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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

ナベツネ「客演」のこわさ

2006年12月01日

この季節は苦手だ。ロンドンの冬至までの暗い12月を思い出してしまう。日中が午前9時から午後4時半くらいまでしかなかった。たちまち日が暮れてしまう。

東京も街の飾りつけがクリスマスになってきた。なんだか働いているのがむなしくなる。しかし、新聞記者の時代は12月は予算の季節で休めた記憶がないし、雑誌に移ってからも年末の締め切り繰上げで四苦八苦した記憶しかない。せわしない暮れから逃れられるのはいつのことなのか。

さて、ナベツネこと、読売新聞グループ本社社長・主筆の渡邉恒雄氏が、日経新聞の「私の履歴書」に登場する。これはFACTA最新号で記事を載せた(たぶん、あの時点ではささやかなスクープだった)。その記事の予告通りに、きょう(12月1日)から掲載が始まる。

業界人には評判である。公称日本最大の新聞のトップが他紙の看板企画に自叙伝を掲載するというのは異例のことだからだ。

だが、なるほどと思うふしがあった。一度、渡邉氏にインタビューしたことがあって、主筆室には山のように本が積んであった。なかなかの勉強家らしい。もっと感心したのは、株価をリアルタイムで知ることができるロイター・モニターの端末が置いてあったことだ。金融機関ならいざ知らず、こういう感覚は新聞経営者では珍しい。

彼が目を光らせているのは政治やプロ野球だけではない。株価や経済にも敏感なのだ。そういう一面をかいま見ると、あえて日経に登場するのも納得できる。日経の杉田亮毅社長が「私の履歴書」掲載50年の目玉に上手に口説いたそうだが、受けたナベツネは新聞の購読層の違いを意識して、あえて自ら“敵地”に乗り込んで、ヨミウリを売り込もうというのではないか。

読売は過去にも、読者層の重なる産経や東京(中日)を猛然と食おうとしたことがある。ナベツネが朝日の「論座」で若宮論説主幹と対談したのも、朝日の読者に食い込む下心があったのではないか。とすると「私の履歴書」登場も、日経の読者への食い込み策の一環と見える。

若者の新聞離れで新聞業界の淘汰が進むのを見越し、食い合いが始まろうとしている。そこに一歩先んじようと、ナベツネが自分をタレント化する根性は、なかなか手ごわい。

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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