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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

人知れず微笑まん――日銀総裁の奇妙な会見

2009年12月21日 [金融]

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笑ってしまった。でも、声を立てずに。

先週末、12月18日の日銀政策決定会合と白川方明総裁の会見である。決定会合の結論は政策金利である無担保コール翌日物金利の0・1%目標を維持する、つまり変更なしということなのだが、「この機会をとらえ、措置の背景にある物価安定に関する日銀の考え方をより明確な言葉で表現する」として、妙なことを言い出したのである。

日銀として消費者物価指数の前年比ゼロ%以下のマイナスの値を許容しえないこと、および委員の大勢は1%程度を中心値と考えていることをより明確に表現することにした。

これが笑わずにいられようか。ちょうど同時期に本誌1月号(12月20日発売)で「白川日銀は『デフレ誘導』」という目玉記事を載せて、日銀の金融政策が06年の量的緩和、ゼロ金利政策解除以来、コアCPI(エネルギー・食品を除く消費者物価指数)で一度も「マイナス領域」を脱出していないことをグラフで立証しているからだ。

ゴッツアンです。一雑誌の日銀批判に政策決定会合と総裁会見で反論していただくとは光栄の限り。白川総裁の“前代未聞”の友情に感謝します。私はこの会見に同席していないけれど、まだ本誌記事を読んでいなかった日銀クラブの記者諸兄はキツネにつままれたような顔をしたらしい。こんな質疑応答がある。

記者 従来の0~2%程度の何が問題なのか。
総裁 時として、日銀がマイナスの領域を容認しているとか、デフレを容認しているとの声が一部にあったことは事実である。そうした誤解があるのであれば、といた方がいいということである。何か実質を変えたということではない。

あとで「FACTAを読んで、総裁が何を気にしているかがわかった」という声を聞いた。もっとも早くから(08年10月の世界協調利下げ不参加から)日銀を批判していた本誌の主張に先回りしようとした努力があらわで、これまたまことにうれしい。

だが、本誌の記事を読めば分かるように、総裁会見の内容は弁明に終始している。結果として「マイナスを脱せなかった」原因の分析がない。本誌は日銀の金融政策、とりわけインフレ・ターゲティングを拒むあまり、デフレ・ターゲティングに陥った白川総裁、山口副総裁の臆病と判断ミスを糾弾している。金曜の会見自体、「(政策の)実質は変わらない」が「マイナスを許容しない」ことを明確にしたなどと、総裁自らリップサービスでしかないことを白状している。

しかも今度は「広い意味で時間軸効果」だとか。新型オペは「広い意味で量的緩和」。よほど「広い意味」という曖昧な表現がお好きらしい。はしなくも速水総裁時代の「量的緩和」や福井総裁時代の「時間軸効果」ではないと言っているにひとしく、そこに透けて見えるのはマネタイゼーション(日銀の国債買い入れ)を最後の抵抗線とする彼および日銀主流派の頑固一徹の姿勢である。

世界が危惧しているのは、病気あがりの日本経済に「大リーグギブス」をはめて、肩甲骨も肋骨も折ってしまう星一徹流のスパルタだ。金融危機の深刻だった米国はマネタイゼーションに踏み切って、ようやく改善の端緒をつかみ、買い入れをやめた。出し渋ってきた日銀は一足早く「出口」の布石を打って、すぐ事実上の撤回に追い込まれた。

そのジグザグを棚にあげて、「総裁はどうしたらデフレを脱却できるか悩んでいる」と聞く。おいおい、青い鳥は家のなかにいる。元凶のあんたが辞めたらいいんや。

投稿者 阿部重夫 - 11:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 編集長 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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