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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

8月号の編集後記

2009年07月19日 [編集後記]

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FACTA最新号(2009年8月号、7月20日発行)の編集後記を掲載します。フリー・コンテンツの公開は27日からです。

*   *   *   *   *

日が沈む刹那、山脈の万年雪が紺碧の空に金冠のように輝いた。毎年7月になると思いだす。中国側の山麓でなく、裏のカザフスタン側からふり仰いだ。首都のホテルでは、中央アジア視察に訪れていた小渕恵三自民党外交委員長、その通訳の米原万里さん、筑波大学の秋野豊助教授(気がつけばみな故人)らの一行と一緒になった。香港が中国に返還された1997年のことである。

▼旧知の小渕氏には「何しにカザフまで?」と聞かれた。「香港返還時の中国を背中から見る取材。次は新疆ウイグル自治区の出口イリを、中国がウイグル人に返還する番かもしれません」と答えた。天山山脈の東西一帯はかつて東トルキスタンと呼ばれ、突厥(チュルク)族が西遷した地で、習俗も住民も漢族の地でないことは現地を見れば明らか。中国は背中では攻守が逆になる、と。

▼ヘソ曲がりの発想かもしれなかったが、20代でシベリア鉄道から中央アジアまで旅した小渕氏はにやりと笑って理解した。そして予想どおり返還記念式典当日、ウイグル族の騒擾を恐れて、中国はイリの国境検問所を閉鎖した。それから12年、天安門事件以来最悪の暴動が新疆の首府ウルムチで勃発した。急遽帰国した胡錦涛主席の「徹底摘発」方針を聞くと、西方ではいまだに「漢帝国」の侵略が続いていると納得できる。

▼日本書紀が下敷きにした前漢の百科全書に『循(したが)いて一隅のむねを守るにあらざる」多様性を包摂しようと道家らが編纂した。中国には神話がないが、太古、共工との争いで天の柱が折れ、大陸が傾いて西が高く東が低くなったとの説話――儒教が滅ぼした神話の断片が『淮南子』にある。共工と顓頊は、今の漢族と少数民族の衝突にひとしい。武帝の儒教帝国に逆らった劉安は謀反を咎められて自決した。

投稿者 阿部重夫 - 12:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 編集長 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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