阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」
メルマガ連弾予告――上海汚職特集
2006年10月31日 [お知らせ]
昔、「クレムリノロジー」という言葉があった。誰も分からないソ連共産党中枢――クレムリンの暗闘を分析することだが、裏の意味があった。クレムリンの中なんて、スパイかCIAでもなけりゃ、どうせノーバディー・ノウズ。それをいいことに嘘八百を並べること(そういうソ連専門家に対する嘲笑)を言った。今ならさしずめ平壌ノロジーというところか。何せ材料が乏しいから、誰も否定できず、いくらでも知ったかぶりをして、おどろおどろしく書ける。で、誰でも評論家になれるから、いい世の中である。
しかしネタもとは存外、孫引きのマユツバ話なのだ。英国王室報道なども同じである。私がロンドン駐在時代にダイアナ妃が事故死したが、日本の報道はほとんどタブロイド紙の引き写し、王室に何の縁もない特派員(あげくに中公新書まで書いた)が、滞英15年を看板にしたり顔しているのは笑止だった。
今の中国報道も似たようなもの。中南海の政争は、大奥のように想像をたくましくできる格好のアリーナである。いつまでたっても三国志か何かのような、時代がかった悪党と英雄が出没する物語が語られる。でも、たいがいは香港や台湾の新聞、あるいは無責任な大陸のポータルサイトを切り張りしているにすぎない。昔、ロイター、今、サイト。ライターの多くが出不精なのは今に始まったことではない。
私自身、前の雑誌を編集していた時代にもそういう中国専門ライターがいて困った。「この10年、中国に行っていない。日本にいるほうが分るんですよ」などと自慢げに言うのだ。しばらくしてお引取り願った。中国語が読める人が少ないうちは、紙切り虫みたいなスクラップ記者でも生きていけたのだろう。
時代が違う。中国は必ずしも聖域ではない。似非専門家の馬脚はすぐあらわれる。
「SAPIO」「諸君」「正論」「WILL」の反中国記事は、みなコマーシャリズムと割り切っているのだろう。大衆が見たいものを並べているにすぎない。そんなに「中国はけしからん」と叫びたいのかな。評者の顔ぶれもいつも同じであって、facts findingではない。
先週の「週刊新潮」もそうだった。「新聞が報じない中国大暗闘 軟禁、罠、愛人の裏切り 胡錦涛の凄まじい江沢民追い落とし闘争」とある。そりゃいろいろあるだろうが、この感覚、古すぎる!と思いませんか。同じ新潮系列の「Foresight」もトップは「胡錦涛『最終勝利』のあとの難題」。双方とも切り張り記事に変わりはないと思う。
どうして誰も上海汚職のFactsを本気で追跡しないのか。上海で私がスリの被害にあったことはこのブログで報じた。しかし、せっかく上海に行ったのだから、市党委員会書記、陳良宇の摘発とその裏にある権力闘争の分析のFACTA版を、今度はメルマガ連載でお届けしようと思う。
FACTA onlineのメルマガ・サービスは8月から始まり、すでに2度の「予告スクープ」を報じた。「東証に400億損害賠償請求」と「10月にも日中首脳会談」である。FACTAが速報性でも日刊紙と競争できることを証明できたと思うが、今度のメルマガでは深掘りの実験を試みることにした。
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投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)
