阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」
東京電力の筆頭株主は米国ファンド――シンジケートコラム
2008年01月30日 [コラム]
外交ジャーナリストの手嶋龍一氏や、建築評論家の隅研吾氏と、日本海側の10紙に輪番で掲載しているシンジケートコラム「時代を読む」に寄稿しました。仮みだしは、「市場鎖国ニッポン」の株安。
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日経平均株価が535円も急落した1月21日、官邸のブラ下がり取材で「株安は内閣の経済政策に市場が突きつけた不信任ではないか」と聞かれた福田首相はムッとした。
「そんな(ことを言う)専門家いますか。ちょっとお顔を拝見したいですね」
残念ながら、この株安を「福田売り」「官製不況」と見る識者は山といる。
新聞は株安を海外発と書き立てた。アメリカで起きたサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)のバブル破裂の余波だというのだ。
だが、海外発だけでは説明できない。日本はサブプライム禍が軽症にもかかわらず昨年1年間で株価が11.1%も下げたのに、ニューヨークの株価はむしろ上昇していた(08年初からは下落)。下期に外国人投資家が2兆4000億円もの売り越しに転じたのが大きい。
なぜ日本株は嫌われるのか。原因は国内発ではないのか。
1月17日、東京・日比谷のホテルで英系投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド」(TCI)のアジア代表、ジョン・ホー(何志安)氏に会った。電力卸大手の「電源開発」(Jパワー)の筆頭株主(持ち株比率9.9%)だが、昨年6月の増配要求も、同11月の社外取締役選任など7項目要求も、すべて経営陣に拒否されて、16日に「株式を20%まで買い増しする意向」と報じられたばかりだった。
TCIは「アクティビスト」(もの言う株主)の一つで、欧州ではドイツ証券取引所やABNアムロの株主として辣腕をふるっている。その彼らを「黒船襲来」とばかり排除しようとする電源開発の姿勢は、まさに格好の餌食と思えた。
ホー氏は、経済産業省に株買い増しを差し止める権限があることも承知の上だ。外資が電力会社の株を10%以上保有する場合には、外為法により事前届け出しなければならず、安全保障に支障があれば変更や中止を勧告される。
――もしストップがかかったら?
「法的手段に訴えることも考えます」
――訴訟は国内? 国外?
「訴えが可能な裁判所で。つまり、欧州でも。EC(欧州委員会)は我々の主張を支持してくれるでしょう」
もともと電源開発は1952年に設立された特殊法人。株式の3分の2は政府、残る3分の1は電力9社が保有していたが、90年代の「電力自由化」政策で完全民営化が決まり、2004年10月に東証上場を果たした。
ただ、常に電力会社に「半人前」と見られたコンプレックスをはね返すため、電力との持ち合い株をゼロにして“自立”を図った。中垣喜彦社長らはむしろ外国人株主を歓迎した。TCIの登場は想定外だったのだ。
それでも、この強気は、最後は「お上頼み」があるからだろう。現に北畑隆生・経産省事務次官は「公益事業の一つである電気事業に投資したところに、日本の電気事業の性格について正式(ママ)な認識がなかったのではないか」と発言した。飛んで火に入る夏の虫。TCIは電源開発に当事者能力がないと見抜き、電力自由化をなし崩しに骨抜きにしている政府を「お白州」に引きずり出そうとしている。
そこへ株価急落。甘利明大臣はじめ経産省は沈黙した。金融庁などは、“攘夷”政策を打ち出せば、株価が底抜けになると危惧している。
電力業界も固唾を呑んで見守る。東京電力も実質筆頭株主(発行済み株式数の5.5%を保有)が米系ファンドのアライアンス・バーンスタイン(総運用資産額93兆円)になっただけに他人事ではない。電源開発の苦境には「自業自得」と冷ややかだが、「ゼロ回答」一点張りの強硬策には「喧嘩腰では四面楚歌になるばかり」と気を揉む。
英国のTCI代表の妻ジェイミー・クーパー=ホーン氏は、アフリカの子供たちを救う慈善活動に熱心(ファンド名はそれに由来)で、ゴードン・ブラウン首相と会食する予定だという。また、クリントン財団の有力後援者でもある。このコネは怖い。
お白州の日本政府が、洞爺湖サミットや横浜開催のアフリカ開発会議(TICAD)で槍玉にあがれば、「市場鎖国ニッポン」の烙印を押されかねない。その時、福田首相は? ちょっとお顔を拝見したい。
投稿者 阿部重夫 - 09:00| Permanent link | トラックバック (0)

