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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

6月号の編集後記

2008年05月20日 [編集後記]

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FACTA最新号(6月号、5月20日発行)の編集後記を掲載します。フリー・コンテンツの公開は26日からです。

*   *   *   *   *

あれは褒め殺しなのか、殺し褒めなのか。本誌にコラムを寄稿している手嶋龍一氏が、誰かに私を紹介する時、ふと悪戯っぽい目になることがある。北野武(ビートたけし)のバイオレンス映画をもじってこう言うのだ。「この男、凶暴につき」。まさか、とこちらは苦笑するほかない。

▼世の中にはスクープを「凶暴」と感じる人がいる。乱倫破戒を是とする気はないが、スクープは何かを踏み越えるものだ。それを「凶暴」と言われるのならしかたがない。少しだけ手前ミソを言えば、今号などはその典型かもしれない。朝日新聞株しかり、JFEしかり、ムグニエしかり、ドコモしかり……こんなにサービスしていいのかしら、と思うくらい特報記事を詰めこんだ。

▼誰も追えないスクープは、もちろん電通だろう。2年前の本誌創刊から連打して以来の追撃再開だが、「またやろうかな」と同業者に事前に漏らしても、「はあ、ぜひ読ましてもらいます」と危うきに近寄らずの風だった。お手並み拝見か。どの媒体も広告の蛇口を絞られたくないから、この記事は黙殺されるかもしれない。

▼だが、わが手元にはタンダ記者から送られてきたA4で228ページの起訴状がある。ドイツ語なので、サッカーファンの友人に翻読してもらったが、興奮してほとんど2日間寝ずに読んだという。ネタの宝庫だ。これが日本で報じられないのが不思議なほど、とつぶやいたが、電通ですらノーガードだったらしい。

▼FIFAの黒い噂と激しい内部抗争は、欧州の調査報道の主戦場なのだ。日本では断片的に報じられたにとどまる。この奇妙な沈黙を破って99年に翻訳出版されたヤロップの『盗まれたワールドカップ』で、監修者の二宮清純氏が「権力者を追い詰めることは不得手で、もっと言えばその方法すら知らない日本人」の沈黙を難じている。その挑戦、「凶暴」な本誌が引き受けよう。

投稿者 阿部重夫 - 10:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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