阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」
記者のリテラシー
2007年12月13日 [ジャーナリズム]
日経社会部時代の先輩から電話がかかってきた。悪い予感がしたが、案の定、テレビを見たという。先週末の12月7日(金)、BS11デジタル(日本BS放送)の報道番組「INsideOUT」に出て、しばらく落ち込んでいる。ブログに書かなかったのは、編集作業に入ってとても書けない状態だったからだが、内心は思い出すのが怖かったこともある。
先輩には予防線を張った。「いやあ、見ないで。トチってばかりだから」。
「ま、君は前から滑舌系じゃないからね」と言われた。だろうなあ。
反省点は多々ある。カメラ相手だと目線をどこに向ければいいか分からない。1分のしゃべる分量がつかめない。焦ると言葉が切れ切れになる。せっかく用意してくれたフリップを見せるのを忘れた。ライトがつくと頭真っ白。隣の女子アナにリードされっぱなし。ああ、これで次はどうなることやら。見る人もハラハラだろうなあ。
さて、インタビューした与謝野馨・前官房長官は、石原知事と法人事業税の移譲問題で協議したあと、スタジオに現れた。昨年の大病の名残か、まだ声が枯れていたが、疲れもみせずに消費税に賭ける意気込みを語っていた。
質問の中にmodus vivendi(生きがい)というラテン語を使ったら、よく理解してもらえた。ハイデガーによれば、実存とは「終わりへと向かう」脱自としてのみ可能なものだが、まさにそういう実存として与謝野氏が消費税増税を考えていることがよくわかった。
しかし、党税調や総務会のレベルでは、消費税引き上げは見送りで決着している。与謝野財政改革研究会の「中間とりまとめ」で「霞が関には埋蔵金などない」と上げ潮派や民主党を批判した埋蔵金論争も、財務省が財融特会の繰越利益を取り崩し、国債の返済にあてることを検討し始めたと報じられたことによって、勝負あった、と言わざるをえない。

日経の年末エコノミスト懇親会で、その上げ潮派の中川秀直・元幹事長が記者にまいた「埋蔵金メモ」もスタジオに持っていったのだが、それを振りかざして敗北を認めろ、などと“田原流”に迫る気になれなかった。それでもBS11のインタビューの中では、この問題をメーンに取り上げた。
後で聞いたら、与謝野氏に追っかけ取材の記者が10人ほどスタジオの外に来ていたようで、モニターで番組を見たらしい。与謝野氏がどう答えるか注目していたのは私だけでなかったのは心強いが、翌日の紙面でそれを引用して、読売では小さなコラムになっているのには驚いた。ぶら下がり取材してるなら、直に本人に聞けばいいのに。
そういう記事のひとつをここに引用しよう。ただ、インタビュアーの立場から言わせていただければ、ニュアンスは逆で、与謝野氏は埋蔵金論争の敗北を認めたのだ。
同党の中川秀直・元幹事長が特別会計の資金を「霞が関の埋蔵金」として取り崩すよう主張していることについて、「お金持ちの2世が家の財産を売り払いながら生活しているのと同じ話だ。どこの特別会計を調べても、そんなお金は眠っていない」と批判した。
「仮に埋蔵金があるとしても」という仮定句の形で、特会の繰越利益を取り崩したとしても2年で消えてしまうと言っていた。国の借金ははるかに大きいのだから、やはり消費税上げは必要だというロジックである。明らかに目先より中期に比重を変えていた。
1メートルの距離で聞いたインタビュアーが、そう思って深追いを避けたのだ。どうしてそれが「埋蔵金はない」と自説を曲げなかったように書かれたのか、不思議な気がする。記者の政治家発言に対するリテラシーが著しく落ちているのかもしれない。
番組をご覧になった方はどう思いますか。
投稿者 阿部重夫 - 09:00| Permanent link | トラックバック (0)