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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

インタビュー:チームラボ社長・猪子寿之氏(1)ネット社会が幸福な理由

2007年05月09日 [メディア論]

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連休ぼけしているわけではない。連休後半の5日から編集作業を始めてしまったので、ブログを書く暇がない。で、先月、インタビューしたものをこの間に載せることにした。けっしてつなぎではなく、私がたじたじとなってしまった若き頭脳とのインタビューである。

これで「メディア論」をテーマにしたインタビューは第4シリーズになる。ご登場いただくのは、産経新聞社の双方向型情報サイト「iza(イザ!)」の設計・開発を手がけたチームラボの猪子寿之社長です。

*   *   *   *   *

阿部 まずはじめに、猪子さんがインターネット(以下、ネット)に関わるようになったきっかけをお聞きしたいと思います。

猪子 95年に始まったNHKの「新・電子立国」という番組を見て、ものすごく衝撃を受けたんです。それまで体制側のコントロール下に存在していたメディアを、誰もが自由に持つことができ、自由に情報を発信でき、そこにある全てを享受できるようになるなんて、人類史上初めてのことだと思った。ネットがもたらす情報化社会は、今まで体制と言われていたものをどんどん崩していくだろうと感じたんです。これは世の中が全部変わっちゃうなと。

歴史を振り返ると、大きな環境変化によって、それまでの勝ち組と負け組が一瞬で入れ替わることがたびたび起ってますよね。明治維新で言えば、革命が起きるのに必要だったのは坂本龍馬ではなく、鉄砲の価格下落という環境の変化だったと思います。それまで体制しか持てなかった銃器を、ある時点から下級武士でも買えるようになった。だから倒幕が成功したんです。

どの時代も、革命を起こそうとする人は沢山いるけれど、持っている武器が違い過ぎると上手くいきません。でも、対峙するそれぞれが持つ武器に差がなければ、あとは勢いがある方が強いですからね。情報の世界において、ネットはまさにその武器になると思ったんです。それが95~96年頃ですね。

阿部 ちょうど、Windows95が発売された時期ですね。

猪子 よく色々な方が、Windows95が情報化社会到来の境目だったと言いますが、僕はそれ自体には全然興味がありませんでした。単純に世界が繋がって、自由に情報が交換できることに惹かれたんです。

今まで、体制側のメディアに力があったのは、新聞にしろ放送にしろ、全国に情報をばらまくための巨大な流通網を持っていたからです。それを作るのには莫大な資本が必要ですからね。雑誌を流通させるにしても印刷コードを取らないといけませんし、とにかくお金がかかった。だけど、ネットによって、それら全てを一気に乗り越えられるようになりました。ブログは自宅に引きこもっていてもほぼコストゼロで書けますからね。

阿部 体制側といわれるオールドメディアの側からみると、そういった民主化の流れに脅威を憶える一方で、誰もが情報発信できることと、誰もがきちんと取材をできることは別ではないか、という思いも抱いているわけです。

また、ジャーナリズムの裏返しには常にスキャンダリズムが存在し、ある対象の裏側にあるものを悪意を持って暴くといったこともあります。オールドメディアの既得権を守れというつもりは全くありませんが、そういったことを万人が簡単に行える社会は、果たして誰にとってもいいものでしょうか。ネット言論の攻撃的な面を考えると、全てが明るい話ではない気もします。

猪子 120%バラ色ですね。残念ながらオールドメディアよりも、2chのほうが信用ができます。情報を信頼するかどうかは、自分の眼で選べば良いわけですから。

はっきり言ってしまえば、そこが根本的に僕らとずれているところなんですよね。全員が情報発信できるからといって、全員が似たようなことを取材して、それぞれのクオリティがどうのという話ではないんです。情報発信したい人も、受信したい人も、興味の範囲はみんなバラバラで、価値観は超多様化しているんです。超多様化した情報の中から、個々が取捨選択するのがネットなんです。

重要なのは、マスコミの経済合理性では成り立たないような小さな情報をネットで発信する人がいて、それを受信して喜ぶ人がいることです。野球に興味のない人にとっては、ハイビジョンTVで巨人の試合中継が見られるよりも、画像がざらざらでも好きな映像を(動画投稿サイトの)Youtubeで見れることのほうが嬉しいですよね。ニッチな情報を求めている人にとってはクオリティなんて二の次なんですよ。今まで手に入る情報がゼロだったわけですから、存在するだけでハッピーなんです。

阿部 情報自体が存在しなかったところに、自然と情報のニーズと発信者が生まれるのはネットの面白さですね。

猪子 もともと人はすごく多様なんです。だけど、産業革命以降、それを表現しにくい時代が続きました。マスプロダクションやマスコミュニケーションが可能になり、時間とコストは大幅に削減できるようになったけれど、多様性は我慢しなければならなくなった。便利になったことは決して悪いことではありませんが、人が持つ多様性は押さえられてきました。だけど、ネットは人間が多様性を表現することを再び可能にしたんです。僕はそれがすごくハッピーなことだと思うんです。

(1/4:つづく

写真:大槻純一

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猪子寿之(いのこ・としゆき)
チームラボ株式会社 代表取締役社長

1977年徳島市出身。2001年東京大学工学部応用物理計数工学科卒。04年東京大学大学院学際情報学環中退。大学卒業時に、チームラボ創業。

Web2.0型のサイト構築を企業に提供している他、コンテンツマッチング、レコメンデーションエンジンや視覚化検索エンジン、純国産検索エンジンのサグールなど、先端テクノロジーの開発も行う。主な実績に、レッツエンジョイ東京イザ!など。アートやクリエイティブの活動も行っており、3次元水墨動画絵巻物語・花紅をスヌーピーライフデザイン展に出展。株式会社産経デジタル 取締役、フジテレビラボLLC CTO、株式会社NKB 取締役。

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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