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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

中国4中全会の裏側の権力闘争――盧四清寄稿より

2009年09月10日 [国際]

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9月15~18日に中国共産党は第17期4中全会を開く。FACTAに定期寄稿している香港の中国人権民主化情報センター主席、盧四清氏から、そこでの最大の注目点である人事の予想を書いてもらったが、締め切りの関係で雑誌に掲載しても間に合わない。そこでその部分を切り離し、このブログで4中全会以前に公表することにした。チャイナ・ウォッチャーのみならず、北京の権力動向に関心のある方はぜひお読みください。

*   *   *   *   *

今度の17期4中全会では、次期18期代表大会(18大)における中国共産党指導部の権力配置をも占えることになりそうだ。

83歳の江沢民・前国家主席は最近頻繁に中国各省を訪れて活動しているが、もちろんその一番の目的は習近平・国家副主席を中央軍事委副主席の地位に据えることである。江沢民の家族はあまりにも多くの腐敗問題を抱えており、例えばある親族が杭州の不動産分野で関与しているとされる巨大な腐敗問題により、江沢民の死後に遺族は粛正される可能性が極めて高い。したがって、江沢民が自分の死後もその粛正から遺族を免れさせるには、習近平を胡錦涛・国家主席の後継者の地位に就かせるしか道がないのである。

しかし習近平が中央軍事委副主席から胡錦涛の後継者の地位に就く可能性はなお極めて低い。というのも中央軍事委主席の任期には「期」[第17「期」など共産党の用語でいう5年に一度のこと]による制限がなく、胡錦涛は2017年まで中央軍事委主席のポジションにとどまることが出来る。胡錦涛は2017年の時点で74歳に過ぎない。

中国憲法が三選を禁じている国家指導者の職務は、

・中華人民共和国主席
・同副主席
・全人代常務委員会委員長
・同副委員長
・国務院総理
・同副総理
・国務委員

しかし「中央軍事委員会」に関してはその規定は当てはまらないのであり、中央軍事委員会主席、副主席、軍事委員が二期を超えて留任してはならないとは規定されていない。つまり、中央軍事委主席は三期、四期と留任できるのだ。

2012年の中共18大で李克強が総書記に任命されれば、李は同時に中央軍事委第一副主席に任命されることも間違いない。さらにこの時点では胡錦涛が引退するまで3~5年の時間が生じることになる。実のところ中国軍において最も複雑、重要で最も理解に時間がかかるのが、空間軍事技術やロケット、弾道ミサイル、警戒機、潜水艇など先端軍事技術の研究開発や生産に関する事項なのだが李克強は2007年に政治局常務委員に就任後、多くの時間を[この分野の]軍事産業視察に費やしてきた。

これに対し、習近平は大部分の時間を「科学的発展観」の学習指導および党理論研究、[中央]党校、香港関連などさほど重要ではない事項に費やしてきた。

新疆の「7.5」暴動事件の際、胡錦涛は同日早朝ローマに飛んでいたにもかかわらず、新疆情勢の緊迫を知るやいなや7月8日には予定を早めて帰国した。胡錦涛のような指導者が国事訪問を取りやめて緊急帰国するような事態は中国でこの30年間初めてのことである。

一方、習近平は7月5日の夜から8日までの間北京に戻らずに遼寧省で、工場や農村での科学的発展観に関する学習視察に費やしていた。このことは習近平が間違いなく胡錦涛の後継者などではないことを示しており、習が目下中国で最大規模の事件に際して処理し、統制し、指揮する権力など持ち合わせていないことを証明している。

習近平の能力や多くの分野での素質は、胡錦涛・李克強に比べてかなり劣る。さらに、今後の中国状勢はますます複雑化し、社会的矛盾もますます先鋭化していくことは間違いないにもかかわらず、習近平は中国最高指導者に求められる、こうした状況を統御していく能力など持ち合わせていない。加えて中国の絶対的大多数の市民たちは「太子党」に対する反感も根強い。

こうした中で習近平を最高指導者に据えていくことは中国を崩壊に招きかねない。こうした予測は多くの人々の共有する常識となっている。だが、江沢民の家族やそのシンパはあまりにも多くの腐敗問題を抱えているにもかかわらず、江が死亡していない現状では江の家族は当然ながら粛正を免れている。ただ江沢民は83歳で多くの深刻な疾病を抱えており、もし死亡すれば、その遺族および彼が在職時に抜擢し、今なお処分を免れている官僚やその関係者も全て粛正される可能性が極めて高い。これがすなわち、江沢民が習近平を中国最高指導者の地位に就けたがっている原因なのである。

中国共産党は4月、浙江省紀律検査委員会書記の王元華、広東省政治協商会議主席の陳昭基を、6月には深圳市長の許宗衡を処分したが、これらの事実の背後には権力闘争が絡んでいる。

王元華、陳昭基は元広東省政法委員会書記であり、許宗衡は江沢民のシンパで、前深圳市共産党委員会書記の黄麗満から直接抜擢された人物である。どうしてこれが権力闘争に絡むのか? 中国共産党第18大政治局常務委員は必ずや、若手の17期政治局委員から選出されるからである。年齢もきわめて重要なファクターである。年齢順に幹部を配した下表から見れば、許宗衡、王元華、陳昭基の事案から、2012年の第18大の政局を占うことが出来るのだ。

