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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

対談:萩原雅之ネットレイティングス社長(上)20代はPCを使わない?

2007年06月22日 [モバイル]

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今回は2007年3月号に掲載した「パソコン見放す20代『下流』携帯族」の続編として、記事中で引用した「衝撃的」なデータの調査元であるネットレイディングスの萩原雅之社長との対談を掲載します。

この記事で論じたPCユーザーと携帯ユーザーの「デバイド」問題は、ネットで非常に大きな議論を巻き起こしました。最近、入社してくる新人にその傾向が強いという感想もあれば、PC音痴より携帯音痴のほうがヤバイという意見もあり、ブロゴスフィアでの議論も尽きない。

高機能な携帯電話が優れたプロダクトであることは承知だが、従来のPCユーザーと携帯しか使わないユーザーの間に断層は生じていまいか。携帯の制限された世界では、本来のインターネットが持つ知から知へ繋がるハイパーリンクの恩恵をユーザーは享受しきれていないのではないか。そこに「格差社会」が見え隠れしていないか――。

ネット視聴率調査の第一人者として知られる萩原氏はこの問題をどう見ているのか。率直に語り合った。

*   *   *   *   *

阿部 FACTA3月号の「パソコン見放す20代『下流』携帯族」という記事が、賛否両論の大きな議論を呼びました。ひとつには、「下流」という言葉をメインに据えたことに要因があるでしょう。しかしながら、この記事で提起した問題は今後のPCと携帯市場の方向性にとっては非常に重要なことですし、社会における格差がこういう形で露頭しているのではないかという観点でも、一つの現象として考え得るに足るテーマだと思っています。

この記事でネットレイティングスのデータ(下のグラフA)を使わせていただいたのは、構成比だとは言え、20代が非常に大きく下がっていたことに驚きがあったからです。記事に対する反響が大きかったのも、今の20代にPC離れの傾向があると漠然と感じている人が多かったからだと思います。

萩原 そういった漠然とした感覚が何かのきっかけで一気に表出することはよくありますね。

阿部 一方で、FACTAのデータの見方については、批判的なものも含めて色々な方からご指摘を頂きました。調査した側としては、20代の利用者数は増えているにも関わらず、全体における構成比が大きく下がっていることについてどうご覧になっていますか。

萩原 まず、データの見せ方については、我々もちょっと想定外のところがありました。最近はこちら(下のグラフB)も使っています。実は全く同じデータなんですが、受ける印象が大きく違ってきます。もし、このグラフ(B)で出していたら、これだけ世間の注目は浴びなかったかもしれません。

決して話題性を狙っているわけではありませんが、数字は同じでも引用の趣旨によってグラフの見せ方は当然変えています。シェアの推移を表すときでも、帯グラフを並べるのか折れ線で書くのかは、目的に応じた使い分けが必要だと思っています。

阿部 グラフから受ける印象ではなく、実態として20代の構成比が下がっていることはどう捉えていますか。

萩原 20代の構成比低下と、中高年齢層の構成比上昇は表裏一体の現象です。2000年頃までのネットユーザーは20~30代の技術職やホワイトカラーの男性が中心でした。それが、家庭へのブロードバンドの普及で、それまではネットに無縁だった中高年齢層がどんどん使うようになった。その年代は人口ピラミッドで大きなボリュームを占めていますから、構成比に大きな影響を与えたのだと思いますし、これからどんどんその世代の比率が高まると思っています。どれ位増加するかを予測するのは難しいですが、第一線を退いた世代が沢山の時間を持っている事実はあるわけです。

例えば、家庭からのネット利用を時間ごとの推移で見ると、専業主婦の中年女性(F2)と50歳以上の男性(M3)のトラフィックが非常に似た動きをしていて、朝9時になると跳ね上がって、正午になるとぴったと下がるんです。つまり、朝食の後、さあ何をしようかと、まずはPCの前に座ることがだいぶ一般化しているんじゃないかなと思います。

阿部 日本の人口構成比は逆ピラミッドですから、相対的に若年層が減っていく中で、今までアクセスの主軸だった20代が伸び悩んでいるというのは分かります。ただ、10代や30代に比べると、どうしても低すぎるように見えるわけです。なぜ、若年層の中でも20代だけが低いのでしょうか。

萩原 ご指摘のように、構成比ではなく各年齢層別の家庭でのPC利用率をみた場合、20代があまり増えていないのは事実です。特にここ3、4年はその傾向が強いですね。

これは恐らく、今の20代が家庭やプライベートではPCに依存していないというのが大きな原因だと考えられます。今の20代のホワイトカラーの多くは会社でPCを使いますから、キーボードは当然打てるし、ある程度のリテラシーもあります。しかし、仕事以外の場面ではPCを使う必然性とか、モチベーションが我々PC世代に比べると低いように感じます。それは、いい悪い、できるできないの問題ではなくて、彼らにとっては、それが当たり前なのです。

阿部 PCスキルはあるけど、日常生活では使わない20代が増えているということでしょうか。

萩原 定量的なデータがあるわけではありませんが、20代と話をすると実感することも多いですよ。友人とのコミュニケーションでも時間つぶしでもショッピングでも、我々がオフにPCを使ってやり取りすることの多くはほとんど携帯でできます。プライベートの時間に家でPCの前に座る理由が減ったということでしょう。これは、リテラシーの問題ではなく、たとえPCと携帯を併用していても、オフでは携帯のほうが快適だと感じる人が増えていることの現れかもしれません。

記事で引用して頂いたことに関して言えば、PCを使わない20代を「下流」と言いきってしまうのは一面的ではないでしょうか。このデータが家庭のPCからのアクセスをもとにしていることを前提に、今の20代がどんなふうにPCと携帯を使い分けているのかという視点もあると面白いのではないかと思います。

(1/3:「(中)携帯文化が社会に及ぼす影響」へ

写真:相原理歩

*   *   *   *   *

萩原雅之(はぎはら・まさし)
ネットレイティングス代表取締役社長

1961年宮崎県生まれ。東京大学教育学部教育学科卒。84年に日経リサーチに入社し、日本経済新聞の世論調査などを担当。日本経済新聞ヨーロッパ社への出向、リクルートリサーチを経て、99年にネットレイティングス代表取締役社長に就任。同社のチーフアナリストでもある。オンラインコミュニティ活動として、メンバー3,500人を抱える「Internet Survey Mailing List」を主催。

投稿者 阿部重夫 - 12:30| Permanent link | トラックバック (5)

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* 編集長 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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