阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

  • 2008年1月30日東京電力の筆頭株主は米国ファンド――シンジケートコラム

    外交ジャーナリストの手嶋龍一氏や、建築評論家の隅研吾氏と、日本海側の10紙に輪番で掲載しているシンジケートコラム「時代を読む」に寄稿しました。仮みだしは、「市場鎖国ニッポン」の株安。

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    日経平均株価が535円も急落した1月21日、官邸のブラ下がり取材で「株安は内閣の経済政策に市場が突きつけた不信任ではないか」と聞かれた福田首相はムッとした。

    「そんな(ことを言う)専門家いますか。ちょっとお顔を拝見したいですね」

    残念ながら、この株安を「福田売り」「官製不況」と見る識者は山といる。

  • 2008年1月27日今ごろですがケインズ「一般理論」新訳

    ケインズが1930年代の大不況のまっただなかに書いた「雇用、利子および貨幣の一般理論」。読まれざる名著にこの本も入るのではないかと思う。ただし、日本では。

    私がその邦訳を読んだのは昭和44年(1969年)、つまり安田講堂のあとである。難解だった。何度も放り出そうかと思ったが、途中ではたと気がついた。

    訳が悪い。当時は東洋経済新報社が版権を独占していて、私が買ったのも戦前の昭和16年に塩野谷九十九が翻訳したものの第42刷である。戦後に何度か改訳したのかもしれないが、とにかく文体が古色蒼然だった。タイトル冒頭の「雇用」が昔の「雇傭」だもの、あとはお里が知れる。

  • 2008年1月25日手嶋龍一×阿部重夫「米大統領選を100倍楽しむ」トークイベント4――度はどんなツケを日本は払うか

    トークイベント抄録の最終回です。日米関係、とりわけ外交と通商面でどこにはね返るかを論じました。

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    阿部 今、日米関係は大きな岐路に立たされています。安倍政権時には、テロ特別措置法の延長問題や沖縄の普天間基地移転問題、従軍慰安婦問題などで、日米の不協和音が目立ちました。米大統領の政権交代は今後の日米関係にどう影響しますか?

    手嶋 共和党政権に比べて民主党政権の方が日本に対して辛口であるとか、ヒラリー候補は日本が嫌いだから、クリントン民主党政権が出現すれば、日米関係は暗転するという見立ては、間違いと断じるほどではないにしても、俗論の一種でしょう。そもそも、現在は共和党政権ですが、どこが日本に甘いというのでしょう。いまの日米関係のどこが良好なのでしょう。そんな事実はどこを探しても見当たりません。

  • 2008年1月21日手嶋龍一×阿部重夫「米大統領選を100倍楽しむ」トークイベント3――勝負を決める2つのファクター

    手嶋×阿部「米大統領選挙を100倍楽しむ」の抄録版第3回をお送りします。

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    阿部 さて、ここで一人飛び入りの方をご紹介します。米国シンクタンク、ハドソン研究所の上席研究員の磯村順二郎氏で、東京とワシントンを往復しながら安全保障の研究と助言をされています。

    ヒラリー候補は初の女性大統領を、オバマ候補は初の黒人大統領を目指して接戦を繰り広げていますが、磯村さんは今回の選挙をどうご覧になっていますか。

  • 2008年1月19日2月号の編集後記

    FACTA最新号(2月号、1月20日発行)の編集後記を掲載します。フリー・コンテンツの公開は25日からです。また、新春特別企画として「メディアの深層」というコーナーを設けました。過去のメディア関連記事のまとめコーナーです。こちらもフリー公開なので、ぜひご覧ください。

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  • 2008年1月17日手嶋龍一×阿部重夫「米大統領選を100倍楽しむ」トークイベント2――「アメリカン・トライアスロン」に潜む罠

    手嶋×阿部「米大統領選を100倍楽しむ」の抄録第2回をお送りします(第1回はこちら)。

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    阿部 予備選挙が集中するメガ・チューズデー(今年は2月5日)で、民主・共和両党の本選候補は大勢が決まるというのが一般的な見方ですが、今年は3月のスーパーチューズデーまでもつれる可能性もなしとは言えません(第1回の図参照)。

    手嶋 とりわけ共和党は、各馬横一線といった混戦となっています。過去には夏の党大会まで決着がつかなかったこともありますから、デッドヒートから目を離せません。その共和・民主両党の全国大会は「大統領選の華」といわれます。今回は挑戦者である民主党大会から先に開かれます。党の選挙戦略家たちは、この党大会でどんな政策を打ち出すのか、秘策を練っているのですが、まずは誰が大統領候補になるのか、そして共和党の挑戦相手が誰かが分からなければ、どういった政策を打ち出すのか基軸が定まりません。実は各陣営とも党内の予備選の段階では、あまり明確な政策は打ち出したくない、というのが本音なのです。

