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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

気晴らし

2006年12月04日

週末は気晴らしに、公開早々の「007」を観に行った。笑うなかれ、寅さん映画や鬼平や水戸黄門と同じである。毎度おなじみのストーリー(不死身の主人公のアクションと誘惑シーン)だが、もう陳腐とは感じない。出来の良し悪しに一喜一憂しないぶんだけ、映画館の暗闇に心を休めていいられる。

そういう見方をするようになったのは、ロンドン駐在のときに007を見てからだ。ハリウッドの向こうを張って英国の意地を見せる映画のせいか、観客席のロンドンっ子はいちいち拍手して、どっと沸く。ボンドと一体になってハラハラドキドキ。あたかも高倉健の任侠映画に「健さん、後ろが危ない!」と声をかけていた60年代の三流館のように。

ああ、こういう楽しみかたもあるんだ、と思った。

ボンド役がピアース・ブロズナンから交代した新作「カジノ・ロワイヤル」の批評をする必要はないだろう。よき家庭人みたいで、あまり不良っぽくなかった前任者のイメージを払拭するためか、今回のボンドは孤独な殺し屋の要素を強調していると思えた。007は派手なアクションの割に血の流れることの少ない上品さがウリだが、今回はリアリズムを追求して、残虐の一歩手前まで行こうとしている。

主演のクレイグは瞳が青く、ちょっと「禿げていないプーチン」を思わせる。上司Mは引き続きジュディ・デンチ。しかし初期007で常連だった「C」(俳優が死亡)や、本部でボンドに思いを寄せる「ミス・マニーペニー」が、もう登場しないのが寂しい。寅さんで和尚役の笠智衆が消えたのと同じである。

ふたつ、気づいたことがあった。国産品愛用精神からか、ボンドが毎度乗りこなす英国のスポーツカー、アストンマーチンはこれまで、BMWなど他の外国車が派手にぶっ壊されるのにほぼ無事だった。今回はリアリズムを優先してか、アストン・マーチンも無残に4転5転させられて壊される。

もうひとつは、今回も商魂たくましいことだ。納期の遅れで窮地に追い詰められているエアバスの総二階建てジャンボ機A380とおぼしき旅客機が出てくるが、やはりスポンサーになっているのだろうか。

もっと露骨なのはオメガである。ヒロインに「ロレックスの腕時計?」と聞かれて「いや、オメガだ」と応じる場面が出てくる。この台詞を台本に入れさせるため、オメガはいったいいくら払ったのだろう。つい、そんなことを考えた。

さて、気晴らしはここまで。本日から編集期間入りで、そのために英気を養ったようなものだ。その間、ブログを休載するのも申し訳ないので、インタビューの連載をしようと思います。よろしく。

投稿者 阿部重夫 - 09:46| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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