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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

初の麻生・オバマ日米首脳会談

2009年02月26日

2月23日(月)のTBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」に3週間ぶりに出演して、日米首脳会談の解説をしました。その大筋をここに採録しますが、会談前の放送でしたので未来形で語ったのですが、24日午前(日本時間では25日未明)に会談が終わって麻生首相が帰国した後ですので、修正を加えて会談後の報道なども盛り込みました。

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麻生首相は、24日午前(日本時間では25日未明)にオバマ大統領と初会談を行った。オバマ大統領が就任以来、外国の首脳とホワイトハウスで会うのはこれが初めてで、支持率低迷の麻生首相にとっては久々に晴れの舞台となった。

クリントン政権時代には「中国重視」のジャパン・パッシング(日本素通り)に、日本はいたくプライドを傷つけられた。ブッシュ政権時代になってからは、小泉首相とブッシュ大統領の蜜月が続いたが、安倍首相の時は靖国神社の遊就館で東京裁判否定の陳列があったことで米国の機嫌を損ね、関係がギクシャクしたままだった。さらに、福田首相のアジア重視で、日米同盟の空洞化が言われるようになった。

これに対して、麻生首相はスタンフォード大学への留学経験もあり、もともと祖父の吉田茂譲りの対米関係重視派なだけに、首脳会談の早期実現は、政権のメンツと意地がかかっていた。ところが、オバマ大統領就任後の電話首脳会談では十数番目。4月2日開催の第2回金融サミットで「初顔合わせというのはまずい」と外務省幹部も心配していただけに、24日の一番乗りはまさに起死回生、政権浮揚のチャンスと捉えていた。中川昭一・財務金融担当大臣が、ローマで開かれたG7でのしどろもどろ会見で世界に大恥をさらして辞任した直後だけに、自ら日米同盟の絆を強めるとともに、オバマ人気にあやかりたいところもあっただろう。

しかし、初めての会談は、共同声明も昼食会もないものとなった。麻生首相は、1時間20分の会談後、「中身の濃い内容だった」と満足げだったが、日米同盟の絆の強化から基軸通貨ドルの維持の確認、クリーンエネルギーまでとテーマが総花的で、やや抽象的な印象だ。「ジャパンファースト」の演出に、中身が準備不足になってしまったのではないか。

さらに、オバマ大統領が会談後に議会で施政方針演説を行っており、その一言一句に拍手が上がった演説のほうを目立たせて取り上げた日本の新聞も多く、米国のメディアでも埋没した感がある。

会談では、オバマ大統領が冒頭に「グレート・パートナー」と日本を持ち上げたが、その裏にはしたたかな計算があることを忘れてはならない。一番乗りと優遇したからには、当然高い代償を求めてくるだろう。

まず考えられるのが、ブッシュ失政の尻ぬぐいとしてのアフガニスタン戦況の立て直しだ。イラクは撤退を公約しているが、アフガニスタンには1万7000人の増派を決めた。つまり、それだけタリバンに手こずり、駐留軍とカルザイ政権は点と線しか支配できていないのだ。会談では、日本がアフガン・パキスタン問題担当大使を任命、ホルブルック特別代表と対アフガン戦略の包括的調整をすることになった。しかし、自衛隊のアフガニスタン派遣などには踏み込んでいない。インド洋上の自衛隊海上補給は昨年12月に1年延長されたが、9月までに総選挙の洗礼を受ける麻生首相としては、空手形を切れないからだ。もし、日本が政権交代すれば、民主党政権にとってもアフガニスタンが踏み絵になる。直前にヒラリー・クリントン国務長官が来日して、小沢民主党代表と会ったが、米国側にはそこらの感触を探る狙いもあったのだろう。

クリントン長官は会談の下地ならしに日本や中国、韓国を訪問し、胡錦涛・国家主席とも会談しているが、これはオバマ外交が日米同盟と中国重視のバランスをとっていくということを表しているかに見える。クリントン長官は軍事一辺倒から脱する「スマートパワー」を唱えているが、注目すべきは、21日の胡錦涛会談後の会見で外貨準備高で世界一の中国が、今後も米国の国債を購入し続けるよう強い期待感を表明したことだ。やはり、オバマ政権の現下の課題は、金融から経済全般に及んだ危機対応で、中国にドル資産買い支えを要請したということは、同盟国日本に対してもドル防衛に協力するよう、大統領が暗に要請したと思える。基軸通貨ドルの維持や、日中への内需拡大要請はその文脈にある。

しかし、金融の傷は比較的浅いとはいえ、日本も10~12月に実質成長率が年率換算で12.7%も低下する異常事態。自国の経済危機に手いっぱいで米国支援に回せる財源があるはずもない。米国もいくら公的資金を突っ込んでも「穴のあいたバケツ」。大手銀行国有化のうわさで、シティグループの株価は1ドル台のうえ、ビッグ3の再建計画にしても、4月以降の生き残りは楽観できない。日米首脳会談もオバマ大統領の施政方針も、株式市場では反応なし。市場の認識は、オバマのカリスマだけでは変わらないほど厳しい。

ただ、悲観的な話ばかりでもない。日米はクリーンエネルギーや省エネの協力を具体化させることになったが、麻生首相がそこで「高速鉄道をもう少し考えたほうがいい。米国の自動車文化を変えることにもなる」と発言している。これは日本の新幹線輸出でオバマ大統領の「緑のニューディール」計画に協力するというアイデアで、ちょっと面白い。

オバマ大統領は、石油依存を改めて、環境重視の産業振興で300万人の雇用をつくり、縮小する自動車産業からの離職者の受け皿にすると言っている。この壮大な「緑のニューディール」に日本が協力するという手だ。開業以来の無事故記録を誇る日本の新幹線は、システムの優秀は証明済み。欧州高速鉄道より軽く、建設も安価で保守も容易だ。CO2排出量で言えば、飛行機と比べて10分の1ほど。連邦政府が州を口説いて高速鉄道網整備に乗り出せば、公共投資にもなるし、日米ともに雇用を創出できるだろう。

支持率がひとケタになる恐れもある麻生首相だけに、それくらいの大風呂敷を広げたい気持ちだろう。だが、それで空気が一変したかとなると難しい。日本の新聞の論調は、日米関係の今後という外交論や経済関係論よりも、会談が首相の追い風にならなかったという政局論が大半だった。

投稿者 阿部重夫 - 18:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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