阿部重夫主筆ブログ「最後から2番目の真実」

2005年12月23日 [ソニーの「沈黙」]ソニーの「沈黙」9――中身のない「門前払い」回答

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このブログの初回(12月10日)で掲げたように、ソニーに対しては11月29日に質問状を送った。音楽CDに搭載されたコピー制限プログラムの問題について、日本のソニー広報センター コーポレート広報部名義の回答を得たのは12月2日である。

拝啓

 寒冷の候、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。また、平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 大変遅くなりましたがソニーBMGの音楽CDに関して先日頂戴したご依頼内容につき回答させて頂きます。弊社法務担当者へのご取材につきましては、社内で検討致しました結果として、現在、ソニーBMGとして係争中の案件であり、取材は辞退させて頂きたく、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。誠に申し訳ございません。本件に関していただいておりましたご質問事項に関しては、以下の通り回答させていただきます。
 ご査収のほど、宜しくお願い致します。

敬具

以下、こちらの個別の質問についてQ&A形式で応えていくのだが、まず上記の文面にどんな印象を得ただろうか。「係争中の案件で法務担当者の取材には応じられない」という回答を、私は取材拒否、門前払いと受け取った。フィンランドのブログの告発から1カ月も経ちながら、顧客のパソコンの機能を損じるとまで言われ、テキサス州の州検察にスパイウエア禁止の州法違反で訴えられた問題に、なおダンマリとはあきれるほかない。

製品は出荷も製造も停止、既販売分は回収・換金という措置をとりながら、法廷で不利になるからメディアに対して(同時に顧客に対しても)緘口令というのは、メーカーにあるまじき態度と思える。前会長兼CEO(最高経営責任者)の出井伸之氏が、しばしば口にしたCS(顧客満足)はどこへいってしまったのか。

ソニーに提示した質問自体はおとなしいもので、それほど回答に窮する難問とは思えない。広報の辛い立場を慮ったのだが、むしろそれがこういうそっけない回答になったのか。たとえばQ1は「テキサス州が州法違反で訴えたこと、米国での集団訴訟(クラスアクション)に対するソニー本体としての見解、および製造物責任(PL)と著作権との整合性をどう考えますか」である。これに対しソニーの回答はこうだった。

A1:テキサス州が州法違反で提訴した件、また米国でのクラスアクションは、本件のビジネス責任を負うソニーBMGを対象として行われており、同社が対応しております。なお、本件に関するカスタマーへの対応は米国のソニーBMGが責任を持って対応しており、日本国内については、該当CDの輸入販売元であるソニー・ミュージック・エンターテインメント(SME)が対応しております。

そんなことはとっくに承知である。ソニーは何が言いたいのか。アメリカの合弁企業がしでかした不始末だからと海の彼方にボールを投げ、本社は口をぬぐっていたいという意図が透けて見える。輸入版CDの回収についても日本のSMEは輸入販売元に過ぎず、米国と同じ措置をとったと言うだけで、外堀で延焼を食い止めようとしているのだ。

テキサス州がソニーBMGを訴えたのは11月21日。アボット州司法長官は「消費者に対してテクノロジー版のスパイ行為を働いた」と非難している。ニューヨーク州では「泣く子も黙る鬼検事」スピッツアー州司法長官率いる州検察と、ラジオ局への楽曲不正売り込みで罰金を払って和解したばかりだが、新たに勃発した疑惑にスピッツアー長官のスポークスマンが「調査中」としたのが不気味だ。

カリフォルニア州では電子フロンティア財団(EFF)が集団訴訟を起こしたほか、他州でも消費者団体などが提訴の動きを見せている。訴訟社会のアメリカで「悪者」ソニーの足元をみて、弁護士たちが雲霞のごとく訴訟を仕掛けてくる可能性もあり、ソニーは内心戦々恐々で舌が凍り付いたというのが実情ではないか。

第二の質問「最終的な責任は、XCPを開発した(英国の)ファースト4インターネット社にあるのか、ソニーBMGにあるのか、どちらとお考えでしょうか」に対する答えには、もっと失望させられた。

A2:本件に関しましては、現在ソニーBMGが係争中の案件につき、コメントは控えさせて頂きます。

直接取材の申し入れと同じく門前払いではないか。第三の質問は、カミンスキー氏が発表したサーバー“汚染”の驚くべき数字(56万8200台)を前提にして、「ネットメディアでは憶測が乱れ飛んでいますが、ルートキット(コピー制限プログラムXCPに仕込まれたスパイウエア)感染パソコンは世界で何台、日本で何台とソニー自身は推定していますか」と聞くものだった。

A3:ソニーBMGとして現時点でXCPソフトウエアがインストールされたPCの数量の推計はしておりません。

そんなはずがない。スパイウエアが感染パソコン内で得た個人情報は、“密告”通信としてソニー・ミュージックのサイト、またはコピー制限ソフト開発企業のサイトに発せられたはずだ。その件数を集計すればいいし、集計していないはずがない。パソコンユーザーが誰かを突き止め、コピー頻度がどれだけかなどの情報を密かにストックしていたのではないかという疑惑に、これでは応えたことにならない。

大企業病の典型である「慇懃(いんぎん)無礼」が、ここに見えないか。ソニーの回答はあすも続報を書こう。