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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

ひかり電話の最終結論1

2006年11月22日 [NTT]

FACTAは執拗なくらいNTT東西で起きた「ひかり電話」不通問題を取材した。雑誌では連打を避けたが、一応の結論をここで書いておきたい。これは専門家に十分取材して書かれたもので、この原型はNTT側にも提示してある。恐らく現在では、もっともこの輻輳問題のキーポイントを突いていると思う。NTTの方々、とりわけNGNを進める持ち株会社首脳陣は、少し耳に痛いだろうが、政治論でなく技術論として聞いてほしい。

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9月と10月にNTT東日本とNTT西日本で起きた大規模な「ひかり電話」不通は、両社の公表よりはるかに根の深い問題をはらんでいることが明らかになってきた。

「ひかり電話」サービスは、従来のPBX(電話交換機)ベースの交換網をIP(インターネット・プロトコル)ベースのもの(コールマネージャーまたはSIPサーバー、NTT用語で呼制御サーバー)に置き換えることにより、音声電話のみならず、様々なサービスを可能にしようとする取り組みであり、政府としても積極的に世界をリードしてゆく必要からも推進してきている。

RFCでは未定義部分

今回の事故の原因は、インターネット技術を標準化するIETF(Internet Engineering Task Force)で定義されている標準化が終了しているSIP(Session Initiation Protocol, Original RFC2976等)の一連のRFC(Request for Comment、IETFの発行する文書)では未定義の、課金や複数のSIPサーバー間の情報交換の手順に関する部分に独自の要件定義と技術開発が必要であることに起因している。

特に、今回のトラブルではたった1秒間に数百件程の外部網への接続経路の情報のやり取り(プログラムミスによるものと発表されている)で発生した輻輳(通信渋滞)が、80万もの加入者線全体の通信障害に及んだ――という報告からも、分散化、多重化に関する論理的な通信システム設計に問題があったこと、運用に用いられたNEC製のSIPサーバーのプログラムに問題があったこと、部分改変に関する要件定義の未熟さ、さらにSIPサーバーの設定や運用方法に関する手順の検討など見直すべき点は多いことが推測される。

NGNの脆弱性を露呈

さらにこの現象は、SIPをベースとして設計されている次世代ネットワーク(NGN)の脆弱性も露呈した。すなわち、不正トラフィックを宅側からSIPサーバーに対して浴びせられた場合、基本的情報通信インフラである電話を容易に不通にできることである。

物理的通信路はIPを用いて幾らでも大容量化、多重化が容易だが、従来のインターネットにおいてもDNS(ドメインネームサーバー)が機能しないと名前解決ができず、結果通信不可能になったのと同様、電話番号と送付先のIPアドレスの参照が出来なくなるため、電話網として機能しなくなるということである。

SIPとDNSの違い

SIPやSIPサーバーは、広範囲分散型の設計を元に長年運用されてきているDNSとは異なる。RFCは「こうすれば、電話番号とIPアドレスの問題が解決できるので、容易に電話サービスをIP化できる」程度の提案である。そのため、サーバーの連携や階層化、ならびに電話番号の分散管理に関する部分の定義がDNSとは異なっているのだ。

データベース工学の専門家でさえ、「理論上、DNSの動作がうまく行なわれていることは驚嘆に値する。」といわれるDNSは現在のインターネットの成功の要であり、実用化されてから現在に至るまで20年近くの間日々改変が繰り返されてきている。プログラムのコードそのものがその間何度も大きな改変を繰り返して生成されてきている今日の人類の生んだ最も重要なプログラムの一つである。

このサーバーの運営は現在でも非常に限られた人員しか許されておらず、わが国では村井純慶応大学教授を中心としたWIDEグループがいわば“rootサーバー”の役を果たしていて、これがアジア地域で唯一稼動している。このような歴史のある改変を繰り返してきているプログラムと、規模においてほぼ同じ程度のアドレス解決を有限なリソースの中で行なわなければならないのがキャリアにとってのSIPサーバーなのである。

SIPサーバーの選択は最善だったのか

従って、IPの一つのサービスとしてではなく、電話屋の目から見て、電話の交換系として正しいと思われる情報のやり取りを最初は独自でもいいから自分で考えた上で、合理的にSIPを選ぶのかどうか、という開発力が試されるのである。実際の現場の運用者の意見として「すでに市販されているSIPサーバーを買ってきたらうまく動きませんでした」というのではなく、自分達の想定する交換機としての性能を実現するために、最善を求めた結果、結果的に市販されていたものを使っても差し支えないと判断したというべきである。

(以下次号に続く)

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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