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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

山崎潤一郎「ケータイ料金は半額になる!」のススメ

2008年11月06日 [書評]

燈台もと暗し、とはよく言ったものである。

実は今夏、赤坂でタクシーを降りた途端、携帯を置き忘れたのに気づいた。あわててタクシーを追いかけたが、すーっと車道に出て、車の列に消えていった。

しまったと思ったが、幸い、タクシーの領収書が手元にある。さっそく公衆電話を探した。携帯を置き忘れたとタクシー会社に通報し、運転手に無線連絡で確保してもらおうと思ったのだ。

運悪く公衆電話は外国人が占領していて長電話。じりじりしたあげく、やっと連絡がついたときは後の祭り。後の客に拾われたのか、後部席にはないという。

泣く泣く代替機種を買った。そのとき言われたのは、料金プランが「お客様の使用形態に合っていない」ということだった。商売柄、使用頻度は多いが、プランは契約当初からほったらかし。

半信半疑で変えてみて驚いた。翌月の請求書が半分に下がったのだ。あれだけ携帯料金の高止まりを批判する記事を自分の雑誌に載せていながら、何たる怠慢! ということは、これまでむざむざ倍の料金を払ってきたのだ。おお、切歯扼腕である。

というわけで、山崎潤一郎さんの新著「ケータイ料金は半額になる!」(講談社、1300円+税)の紹介を、このブログで敢行することにしました。

私のケータイ料金が半額になったのは、これまで理解できなかった最近の複雑な料金プランを適用したためだが、本書はキャリア各社の料金プランの啓蒙書ではない。実質値下げを進めてきた現行料金体系でも、朝三暮四の手品に似てまだ高いことを指摘し、適切な料金とは何かを問題提起している。

一言で言えば、基地局網からコンテンツまでの一貫サービスを提供する「垂直統合モデル」が、必然的にもたらすガラパゴス化と競争条件の固定化が、料金を高止まりさせているというのだ。本誌FACTAでは、そのアングルから携帯業界の宿痾を何度も記事にしたが、本書もそういった問題意識を共有している。

だから、経済紙などが喧伝する携帯ビジネスの「官製不況」論には与しない。総務省のモバイルビジネス研究会が、携帯ビジネスの成熟化からの脱出口として提示した「水平分業モデル」により、販売奨励金漬けからの離脱を余儀なくされた携帯業界が、販売台数の急減に見舞われているのは事実だが、それを総務省のせいにするのはお門違いである。

「ユーザー無視」の高収益が減ったと、自らのエゴをお上に責任転嫁するようなものだ。携帯の「官製不況」論を吹聴する記者は、一皮むけば携帯大手の代弁者にすぎない。

携帯ビジネスはすでに行き詰まっている。普及台数が1億台を超え、早晩需要が頭打ちになることは見えていたし、新しいサービスもコンテンツも生み出せないのに、新製品の回転率を速めるだけのモデルでは、もはや需要が喚起できなくなっていた。

それを理屈でなく、ドコモ対日本通信の「接続」戦争など、具体的な紛争を例にあげてジャーナリスティックに解き明かしたのが本書である。一見わかりにくいMVNO(仮想移動体通信事業者)なども、「ふるさとケータイ」という事例を通じて具体化してみせている。

本書は携帯ビジネスの明日を占ううえでも、いいガイドになる。ユーザーのライフログ(コンテンツ視聴履歴)の独占をキャリアに許していいかという問題と、ライフログの売買によって個人情報が無制限に広がる問題が、今後の課題としている点だ。

垂直統合、つまりは寡占に拘泥する日本の携帯大手が、この近未来の衝撃に耐える戦略を持っていないことは、本書からも明らかと思える。

投稿者 阿部重夫 - 09:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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