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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

インタビュー:渡辺聡氏「メディアはどう変わるか(3)――大衆化とSNS」

2006年09月14日 [メディア論]

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メディア情報通信コンサルタント、渡辺聡氏との対談の続きです。第1回は「Web2.0」とな何か、第2回はヤフー・ニュースのような人手と自動が渾然一体となっているもの。今回はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)について語りあいました。もちろん、私は同好会的なSNSとは対極的な月刊誌を編集し発行している立場で、冷静にメディア間の違いを眺めることのできる渡辺氏と違い、つい熱くなってしまいました。近視眼的かもしれません。

*   *   *   *   *

阿部 このブログでも書いたのですが、「The Economist」の"Who kills the Newspaper?"という新聞論は、実際はインターネット対新聞論になってます。内容は目新しくはありませんが、非常にイラストレーターが上手で、崖っぷちに新聞を持つ人が立っていて、その新聞の紙飛行機に乗ってディスプレーの中に消えて行く。うまいなあ。まさに、メディアの現状を表しています。

私のような元新聞記者にとって、エポックメイキングだったと思うのは、ニューズ・コーポレーションがアメリカのSNS最大手、MySpaceを買ったことです。ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック氏は新聞業界の中では伝説的な人物で、彼こそ新聞王と言っていいかもしれない。しかし、新聞買収に非常に執着を持っていましたが、彼の買収によって新聞が良くなったかどうかというと、それは別問題です。

「The Times」という有名な英国のクオリティペーパーがニューズ・コーポレーション傘下に入ったのですが、質はどんどん低下した。今はタブロイドになっていて、中身は硬い内容が書いてありますが、全体として何をやっているのか分からなくなってしまった。昔は硬くて地味だけれども、英国の保守党エスタブリッシュメント層の内輪話が沢山載っていて、それが英国政界を読む時などには非常に役立ったのです。今は、そういう部分はまったく無くなった。はっきり言えば大衆化したのです。

マードック氏はThe Timesを持ち、20世紀フォックスを買ってフォックステレビをやり、どんどん資本の論理で回転して行った果てに、MySpaceを買って大成功した。それが彼がやった成功物語です。

これを大きな流れとして見ると、商業メディアに求められているのはローカルニュース、天気情報、交通情報、エンターテインメントです。読者は身近な話を求めていて、政治や外交などの大言壮語するような情報は二の次、三の次でよろしいというのが典型的な動きです。それは新聞記者魂を滅ぼすものだと言って嘆いた人は、あの時代のThe Timesの編集部にも沢山いました。

しかしここまで来ると、その流れを否定できない。先ほど渡辺さんがおっしゃった折り合う地点というか、メディアとしての住み分けを考えざるを得ないのかなと思います。果たしてそれが可能なのかどうか、どういうふうにお考えでしょうか。

渡辺 例えば、英国の通信社ロイターが消えるかと言ったら、恐らく消えないですよね。そのビジネスの中心は、新聞への配信から金融市場向けのロイター・モニターに移っている。金融取り引きをする時に、その基盤になる情報を提供するロイター的な組織体は絶対なくならない。ある産業にとって必要な情報を提供するエージェント的なものは絶対に残るだろうと思います。

また、リクルートのフリーマガジン「R25」のように小さくて軽いながらも、コンテンツ自体はしっかりとしているパッケージがある時に、総合誌とか新聞とかをどんと出されると、ちょっと重いなという感じもあります。消費者が使い勝手のいいサイズが欲しいと言っている時に、いくらクオリティが高くても重いコンテンツを出してはしょうがないわけです。

The Timesの話で、エスタブリッシュメント層の内輪話という話がありましたが、それは、The Timesがその層の情報交換を代理していたということでしょう。あるコミュニティというか文化圏があって、その範囲の中で必要とされるものをカスタマイズしてフィットするように出して行くのは、メディアのひとつの基本形です。国のサイズになると全国紙だし、30代女性というと女性誌とかになる。ターゲットにフィットする切り出しが出来て、その人たちがオーケーだと言えばメディアは成り立つわけです。あとはコストの問題、組織体の問題です。

ただ、今は利用者(読者)数が増えれば破綻するロジックが強固に働いているので、下手に増やさずに、小さくきれいにまとめるほうが安定化しやすい傾向はあると思います。

(3/5:「コンテンツ設計のズレ」へつづく

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (1)

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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