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阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

インタビュー:鳥越俊太郎氏(4)――メディアが戦争を起こした

2006年08月09日 [メディア論]

オーマイニュース」編集長、鳥越俊太郎氏とのインタビューの第4回。話は佳境に入ってきて、メディアが「差別」のようなネガティブな感情を排除できるかどうか、という微妙な問題にさしかかった。鳥越氏はメディアがそれに加担し、煽れば戦争に突き進むことになるという強い危機感を持っている。それは彼の歴史観と言っていい。

私個人はメディアには必然的にノイズが入り込むと考えていて、それを完全に浄化することはかえってメディアの生命を弱めるかもしれないと考えている。「必要悪」とまで居直る気はない。しかし、ノイズとの緊張感なしに商業メディアが成立するとも思えない。それを抱え込んで黙って悶々とするしかないというのが正直なところである。

*   *   *   *   *

阿部 「責任ある参加」を書き手に求めて、匿名の書き手や情報を排除していくと、メディアとしては純粋になりますが、社会の陰の部分が反映できなくなりませんか。

鳥越 「オーマイニュース」は一応登録制にするんですけど、いちいち身元調査に行くわけじゃないから、偽装しようと思ったら不可能ではない。そこまで全部疑ってかかれるかどうか。でも、陰の部分が反映されないとどうなのかは、重要な指摘だと思いますね。

阿部 例えばスキャンダリズム。テレビにもあるし、週刊誌にもある。名誉を棄損されるほうは耐え難いんですけれども、残念ながら日本人のみならず全世界の人間が他人の内幕を覗きたいという好奇心がある。それが人間の現実だとするなら、それを排除することは、メディアという鏡に死角をつくることになりませんか。悩ましいことですが。

鳥越 それはだから、スキャンダル専門のメディアがあるでしょう。一つのメディアで全部をカバーすることはできないので、のぞき趣味専門のメディアはそれで生きていくわけですよ。それを我々がやる必要はないわけです。

日本人というか人間が、表現はしないけど非常に強く心の中に思っているネガティブなものはあります。例えば差別。人前では言わない。しかし、心の中に持っている。こういうものが実際に表に出てきたときは何かと、過去の歴史をひもといてみたら、すべて戦争ですよ。だから、そういうものを表に出して煽ることは、お互いのためによくない。

中国や韓国、日本には、反日や反中や反韓の感情があることは事実ですが、それをメディアが取り上げて拡大することによって、何が起きるか。戦争ですよ。過去の人間が犯してきた、おそらく何千年前から犯してきた歴史を見ても、必ず宗教と人種の差別に基づく憎悪や蔑み、人間の持つネガティブな暗い感情が行動となってあらわれる、それが戦争ですよ。

ネガティブな部分があることは否定しませんが、僕のメディアでバアーッと表出させることはやりたくないですね。むしろ、そういうことがあることを指摘してちゃんと論評し、意見を闘わす。匿名ではなくて、ちゃんと名乗って私はこう思うと言うなら、問題ない。

阿部 「オーマイニュース」発祥の地はもともと韓国です。ご承知のように朝鮮半島の緊張について日本人の大半はストレスを感じていますから、「オーマイニュース」日本版についても一種政治的な色眼鏡で見られる可能性があります。

鳥越 (色眼鏡で)見るやつはいますから、しようがないじゃないですか。反論してもどうこうなるものじゃないんです。つまり論理じゃありませんから。理屈でなくて、そういうことを言う人たちの心の中に巣くっている差別感情ですからね。そんなことを言ったら、じゃあ、韓国とか、中国だけなのか、アメリカに対してはどうなるのか。

日本にとって危機的な問題はアメリカかもしれない。最も多く日本人が殺されたのは、どこの国によってですか。原子爆弾を2発落とされたアメリカでしょ。今でも日本の国土を基地として持っているのはアメリカでしょ。その国に日本は、税金から何千億円もあげているんですよ。そしてイラクに連れて行かれて、アフガンに駆り出されて、次はおそらく台湾か、北朝鮮かわかりませんが、そういうアメリカの、アメリカによるアメリカのための紛争ですよ、戦争ですよ。

それに日本は引きずりこまれようとしている。これだって危機ですよ。韓国や、中国のことを言うけれども、ほんとうの危機はこっちかもしれない。それについてちゃんとした、きちっとした理屈で言論として来る分には、それは全然問題ない。議論を戦わせればいいじゃないですか。

阿部 だけど、「オーマイニュース」のような形で、市民記者も入れ、専門記者も入れて融合でやっていくときに、ショービニズム(盲目的愛国主義、jingoismともいう)みたいなものは否応なく入りこんでくるのでは。

鳥越 少なくとも僕が編集長をやっている限りはショービニズムはとりません。ショービニズムこそ、過去の悲劇的な戦争を引き起こした最大の主役であることを知っているからです。僕は一応、大学は専攻が日本史ですからね。最もやっかいな、そして最も国民を熱狂に落し込むものは何なのか。ショービニズム以外の何ものでもないですよ。では誰が煽るのか、メディアなんです。その反省をしなかったらできないですよ。

阿部 良し悪しは別としても、「売らんかな」のメディアは、意識的に左派路線より右派路線のほうが売れると割り切っていますよね。

鳥越 僕は日本人もそう捨てたものじゃないと思っているんです。今、安倍官房長官を(次期首相に)望む人が60%ぐらいいるから、多数派ではないけど、煽られないでちゃんとものをきちっと見ようよという人はゼロじゃない、何がしかいる。ある程度ビジネスとして成り立つことは成り立つだろうと。そうでなかったら、戦争になっちゃいますね、日本も。(ジャーナリストを)ずっと40年やってきて、だんだん日本の国が傾いているのはすごくよくわかる。やっぱり冷戦が終わってからですね、バランスが壊れて急激に傾き始めてますね。

(4/5:「100%真実な情報はない」へつづく

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (2)


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発行人 阿部重夫

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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