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6万人の職員がそれぞれに「一隅を照らす」

第一生命のチームワーク力

災害時こそ、生命保険の社会的役割を発揮する時。お客さまの安否確認に全社を挙げて取り組むとともに、独自の被災地支援ボランティア活動でも注目を浴びている。

2012年2月号

カキの種付け作業を行う第一生命のボランティアチーム(気仙沼市唐桑地区

「3階に上がった直後に津波が押し寄せ、周囲の民家はすべて流されました。夜になると火の海が迫り『ここで死ぬのかな』と思いました」

第一生命仙台総合支社気仙沼営業オフィスに閉じ込められた職員は極限体験を語った。2階まで浸水したオフィスに職員6人が閉じ込められ、命からがら3日後に自衛隊に救助された。

今回の震災で、岩手、宮城、福島の3県に54オフィス、職員約1500人を擁する第一生命も被害を受けた。盛岡支社釜石営業オフィスも2階まで浸水し、大船渡営業オフィスは建物ごと水没、天井が落ちた。仙台総合支社女川営業オフィスは建物が丸ごと流出し、福島支社勿来営業オフィスは余震で壁が崩壊、立ち入り禁止となった。

第一生命グループ6万人の「絆の力」

震災直後、第一生命は渡邉光一郎社長を本部長とする災害対策本部を立ち上げ、グループの総力を挙げた被災地オフィスの「救援」「復旧」に取り組んだ。「保険金のお支払いを含めた保障機能をご提供することが私たち生命保険会社の社会的役割です。災害時だからこそ、被災されたお客さまの安否確認に全力を注ぎ、一日も早く安心して生活していただけるよう各種お手続きを滞りなく行うとともに、保険金等を確実かつ速やかにお支払いすることに全社一丸となって取り組みました」(被災地お客さま支援対策プロジェクトチーム廣中恭明部長)。

津波で2階まで浸水した第一生命仙台総合支社気仙沼営業オフィス

福島県郡山市での「よちよちコンサート」のひとこま

とはいえ、被災地での第一生命の安否確認対象件数は86万件にのぼる。ライフラインが寸断され、電話も繋がらない中、職員は瓦礫で埋まる街並みを泥だらけになりながら、お客さまのご自宅や避難所を訪ね、安否確認や必要なお手続きの案内を行った。また、安否確認だけでなく、物資や衣類なども避難所や訪問先のお客さまにお届けした。ミネラルウォーターなどは幼いお子さまがいるお宅に届けられ、ミルクを作る際に大変喜ばれた。家を流された方には、ご自宅のあった付近にメモを置き、1カ月後に連絡が取れたケースもあった。訪問活動には本社からのべ270人の職員が応援に駆け付け、コールセンター等からの連絡は10万5千回、ダイレクトメール発信は60万件に達した。昨年末には99・98%の安否確認を成し遂げた。こうした安否確認活動はテレビでも放映され、これまでに6千件を超える感謝の声が寄せられた。陣頭指揮に立った渡邉社長は「被災地でお客さまを一人ずつ訪ね歩き、お手続きに親身に対応していくことは決して派手な仕事ではありませんが、自ら被災しながらも個別訪問に歩く仲間の姿が全国の仲間の心を動かし、チームワーク力を発揮しました。それぞれの持ち場でその役割を精一杯果たし、被災地の一隅を照らす努力の積み重ねが実りました」と語る。

気仙沼で「産業復興支援」

全社一丸となった被災地支援は、ユニークなボランティア活動にも表れている。昨年4月から8月まで日本経団連のボランティアプログラムに職員が参加し、秋以降は被災地のニーズに合わせた第一生命独自の支援内容に力を入れてきた。9月25日には、福島県郡山市こども総合支援センター「ニコニコこども館」で、放射線の不安から外出できない子どもたちを音楽で癒すコンサートを催した。第一生命が支援するNPO法人トリトン・アーツ・ネットワークの協力のもと、プロの演奏家を派遣し、乳幼児を含む子どもと保護者を対象とした「よちよちコンサート」などを行った。親子が円形に座り、その真中でバイオリンやチェロを奏でる。子どもたちは音楽と一緒に体を動かしたり、手を叩いたり、実にほほえましい。

気仙沼市唐桑地区での産業復興支援型ボランティア活動も話題を呼んだ。気仙沼はカキやワカメなどの養殖で有名だがインフラが壊滅的打撃を受けた。ようやく再開のメドが立ち始めたが出荷まで2年を要する。年内の種付けの為の人手の確保が急務だった。第一生命は地元住民、漁業組合、観光協会などで結成された「復興支援協同体」に協力し、10月から11月にかけて3チーム計約60人のボランティアを送り込み、養殖用いかだの組み立てやいかだを固定する土嚢づくり、ロープにカキやホタテなどを吊るす種付け作業に取り組んだ。社内公募のボランティアは参加費の半額を個人負担する形だが、「力強い地元の皆さんに逆に勇気づけられた」(40代男性)、「この大震災を絶対に風化させてはならない」(30代女性)などの感想が寄せられた。今後、これらの養殖カキやホタテ等は社内外のイベントで利用するとともに、同地区での春先からの活動再開を検討している。まさに、一過性ではない継続した支援の取り組みである。

また、第一生命の拠出金をもとに設立された一般財団法人「都市のしくみとくらし研究所」は昨年5月、被災3県の復旧・復興支援のため3億円を上限とする寄付を行うことを決定した。岩手県と協議を進め、校舎が全損した陸前高田市の県立高田高校の再建事業に1億円の寄付を決め、その目録贈呈式が12月16日に県庁で行われた。同財団では、震災で被害を受けた公共性の高い施設の復旧・復興を対象とする支援を、残る宮城県、福島県でも行うことにしている。

決して派手ではないが、被災地の一隅を照らす第一生命のチームワーク力に期待したい。

(取材・構成 編集部 和田紀央)