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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

カザフの「川の流れるように」

2007年03月03日

高校時代の同期生がカザフスタンにいると聞いて、へえと思った。私が取材で行ったのは10年前の7月。アルマトイのホテルで、自民党訪ロ団長としてモスクワから飛んできた故小渕恵三氏らの一行と出会った。最上階のラウンジで天山山脈の冠雪に輝く黄金の夕日をみつめたことが懐かしい。彼に同行した通訳でのちに名エッセイストになった米原万里さんも、あのころは元気だった。

たまたま胸のボタンがひとつ外れていて、それを小渕氏に見つかり、「米原さん、みかけよりグラマーだからな」とからかわれて、頬を染めた彼女の顔が思い浮かぶ。何かみごとな台詞で打ち返したが、その言葉をもう思い出せない。

が、治安は悪かった。へたに強盗に捕まると、追いかけてこないよう、鼻をそがれると聞いて、ぶらぶら歩きもできなかった。が、そこへいま、おなじ高校にいた日本人が飛び込んだというのだから、拍手を送りたい。

彼のメールによれば、Stepnogorsk(いかにも草原の町という名)という人口4万人の小都市で仕事をしているとのこと。ソ連時代には炭疽菌と核燃料の濃縮をやっていたので地図には存在しない秘密都市だそうです。カザフのセミパラチンスクには旧ソ連時代、核実験場もあった。放射能漏れでガイガーカウンターが鳴りっぱなしの地域と聞いて、10年前は行くのを断念した。セミパラチンスクにはかつてシベリアに流刑されたドストエフスキーがいたこともあり、その地の博物館に行ってみたかったのだけれど。

そうした大量破壊兵器のデータを狙ってか、数カ月前には潜入したアル・カイダのメンバーが逮捕されたそうです。炭疽菌では数年前にアメリカで騒ぎがありましたが、今のアメリカの炭疽菌の最高権威者はこのステップノゴルスクの出身だそうで、ソ連崩壊後にアメリカにわたって大金持ちになったとか。

このステップノゴルスクの町はロシア人とカザフ人が半々だけど、音楽は日本とそっくりだという。

演歌に近い音律です。カザフ語はトルコ語の祖先なのだけど、文法は日本語と似ている。動詞は最後に来る。インターネットで調べると縄文人の遺伝子はここカザフの地と同じそうです。私らのいくばくかはカザフに祖先を持つのかも。ちなみに僕は喋らなければ日本人とは思われません。カザフ人、アゼルバイジャン人、タジキスタン人、最後にはロシア人と言われます。それほど外見は似ています。

彼はカザフのCDをプレゼントされたお返しに、日本のCDを贈ったどいう。不評はMr.Chirdlenとモーニング娘。逆に好評は石原裕次郎、美空ひばりや東儀などだったそうです。グルジアレストランで美空ひばりの『川の流れるように』がかけられた時、食事中のロシア人とカザフ人が全て席を立ち、メロディーに乗ってダンスを始めたという。ああ、心温まるいい光景だ。

音楽と言うのは、人と人が共有できる空間を持つための手段ですよね。言葉が見つからないのだけど、多分それは理屈ではなく恋愛感情なのでしょう。

そうかもしれない。お雛様の日に贈るささやかなエピソードである。

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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