阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」
高橋洋一・竹内薫「鳩山由紀夫の政治を科学する」のススメ
2010年01月10日 [書評]

豊島園での奇妙な事件で一時蟄居を余儀なくされていた「埋蔵金男」高橋洋一氏の復活第二弾の本である。昨年はあのスキャンダルだけでなく、自転車でつまずいて足を折るなど個人的にも色々災難につきまとわれただけに、今年はとにかく無事を祈りたい。
09年11月号(10月20日発売)のFACTA編集後記で書いたように、彼の現場復帰は10月刊行の「恐慌は日本の大チャンス」(講談社)で著者名を明記したことから本格化した。豊島園の一件はそこで説明されている。警察官僚による意図的(?)なリークが、彼のライターとしての「抹殺」にならなかった証明が、これらの本だと言えよう。
今回の「鳩山由紀夫の政治を科学する」(インフォレスト、800円)も、副題が「帰ってきたバカヤロー経済学」とあるように、同社が昨年5月に出した「バカヤロー経済学」の続編である(「『バカヤロー経済学』のススメ――ホームズとワトソンの漫才」参照)。前編が彼の名を秘していたのに対し、今回は堂々と彼の名を共著者として出している。講談社から本を出した後、高橋氏は田原総一朗氏のラジオ番組やテレ朝の「サンデーモーニング」にも出演、メディア的にはもう支障がなくなったようだ。
両編とも対談形式で、東大理学部物理学科を卒業したサイエンスライターの竹内氏が、同じく東大理学部数学科と経済学部を卒業した「先生」高橋氏に、経済学(というより経済そのもの)の虚実の教えを乞うスタイル。2人とも「理系脳」なだけに、同じく東大工学部計数工学科を卒業して米スタンフォード大学でオペレーションズ・リサーチ(OR)を専攻した鳩山首相の思考回路を、ORで読み解こうという趣向である。
ORやゲーム理論、陰関数などが出てくるが、数式を使うような野暮はしない。中身は「理系脳」2人による漫才である。本の腰巻きには、学帽とガウン姿の2人の写真がシャレで載っているが、ほんとに「理系漫才」をやったら受けるのではないかと思うほど、呼吸がぴったりあっている。しかも現下の鳩山政権の不可解な行動を明快に解いてくれるから、数学にも経済学にも素人であるモノグサ諸兄には、笑って学べる楽しい本である。いっそのこと「宇宙人」宰相も入れて、「てんぷくトリオ」みたいにやれば面白いかもしれない。
ふたりとも学歴も知識も申し分ないはずなのに偉ぶらない。最年少で公認会計士試験を通ったというイヤミが売りの、何の役にも立たない女性ハウツー本作家の駄本が、ベストセラーになるなら、この本のほうがずっとお薦めである。途中経過を言わず、結論をぽんと言うだけだから、忙しくて結論だけ知りたい人にはうってつけかもしれない。
ただし、本書では最後にオチとして「フォーク定理」が出てきて、その説明をあえてしない。「囚人のジレンマ」を知っている人は、非協力(裏切り)でナッシュ均衡が成立することを知っている。が、無限回の繰り返しゲームになると協力が均衡解になる。それがなぜフォーク(ロア)定理と呼ばれるかを知っていれば、最後にニヤリと笑える仕組みである。
投稿者 阿部重夫 - 20:00| Permanent link | トラックバック (1)
