阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」
インタビュー:池田信夫氏(4)時代錯誤のNGN
2006年12月12日 [メディア論]
池田信夫氏のインタビューの第4回を掲載します。今回は「次世代ネットワーキング」がテーマ。この12月からNTTの実験サービスが始まりますが、まだ世間では9月から頻発するひかり電話の不通(輻輳)と裏腹の問題であることが理解されていない。電話交換機にあたる部分をすべてSIPサーバと呼ばれるコンピューターに切り替えようとしているのですが、池田氏はそこに隠された矛盾を突いています。
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阿部 現時点での限界はあるにしても、全体的にはIPの方向へシフトしています。当然、そこではネットワーク・インフラが重要になってきますが、ここに大きな問題がある。
11月号で、NTTで起きたIP電話の不通問題を調べたときに、ネットワークのルーターにあたるNEC製のSIPサーバに原因があったことが分かりました。専門家に言わせると、NGN(次世代ネットワーク)の中心的なシステムを担えるのはシスコシステムズしかないという。実は子会社のNTTドコモは内部をIP化するのに、シスコシステムズを使い始めています。非常に残念ですが、国産では駄目だと。
NGNを取材していて感じたのは、NTTには電話交換機(PBX)技術の意識が残っていて、IPに発想がついていってないのではないか、ということです。旧態依然たる電話交換機意識を持ったままNGNができるのかと不安になりました。
池田 NGNの問題は、NTTの考えている全体像がよく見えないことにあります。最初にNGNの話が出てきたときに、SIPでNGNを管理するという発想にみんな驚いた。普通、SIPといえばIP電話の通信制御プロトコルとして用いられるものですから、それで映像から何から全部管理するというのには正直驚きました(※編集部注:この段落の記述に一部誤りがありましたので、該当部分を削除しました。お詫び申し上げます)。
これは非常に電話屋的な発想なんですね。常に1対1でセッションを張って、回線交換に似たセンスで通信させたいんです。NTTは品質保証を重視しますから、インターネットのように届くか届かないかわからないというのは大嫌いで、きちっとセッションを張って届くことを確認してから送ろうと思うんでしょうね。それで、その対価として一定の高い値段をいただきましょうとなる。
もちろん、そういう品質保証への需要はありますし、大切なことだとは思います。しかし、企業などは別にして、多くの人は今のいいかげんなインターネットでも問題なくやっているわけです。
NTTがNGNでやろうとしているのは、ハガキを全部(確実に届く)書留にしましょうというようなものです。その書留がいまのハガキよりも安くなればユーザは喜びますが、どうなるんでしょうか。NGNの計画をみると、技術的なことばかり書いてあって、肝心の料金が示されていない。
光ファイバーになって大きなコンテンツが流れるようになれば、ユーザがインフラにお金を沢山払ってくれると思っているのかもしれませんが、残念ながらいまの技術革新はその方向へは向かっていないと思います。
ムーアの法則では18か月で半導体のコストが2分の1になるとされていますが、1960年頃に集積回路が発明されてから約40年を計算すると、価格はおよそ1億分の1になっている。これは、実際に実証研究でも証明されています。つまり1回の計算にかかるコストが40年間で1億分の1になったのです。コンピューターの世界ではそれだけ技術革新が早い。
ところが通信料金は、この40年で100分の1にもなっていない。物理的なコストを考えても、もっと下がる余地が大きいはずです。
通信事業者の方には気の毒ですが、いまの通信料金というのは明らかに本来のコストよりも高いんです。Skypeを見ると分かるように、インターネット上の音声通話のデータ量など微々たるものなんです。その何倍もパケットを使う映像はタダで見ているのに、音声通話に毎月何千円も払っている。いままでの不当に高い料金に慣れてしまって、ユーザは騙されていることに気づいていない。
こんなぼったくりサービスが終わるのは時間の問題ですから、その前に新しいビジネスを考える必要がある。それなのに、NGNは「高品質・高価格」のサービスを提供しようというISDNの発想に似ている。ビジネスとしての採算性を考えないで、技術的な検証だけをやるのは危険です。
(4/5:つづく)
投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (1)

