3日村上氏摘発の「いやな感じ」

    「村上ファンドを捜査」の一斉報道、まったく意外性がないというか、検察得意のリークで事実上の世論工作に、またかと感じるのは私だけだろうか。帰国でちょっと勇み足した懺悔で言うわけではないが、シンガポールへ逃亡したはずの彼が、わざわざ日本に戻って聴取に応じることになったのはなぜなのか。検察はどういうカードを切って、彼を舞い戻らせたのかが知りたいのだが、誰もそれを解説してくれない。

    中部国際空港に飛来した写真を見ると、不精ヒゲをはやして心なしかやつれている。彼が通産省をやめた当座、広尾ガーデンヒルズのM&Aコンサルティングの最初のオフィスで会ったが、あのときと比べると生意気盛りの童顔がちょっと大人びた感じがする。やはり巨額のカネがファンドに集まって、そのプレッシャーに負けて、無理を重ねたという反省があるのではないだろうか。

    おりしも厚生労働省が「出生率1.25と過去最低更新」を発表した。村上氏は4人の子持ちという子沢山の父であり、本来はヒョーショージョーものである。しかも、昨年末に第5子ご懐妊の吉報を得ていたらしい。シンガポール引越しも静かに子供を産んでほしいという思いもあるのかもしれないが、父親逮捕の年に生まれた子、というのはあまりに悲しい運命である。それがあの憂いを帯びた表情になったのか。子供が「さまよえるオランダ人」にならないためにも、あえて聴取に応じたのだろうか。

    とにかく、ライブドアに続き、これも明らかな「国策捜査」と思える。阪急・阪神TOBのさなか、それを有利にするような捜査なのだが、そういう配慮も検察がしなくなったことは「いやな感じ」である。

  • 2006年6月 2日電通を撃つ11――インデックスとのQ&A(下)

    携帯コンテンツ配信のインデックス社との取材のやりとりの後半をお届けしよう。

    前半ではちょっと辛辣なことを書いたが、悪意はないので念のため。こちらも礼を尽くして問いを発しているので、丁重な返答にはお礼を申し上げるほかないが、問題はやはり中身である。取材する側がある程度予習していて内部情報を持っているときは心してかかられたほうがいい。昨日今日のヒヨっこ記者でないことを把握せず、勝手に美辞麗句をならべているととんだ恥をかきますよという警告である。

  • 2006年6月 1日電通を撃つ10――インデックスとのQ&A(上)

    電通疑惑を解明するため、インデックスに送った質問状を今度は掲載しよう。

    インデックスは着メロなど携帯電話用のコンテンツ配信で急成長した会社(ジャスダック上場)で、売上高は1000億に達し、電通とも資本・業務両面で提携している。ただ、4月19日に発表した業績の下方修正で株価が急落、その後も低迷が続いている。電通のインサイダー取引疑惑が一連のモバイル戦略のなかで生まれてきたことを考えると、同社との関係もその一端に位置づけられると考え、全体像を把握するために取材を申し入れた。

    ただし「電通インサイダー疑惑に御社が関係ないことは承知しておりますが、その背景説明の部分で御社との関係に振れますので、よろしく(回答を)ご検討ください」と断り書きを添えたため、中身の是非は別としてかなり長い返答をいただいた。長文になるので、今度はQ&A形式で記載する。