  • 2008年1月16日手嶋龍一×阿部重夫「米大統領選を100倍楽しむ」トークイベント1――「先行指標」ニューハンプシャー

    1月15日、FACTAのオフィスの近くにある明治大学紫紺館の会議室で開いた、第3回FACTAフォーラムのトークイベント「アメリカ大統領選挙を100倍楽しむ方法」は、120人の会場が140人の満席になるほど盛況でした。ニューハンプシャーの予備選挙が行われた先週開くことを決めて、きわめてショートノーティスだったにもかかわらず、熱心に耳を傾けていただきました。応募者多数のため抽選となってしまい、応募されながらご招待できなかった方々にはお詫び申し上げますとともに、会場で机のない席を設けざるを得ず、一部の方々に窮屈な思いをさせたことをお詫びいたします。

    正直なところ、太平洋の彼方の大統領選挙に皆さんがどれだけの関心をお持ちかな、と半信半疑でしたが、アメリカ滞在が10年を超す手嶋龍一さんの経験も交えた具体的な選挙戦の裏側をじっくり聴いていただき、その関心の高さには驚きました。実はQ&Aの時間がなくなるほど盛りだくさんで、聞き役に徹した私も、内心ご質問をしたい方々には申し訳ないと思いつつ、ついつい面白いエピソードを無情にカットする気になれませんでした。また、飛び入りの形でワシントンのハドソン研究所で上席研究員を務めておられる磯村順二郎氏にもディベートに加わっていただきました。磯村さんも「濃いディベートでした」と感心していらっしゃいました。

    会場にいらした聴衆の皆様に感謝申しあげますとともに、このイベントにご協力いただいた方々に心よりお礼申し上げます。なお会場でできなかったQ&Aについては、support@facta.co.jpメールで受け付け、ディベートで盛り込みきれなかった部分について、このブログなどでお答えするつもりです。

    さて、当日のトークの抄録を以下、分載しますが、いつものようにチャタムハウス・ルールで行い、オフレコ部分については手嶋氏と協議の上で割愛しました。なお、引用などもご容赦ください。

    では、ニューハンプシャーという特異な「先行指標」選挙区のお話から――。

  • 2008年1月16日ジョン・B・テイラー「テロマネーを封鎖せよ」のススメ

    熊本日日新聞の年初(1月6日付朝刊)の書評欄に寄稿した原稿を再録します。書評したのは

    ジョン・B・テイラー著
    テロマネーを封鎖せよ~米国の国際金融戦略の内幕を描く』(中谷和男訳、日経BP社、2200円+税)

    です。いかんせん、タイトルが問題。スリラーみたいだが、こういう邦題で釣ろうというには、あまりに内容がきちんとした本である。見ようによっては、ドル基軸通貨最後の日のドキュメンタリーなのに、安手のミステリーと見紛うようなタイトルは、この本の編集担当者の良識を疑う。

    もうひとつ、日本経済新聞朝刊1面の正月企画「YEN漂流」は、本書を引用していながら引用の表示がない。いくら出版社が同系列でも仁義にもとると思う。それに、引用のくだりはこの書評でも触れているG3会合だが、その出席者の一人、溝口元財務官(現島根県知事)に取材するのを怠っている。

    なぜ溝口案が拒否されたかの突っ込みがない。格好の素材なのだから、デスク、および筆者は取材のチャンスを逃したようなものである。昔の日経の正月企画は、こんな手抜きはしなかった。

    ついでに申しますと、日経本紙文化欄のグリーンスパン「私の履歴書」も、グリーンスパン自伝「波乱の時代」(これは日本経済新聞出版社)に、就任前のエピソードを付け加えた程度ではないのか。後半が本のダイジェストになるなら、読む価値はないのでは? それとも本の販促なのかしら。

    さて、では、書評を――。

  • 2008年1月 9日やります、手嶋&阿部で緊急トークイベント

    手嶋龍一氏と相談していた緊急トークイベントの開催が決定しました。題して「アメリカ大統領選挙を100倍楽しむ方法」。

    昨日のブログでニーズをサーベイしたところ、思いのほか沢山の方からご連絡をいただき、これは開催せねば、と思った次第。雑誌が届くのを待っていられないという読者の方もいらっしゃるようだし、ひとつライブとネットの力を借りましょう。詳細とお申込み方法はFACTAフォーラムの告知をご覧ください。

