実兄の説得でようやく日本郵政社長を降板。だが、その妄執が歪めた東芝に今も暗い影。
2016年5月号 BUSINESS
高級ホテルを思わせる慶応病院の特別室。日本郵政社長だった西室泰三(80)はそのベッドに身を横たえている。傍らに座る高齢の人物が、西室に言葉を投げかけていた。「もう潮時じゃないか。後の人に任せる時なんだよ……」 西室は2月8日に極秘裏に入院した。体調不安から再起不能との噂が流れるなか、頑として日本郵政社長の椅子を手放そうとはしなかった。それが急転直下、自ら辞意を官邸に伝える。西室を説得したのは、西室と3歳違いの実兄、元月島機械会長、黒板行二だった。実兄の説得に西室の目尻にはうっすらと涙が滲んだ。思えば、およそ1年前、西室は絶頂の時を迎えていた。2015年4月30日、日本郵政グループ3社同時の株式公開を前に、西室はロードショー(投資家への説明会)最大の見せ場、ニューヨークにいた。「米国が第二の故郷」という西室にとっては、その人脈を世界に見せ付けるには格好な ………
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