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過去の自分の文章をちょっと引用させていただこう。日本経済新聞1991年12月21日付朝刊の芸術特集「美の回廊」の文章である。
グレン・グールドは、ひとつの神話だった。演奏をこの目で見、聞いた日本人は数えるほどしかいない。ソニーの大賀典雄社長はそのひとりだ。一九五七年、留学先のベルリンで見た印象を今もありありと覚えている。
「えらくイスを低くして、手長ザルみたいなんだね。ベートーベンの協奏曲三番の長い前奏の間、指揮のカラヤンを尻目に、ピアノの前でタクトを振るように手が舞うんだ。驚いたね。いざ弾き出すと、目のさめるような音で、強烈な欧州デビューだった」(「最後の風景」4 孤独の化身の誘惑)
われながら懐かしい。当時の肩書きは金融部編集委員兼論説委員。それがなぜか「美の回廊」取材チームに投入され、同年12月にカナダのピアニスト、グレン・グールドを取り上げた。大賀氏に思い切って取材を申し込んだのは、ソニー入社前、ベルリン国立芸術大学に留学していたころ、カラヤンとグールドという奇跡の競演を目撃した日本人と聞いたからだ。正直、気安く快く応じてくれたのには驚いた。
投稿者 阿部重夫 - 10:00| Permanent link | トラックバック (0)
1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。
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