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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

番号ポータビリティー2――二強対一弱

2006年10月25日 [モバイル]

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本日から最新号(10月20日号)の記事のなかから、このサイトで無料公開する「フリーコンテンツ」が始まります。第一回はこの「番号ポータビリティー」インタビューにも関連する「KDDI幹部の突然の退任」と、先日の参院補選で安倍政権に2勝された民主党の最大のミステリー「小沢一郎の本当の病状」です。

さて、ソフトバンクモバイル副社長の松本徹三氏のインタビューの続き。ソフトバンクは番号ポータビリティ(MNP)スタート前日の10月23日、新料金制度を発表して業界に「サプライズ」をもたらしました。先月28日の発表では「サプライズのないサプライズ」だったのが、今回は一転して自社の携帯同士の通話とメールが原則定額(1月 15日までに加入すれば7割引きの月2880円)になるというもの。MNPで劣勢を伝えられるソフトバンクモバイルが、これで巻き返せるかどうかは、松本氏インタビューを一緒に行った携帯ジャーナリストの三田氏が、連載の最後にコメントしてくれるでしょう。

ひとまず、この「サプライズ」の裏にどんな戦略が隠れているのか、インタビューの言葉に耳を澄ましてみましょう。

*   *   *   *   *

――松本さんがCDMAの鍵を握るクアルコムからいきなりライバルの提携会社へ移籍したことに業界は驚き、クアルコムには国内事業者の役員から抗議書簡が届きましたね。

松本 そんなことを言うのは、よほど国際感覚のない人ですね。世界では企業のトップはいつでも変わってますよ。

「いきなり」と言われるが、私の場合クアルコムジャパンの代表取締役社長は1年以上前に辞めているし、守秘契約も交わしていますから、法的にも道義的にも全く問題はないでしょう。

――松本さんは伊藤忠商事から始まって、クアルコムなどを経て、ついに通信事業者そのものに入られた。その経験から、ソフトバンクモバイルではどういう戦略が最適と考えていますか。

松本 モバイルが始まった時は誰もオペレーションの経験が無かった。要するに皆が一から学んできた道です。私は伊藤忠時代はどちらかといえばメディア関係の仕事のほうが多かったのですが、ここ十年はモバイルの業界にどっぷり浸かって、毎日のように将来の技術戦略や商品戦略、サービス戦略を考えてきました。門前の小僧でも少しはオペレーションについても分かるようになりますよ。

 でも、孫(正義ソフトバンク社長)さんに「モバイルのオペレーションはこういうものです」なんてアドバイスするつもりはありません。そんなことをしたら、「あなたは馬鹿ですか? そんなものは捨てなさい。革新をするんだから、今までのやり方のどこが悪かったかを考えなさい」と言われるでしょうからね。

 そうではなくて、例えば、これからのWeb2.0というものはモバイルにとってどんな意味を持つのか、これからどういう技術が必要になるのか、何にどういうタイミングで投資すればよいか、そういうアドバイスをしていくのが私の仕事だと思っています。

 人間はどういう潜在ニーズを持っていて、それに応え得るサービスはどういうものか。そのサービスにはどんな技術が必要か。もし今はない技術なら、いつ頃どこから出てくるのか。こういうことは、技術の大きな流れについての本質的な理解と、人間のライフスタイルというものに対する理解の両方が、頭の中で常に並存していなければアドバイスできないことです。私にもし何らかの自負があるとすれば、そういうところだと思います。

――ドコモとKDDIの二強に対して、どう攻めるのですか。

松本 具体的なことは話せませんが、まずは、ある程度まで二強に追い付くことです。たとえばネットワークのカバレッジやコスト構造、端末をタイムリーに出していく力などですね。ただ、追い付くことは必要条件であって十分条件ではない。十分条件は彼らができていないサービスをやること。この先の大きなパラダイム転換にどう対応していくかで勝負が決まる。

 だから今のソフトバンクを見て、二強からこんなに遅れていて大丈夫なのと言う人は、これからの激動を読むセンスが無い人なんです。ソフトバンクは高い買い物をした、買ったものの価値を計算したらソフトバンクの適正株価は900円しかないと言ってるアメリカのアナリストもいるようですが、彼らはソフトバンクが「今のボーダフォン」を買ったと思っているんです。しかし、ソフトバンクは、実は「将来の携帯ネットワークサービス事業」の基盤になるものを買ったのです。それがどういうものかという理解を持たない人が、どういう計算をして評価できるんですか? それは何の意味もないことです。

 将来の通信事業者のあり方についての展望があるからこそ、適切な投資だと判断したんです。深い読みがなければ判断できない。ソフトバンクの価値は900円だなどと言っている人は、おそらく将来の通信事業者のビジョンが無いんでしょうね。ビジョンがあれば価値はそこまで上がり得るんです。ソフトバンクはそれがあったからボーだフォンを買ったんです。

 携帯サービスの世界においては、自ら周波数と設備を持ち、端末機の企画力と流通能力までも併せ持って携帯通信キャリアでないと、本当に思い切った事業はできない。そしてこの分野でトップの事業者になるには、いかなる苦労があっても、早い時期に三強の一角に入らなければ駄目だと判断したわけです。

――松本さんがソフトバンクモバイルに入られたことで、クアルコムからのチップ調達が増えるなど、関係強化はありますか。クアルコム側は松本さんに期待していませんか?

松本 われわれは、キャリアとして一番いいものを選ぶだけです。クアルコムの幹部には、「私が今までやってきたことの判断が正しければ、クアルコムを当然選ぶだろうが、今まで何かを見落としていて、実はもっといいものがあるのなら、そちらを選びますよ」と言って脅かしてあります。「クアルコムがもしサプライヤーとして万全の自信があるのなら、『お客様がよく性能の比較もできずに、風評や見せかけの条件だけで選んでしまう』ことだけを心配していたらいいんじゃあないですか? その点なら私はちゃんと判断できるから大丈夫だけど、値段交渉がきついことだけは心配しておいてね」と言ったら苦笑いしてましたよ(笑)。クアルコムの経営幹部の人たちとは本当に仲がよかったし、お互いに信頼関係も継続すると思いますが、ビジネスは別です。私はソフトバンクを成功させることに全てを賭けてしまったわけですから、昔の仲間のことを慮っている余裕などは、正直言って全くありません。

 私が来たからには、世界中から一番いいものを一番安く調達したい。クアルコムの商品が本当に競争力があれば調達率は増えるでしょうし、そうでなければ駄目でしょう。それだけのことですよ。

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (0)

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* 編集長 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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