謎の「中古車王」に三菱UFJが肩入れ

2016年6月号 BUSINESS

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「あの三菱東京UFJ銀行(BTMU)が間違いない会社だというから信じてしまったが、やはり怪しすぎる」――。昨年6月にBTMUが組成した100億円規模のシンジケートローンに参加した銀行の審査担当は、臍を噛む。

融資先は「エスビーティー」(SBT)という中古車輸出業者。本社は横浜にあり、資本金は1千万円だが、2015年9月期の売上高は実に921億円(前期比5割増)もあった。アフリカ、アジア、中南米の途上国中心に40以上の海外拠点を展開し、円安を追い風に飛ぶ鳥を落とす勢いだ。 

関連会社の「オートコムジャパン」も事業内容は同じで年商300億円に達するとみられ、いまや国内最大の中古車輸出グループを形成する。 

社長の柳田裕一氏(42)はパキスタン出身。1999年に日本に帰化し、セイヤド・ヤディーク・アリィ・シャーから改名した。SBTの社名はもともと93年に「セイヤド・ブラザーズ・トラディング・カンパニー・リミテッド」として会社設立したことに由来するが、共同経営者だった兄弟は2006年に解任され、現在の株主は柳田社長のみで「完全なワンマン経営」(業界関係者)だという。

BTMUはこのようなSBTを「メインバンクとして事業拡大を全面支援する意向」(銀行筋)で、柳田氏に潤沢な仕入資金を提供するため前述のシンジケートローンを組み、みずほなど大手銀から地銀、信金、リース会社まで、異例ともいえる23の金融機関を巻き込んだ。さらに大手のトーマツを会計監査人に迎え入れ、「『上場を目指そう』と熱心に社長を口説いている」(金融筋)という。

そこでだが、「業界内の評価は最悪」(オートリース関係者)などの悪評はさておき、冒頭の銀行マンが問題視するのは、柳田氏が昨年9月に設立したグループ会社「SBTキャピタル」が手がける投資の中身だ。

今年2月にジャスダック上場の「fonfun」の大株主として登場し、4月には同じくジャスダック上場の「ジェクシード」の筆頭株主になった。

f社もジ社も売上高は数億円で赤字続き。

f社は、過去に組織ぐるみの不正資金流出や有価証券報告書の虚偽記載が明るみに出たほか、昨年は大株主の光通信とのゴタゴタがあった。

ジ社も、民営化に伴い運営を受託した複合施設「中野サンプラザ」(東京・中野)との架空取引疑惑が07年に報じられ、それをきっかけに内紛、訴訟などさまざまな問題が浮上している。 今回SBTキャピタルがジ社の株式を取得した相手は、ジ社のオーナー一族の資産管理会社だが、f社にしてもジ社にしても、投資案件としては通常は慎重になる部類だ。

さらに、SBTの別の関係会社「イー・ディフェンダーズ」では、クレジットカードの不正利用に際して加盟店が強いられる返金を肩代わりする「チャージバック保証」という聞き慣れないサービスを手がけているが、リクルート系ショッピングサイト「ポンパレモール」の出店企業が一気に加入。保証金の支払いが急増し、カード会社から、経営的にうまくいくのか心配する声も出ている。

BTMUに同調した金融機関の不安のタネは尽きない。

   

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