この案件から権力闘争に絡んでくる人物には胡錦涛、温家宝、李克強、習近平、汪洋、兪正声、王楽泉、薄熙来、劉延東、張徳江、張高麗、王岐山、李長春、周永康がいる。

李克強が[共産党]総書記となり、汪洋が[国務院]総理になるというのが胡錦涛の中心的な構想である。一方、最近の江西、湖北、新疆、吉林の大暴動から見ても、習近平はその「太子党」としての背景からしても中国第一の指導者となることは全くあり得ない。これもまた現在の共産党指導者が政権を維持する上での中心的な考えとなっており、習近平は江沢民派からの支持以外には、党内で全く支持を得られていない。

李克強、汪洋態勢をどのように胡錦涛の敷いたラインの中で強化していくか、そのためには必ずや反対派をつぶしていくことが必要になるが、江沢民派こそが胡錦涛にとって最も忌まわしい反対派になっている。張徳江、張高麗、李長春は江沢民派に比較的近い人物であり、今回の許宗衡、王元華、陳昭基の事案は間違いなく、張徳江、張高麗という二人の広東、深圳の大物に対する大きな圧力となっていると同時に、広東省の責任者である李長春の18大人事への影響力を間違いなく削ぐものである。

周永康は、江沢民派と胡錦涛派の二つをつなぐ中間に属する人物であり、王元華、陳昭基という二人の元政法[司法]関係者が逮捕された事実は周永康の18大人事上の発言権をも牽制するものである。

18大政治局常務委員は68歳というのが一つのラインになるだろう。2012年18大前の時点で王楽泉は67歳であり、王は共産党政治局委員の中では、周永康に比べると政法分野の経験があるのだが、現在の政治局委員の中で政法委員会書記に任命される可能性の高い兪正声、薄熙来は実はこの分野の経験が浅く、ましてほかの人物はなおさらそうである。

2012年時点で66歳になる劉延東が全国政治協商会議に任命されるかどうかはまだわからないが、しかし可能性は高い。というのも彼女は「団派」の中での人間関係もよく、能力も極めて高い人物である。加えて党内では女性を政治局常務委員に任命すべきだとの声も日増しに高まっている。薄熙来の目標はもちろん、全人代常務委員長である。彼は兪正声よりも4歳若い。

中国当局は現在、「国慶節60周年記念式典」および閲兵式の準備を進めており、現在安全保安上での緊張局面が続いている。北京の警察当局は全市各社区で80万人のボランティアを動員して安全確保に努めている。現在北京全市の各社区、中心部公園地区、公共施設、胡同[北京独特の路地]、旧市街地、流動人口居住区、農村との境界地点では、ボランティアが24時間態勢で巡邏を行っている。

7月31日に政治局委員で、中央軍事委副主席の郭伯雄が自ら新疆の部隊に治安維持活動のチェック・指導に赴き、この新疆の部隊に対し地方政府がいかなる形式の暴力活動を撲滅する場合にも積極的に支援を行うよう求めた。伝えられるところでは、総参謀部、蘭州軍区、武警部隊の幹部が同行した。

これより前の中国国内報道によると、郭伯雄はもし国連により権限が与えられた場合、人民解放軍はウイグル武装勢力撲滅のために中央アジア諸国に進駐することを検討中であると明らかにした。ここで注目すべきは、7月25日にもう一人の中央軍事委副主席、徐才厚が新疆部隊の視察を行ったばかりであったということだ。

ほぼ同時に新疆に到着した郭伯雄、徐才厚は8月2日に新疆で「ウイグル撲滅」を目指す一網打尽式の作戦指揮を開始させた。この作戦は、新疆に駐留する野戦軍および武警、特殊警察20万人を動員し、「10月1日」以前に南部新疆のウイグル族居住地域に対し鉄壁の包囲網を作り一網打尽式の軍事行動を仕掛けることにより、南部新疆地区に居残った「ウイグル独立」武装勢力を粛正することを目指すもので、8月2-6日の5日間で少なくとも500人のウイグル族が逮捕された。

中国民航局の要求に応じて、現在多くの空港では、「空港安全防止警戒レベル3措置」を実施し、昨年の「オリンピック基準」を復活、旅客と貨物に対し、荷物の開封検査率、人身チェック率をも強化した。

また北京の閲兵部隊による突然の発砲に備えて、国慶節で閲兵が使用する銃には指紋認証を使用、指紋での認証を経なければ銃を操作できないシステムを導入した。このシステムは、遠隔コンピュータによりいかなる人物がいかなる時に銃を操作したかがたちどころに分かる新型のシステムであり今年の北京での閲兵式で初めて導入される。このシステムには伝統的な指紋画像技術ではなく最新のサーモセンサーが使われており、環境による影響を受けない上に容易に解読されないという優位性を持っている。

中国の異様とも言える建国60周年式典の予行演習と厳重警戒は、単なるテロ警戒ではないと言える。

投稿者 阿部重夫 - 09:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 編集長 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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