阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」
中国軍事パレードの初公開ミサイル5機種――盧四清寄稿より
2009年11月26日 [国際]
FACTA最新号(09年12月号)では、香港の中国人権民主化運動情報センター主席の盧四清氏が「中国『人権抑圧』にドイツ首相が痛烈な一語」を載せているが、その前段の中国軍事パレードの分析をここに別途掲載します。12月掲載の誌面ではいささか古いので、雑誌ではなくブログで載せる次第である。
読者の方はご覧になりましたか? 建国60年の盛大なパレードは見るとぞっとするせいか、日本ではあまり詳細に報道されていない。しかしインスパイアの成毛眞氏のブログ(10月2日)には、その延々と続くCCTVの中継画像がYouTubeをエンベッドする形で引用されている。
さすが読書家の成毛さん、ミリオタから歌舞伎まで相変わらずなんでも好奇心をお持ちのようで、まさにこれを見ると百聞は一見に如かずと思える。習近平国家副主席がなんで人民軍事委副主席の座を手にいれたくてならないかがよくわかるからだ。
しかし国家の夜郎自大というのはどこでも退屈なもので、壮大であればあるほど辟易してくる。中国の軍事力誇示が爪を隠しているのか、弱さの反動なのかは正直よくわからない。中国語が分かろうが分かるまいが、胡錦涛の演説は空疎だったろうと思う。
YouTubeも一本では収まらず、10分割して収録しているが、やはり成毛さんの言うピンクのミニスカ女性民兵が行進する06がハイライトのようだ(※下記の動画参照)。胡錦涛の演説よりぐんと高いのは、世界の目もミーハーなのだろう。ともかく盧さんの文章である。
初公開ミサイルが5種類――中国建国60年軍事パレード
中国は10月1日、「国慶節」に伴う軍事パレードを行ったが、軍事パレードは、1979年の改革開放の開始以降、まだ3回しか行われていない。
1984年の軍事パレードは、鄧小平が自ら提唱した「軍事の近代化」の成果をチェックするために行われたもので、中国共産党による建国35周年の節目に、改革開放が始まって最初の軍事パレードとして実行されたものであった。当時、中国は初めて戦略ミサイルを公に披露し、世界を震撼させた。
次に中国が軍事パレードを行ったのは25年後の1999年である。当時は江沢民が政権を掌握していた時期で、江国家主席は自分が政権の座に就いて以来10年間の成果を披露しようと企図し 、共産党政権樹立50周年の機会に、中国では有史以来最大規模といわれた軍事パレードを行った。このときも中国は、対地短・中・長距離戦略ミサイル多数を披露し、96年に熊光楷・人民解放軍副総参謀長が豪語した通り、中国にその気さえあればロサンゼルスを壊滅状態にすることができることを海外の人々に印象づけようとしたのである。
そして今年、中国当局は建国60周年の機に軍事パレードを行ったのだが、いかなるミサイルが披露の対象になるのか、外部関係者の注目の的となった。
披露された弾道ミサイルは、すべて初公開された新型主力兵器で、射程距離の異なる2種類の対地型通常ミサイル、さらに地上型巡航ミサイル1種類、核攻撃・通常攻撃兼備型の地対地中距離ミサイル1種類、加えて大陸間戦略核ミサイル1種類も披露された。
この5種類の新型ミサイルが披露されたということは、かつて1種類しかなかった中国の戦略ミサイルがすでに現在では近距離用、中距離用、遠距離用、さらには大陸間弾道用へと、バリエーションが増えつつあることを物語っている。
特に中国当局が今回大陸間戦略核ミサイル を披露したことで、2005年に朱成虎少将が米国に対して行った警告――中国は核兵器により米国本土を攻撃できる、との主張がいよいよ現実味を帯びてきたと見る向きも出ている。
中国が行う軍事パレードは毎回、国際社会で「中国脅威論」を勢いづけるイメージを強めるだけで、中国自身が唱えている「世界と和諧(調和)的な関係を結ぶ」との希望を実現させるのに役立っていない。
1999年以降、は2003年の米英軍イラク侵攻以外に大きな国際戦争は起きていないことを考えると、中国があえてこの時期を選んで軍事パレードを行った事実は、中国自身が宣伝に努めてきた「平和的台頭」 の理念に合致していない。軍事パレードの度に自国開発の新兵器を誇示すれば、アジア太平洋地域の周辺国家の脅威を招くだけである。
国際的に注目された中国の軍事パレードだが、西側のメディアは憂慮の念を抱いて報じていた。
英「ガーディアン」紙は、新たに明らかになった中国の新型兵器が、西側諸国にとって北京五輪の開幕式以来最大の驚きの種となっていることを認めざるを得ないと伝えた。
CNNのニュースサイトは、今回の軍事パレードについて「中世の武威発揚を彷彿とさせる儀式」「社会主義特有の機械的な儀式」であると形容。ブルームバーグは軍事パレードの盛大さを伝える一方、「新疆7・5暴動事件」にも言及している。
中国国内で日々拡大している貧富格差こそ、中国が現在直面している問題であるとして、一部のオーストラリアのメディアは中国モデルの直面する危機だと報じている。
常に中国に対し辛口のメディアは、中国の軍事パレードは西側に対する警告的意味合いを意図しており、独裁国家が軍事的パワーを持つと即座に世界への脅威になった歴史的教訓を強調している。
(現在の中国と)同様に軍拡に熱中し、海洋への拡大志向を鮮明にし、軍人が闊歩していたかつてのナチスドイツは、軍事的な台頭を遂げるや、たちまち世界を戦争に巻き込んだ。
今回の北京軍事パレードを報じた各メディアは、ロバート・ゲーツ米国防長官が最近の中国の大幅な軍事費増大、その不透明性や今回の軍事パレードについて、米軍事当局がこの十数年間に行ったことがなかったほど厳しく批判したことも併せて報じている。
この軍事パレードが改めて証明したことがある。中国がこのところ攻撃性の高い兵器開発に力を注いでいる理由は、アジア太平洋地域における米国の軍事パワーに挑戦するためであることを示すためなのだ。
中国の軍事的台頭は、アジア太平洋地域における米国の戦略的利益を損なうとの強硬な意見が、米国内に一貫して存在していると一部メディアは報じる。オバマ政権誕生後、多くの政策が調整局面に入っているが、米国がその軍事的戦略の中心を欧州からアジアに移すとの方針には変わりはない。
北京軍事パレードは、中国のこれ以上の軍事的拡張を防ぎたい米国防総省(ペンタゴン)にその「動機」を与えたようなものである
中国の一部の国際問題専門家は、こうした西側メディアの見方に反論している。
彼ら専門家は、そうした報道は西側メディアが中国の実情を全く理解していないことの表れであるという。彼らにいわせれば、北京五輪は中国台頭の象徴であり、建国60年軍事パレードは共産党の指導する中国の発展モデルの成功を物語るものなのだ。
彼らはまた、中国はもはやイデオロギーに頼らずとも人心を結集させることが可能になっており、今回の建国60周年記念行事の成功は、中国人の内面にある愛国的熱情が発露されたものなのであると主張している。
さらに、現在の中国は強い経済力のもとで統合されており、こうした状況の中で中国人の国家意識や公民意識の高まりが遺憾なく発揮されているのであるとし、今年の軍事パレードはこのような現代中国の国家意識形成のプロセスを余すところなく外部に伝えたものであると賞賛しつつ、西洋人には全く理解されていないと主張している。
軍事パレードを見た人は、西欧と中国とどちらの見方に与するだろうか。
投稿者 阿部重夫 - 08:00| Permanent link | トラックバック (0)