    編集期間中につき、取り急ぎ。

  • 2008年1月 9日ヘルダーリンを慕いて

    たまには頭を空っぽにしたい。編集長は四六時中、気苦労している因果な商売だからです。で、このお正月は、DVDと箱根駅伝と三鷹高校のサッカーに明け暮れた。さすがに、これでは痴呆状態だと反省しきりである。

    そこで罪滅ぼし。夜、寝静まってから、フリードリッヒ・ヘルダーリンの詩集(川村二郎訳、岩波文庫版)を、ドイツ語の原文と首っ引きで読んでみた。学生時代、保田與重郎の「清らかな詩人」を読んだが、あの朦朧体の文章に目をくらまされて、ヘルダーリンと聞くと、感激性のロマンチスト像しか浮かばない。與重郎の文章は屈折が多すぎるのだ。

  • 2008年1月 8日やろうかな、手嶋&阿部で緊急トークイベント

    米大統領選挙予備選の第2弾、ニューハンプシャー州で開票が始まった。直前の形勢では、3日のアイオワ州の勢いを引き継いで、オバマが勝ちそうだ。これで雪崩を打つのだろうか。

    雑誌の編集中で気が気でない。締め切りが目前で、どこまで「三歩先が読める」か分からないからだ。いま、盟友、手嶋龍一氏と緊急のトークイベントをやろうかと相談している。

  • 2008年1月 7日「滝山コミューン」のうそ寒さ

    暮れの忘年会のひとつで、日経BP社の柳瀬君、新潮社の横手君、そして杉並区の校長先生になった藤原和博氏と同席する機会があった。そこで奇妙な本とその作者の評判を聞いた。

    滝山コミューン1974」。書いたのは明治学院大学教授、原武史氏である。どこかの書評で70年代団地のうそ寒い集団教育の話を書いた本だということはうっすら知っていたが、タイトルもなんだか不気味そうで読む気になれなかった。ところが、優秀な編集者二人が絶賛しているのだ。

    こちらは話についていけない(総合誌編集者がこれでは勉強不足と言われる)。新宿駅の423列車とか、遠山啓だとか、何のことやらさっぱりである。しかし作者がもともとわが古巣の日経社会部記者だと聞いて、なんだ、後輩かと急に親しみがわいた。新聞社で落ちこぼれてアカデミズムに転じた(すでにサントリー学芸賞などを受賞しているそうだから慶賀に耐えない)ところまでは、私の軌跡に似ている。

  • 2008年1月 4日新年のご挨拶

    皆様、よいお正月でしたか。年末年始のお休みもそろそろ終盤、私は4日金曜は出社しましたが、会社でほとんど年賀状整理に終始しました。

    実は個人的には喪中なのです(妻の母を旧年中に亡くした)が、欠礼のお知らせを出したすぐ後で、編集発行人名の賀状を出すのも変なので、欠礼のほうは思い切って省略させていただきました。その分、賀状もそっけなくなったことをお詫び申し上げます。いやはや、靖国参拝ではないですが、こういうときの公人と私人の使い分けには往生します。

    ちなみに私の名義で出す年賀状は公私あわせて2000枚以上。こうなると、ほとんど人間わざを超えています。新聞記者時代も多いほうでしたが、それでも1000枚以下でした。編集長となると交換する名刺も膨大で、イベントなどをやりますと、どんどん名刺の山が増えてくる。名刺箱では対応できず、今は名刺をスキャンするソフトを使っています。

    さて、最近は年賀状が戻ってくるケースが多くなりました。個人情報管理上から企業の名簿が姿を消したからで、うかうかしているとポストも自宅住所も変わっています。いたずらに郵便配達の手間を煩わせるのは恐縮なのですが、相手先のデータの入手難は深刻で、不便な世の中になりました。

    いただいた賀状でそれを確認して、住所録を整理するのは大事な正月行事。とりわけ、ご自宅の住所は大事な情報で、いちいちご本人に確認するのは大変ですが、賀状だとすんなり更新できるのです。われわれ団塊世代は定年期を迎え、昔の職場に賀状を出してももう届かない。第二の人生の職場もほどなく代わり、最後は自宅で悠々自適となると、今のうちから自宅住所録を完備しておかないと、相手が(こちらも)行方知れずになってしまいます。

    また、私用メールアドレスや携帯電話などが付記されている場合もあり、「あの人は今ごろどうしているやら」と思いたったら善は急げ、すぐ連絡できる便利さがあります。

    年賀状は虚礼だ、と廃止論が出たこともありましたが、そんな思わぬ効用もあるのです。歳末に少なからぬ枚数を書かねばならない人には重労働ですが、データ更新のチャンスだと思えばいい。更新を怠ると、社会保険庁の年金記録のように後で漂流することになりますから。

    とりあえず新年のご挨拶に代えて。