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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

電通を撃つ7――クレタのパラドクス

2006年04月30日 [電通を撃つ]

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口裏をあわせているとしか思えないサイバーエージェントとシーエー・モバイルの回答にいつまでもかかずらってはいられない。オプトも基本的には「インサイダー取引の認識はない」との回答だった。FACTA本誌にあるように、ネットプライスの佐藤輝英社長だけが、インタビューにこたえた。

さて、いよいよ本丸の電通の回答である。質問は広報室、小林光二氏に宛てたのだが、担当が途中で代わって(逃げた?)、ベテランらしいコーポレート・コミュニケーション局次長兼広報室長、佐藤和信氏となった。i記者が会ったが、こういうトラブル案件向けなのか、ぺらぺらといくらしゃべっても何の実もない話しかできない人だった。白く塗りたる墓。聖書にそういう言葉があったのを覚えていますか。

電通に告げよう。調査報道記者はこういう無内容な対応に本能的な嫌悪感を抱く。時間のムダ。からっぽのコメントでいなせると思うのなら、まったく逆効果である。クレタ人エピメニデスが言ったという真偽決定不能のパラドクス「すべてのクレタ人は嘘つきである」と同じだ。バートランド・ラッセルはそれを「私は嘘をついている」という一文に凝縮してみせたが、電通のコメントは「私は何も言わない」という裏返しのパラドクスだからである。

「何も言わない」とは、それ自体がメッセージであるという矛盾をはらむ。そこに電通が「メディアにあらざるメディア」であるというトートロジー(同義反復)の本質が現れる。おわかりですか、電通さん。わからなければ、ラッセルとホワイトヘッドの「プリンキピア・マテマティカ」をご参照ください。とにかく、数理に明るくない佐藤氏の空疎なおしゃべりでは記事にならないので、正式に文書で回答を書くよう求めた。4月3日に届いた文書は以下の通りである。

電通広報室

回答

貴社のご質問を整理すると以下の5点かと思います。その点につき回答させていただきます。

Q1.ネットプライスと御社、及びCCIとの業務・資本提携につき、電通が正式に業務・資本提携の機関決定をしたのはいつの時点で、どの場(たとえば投資委員会とか取締役会とか)で行われたのか。その決定に関与した役員数及び役職者数、その機関決定の責任者は誰か。

A1.本年1月中旬に然るべき機関決定を行っております。また、社内で実務遂行上事前に情報に接したすべての関係者が情報受領ならびに株式売買禁止について、所定の確認書に署名しております。

これだけでよく分かる。「いつの時点で」とは何月何日何時を聞いている。株価の値動きと付き合わせるためである。1月中旬なんて曖昧な返答では、東証だって証券取引等監視委員会だって通らない。「然るべき機関決定」? こういう答えを慇懃無礼という。こちらは投資委員会、(常勤)取締役会と具体的に名称まであげて問い合わせている。そこに付議されたという情報を踏まえてのことだ。それになぜ答えないのか。

あとの設問は無視された。役員数、役職者数、機関決定の責任者を絞りこむことは、インサイダー取引疑惑の有無を決定する際に不可欠だと思うが、回答しないのはなにかやましいことでもあるのだろうか。

Q2.ネットプライス株の上昇について、電通内ではこの機関決定との連動の有無を社内調査したのか。電通は彼らに対し、家族も含めた株式取引の有無などを調査したのか。またその周辺で機関決定や協議内容を知りうる立場にいた社員の社内調査は行われているのか。行われていないから、なぜなのか。

A2.情報管理、モラル管理を徹底しているので、ご質問のような調査は行っておりません。

いたちの穴をいぶりだしたら、屁をひったというわけか。やれやれ、厚顔とはこれを言う。「インサイダー取引があったという認識はありません」という回答と同じである。「ファイアウォールはあるからある」というに過ぎない。まるきりトートロジーだが、ご自慢の防止策の内実たるや、ほとんど噴飯ものというべき陳腐さである。

Q4.業務・資本提携案件を数多く抱える電通が、どんなインサイダー防止策をとり、コンプライアンスにどんな手を打っているのか。

A4.社員コンプライアンス教育や、インサイダー取引防止を含む「情報管理ガイドライン」の配布など、モラルの維持・向上に努めております。

電通社員のために笑ってさしあげよう。誰がそんなガイドラインなんかまじめに読んでいるものか。それでこと足りたら管理職なぞ要らない。経営陣の自己満足だろう。

Q5.モバイル広告やネット広告の成長に伴い、御社は数多くの提携で先手を打とうとしていますが、出資案件が増えるにしたがい金融資本化していけば、将来的には「1業多社」制の維持が困難になると考えているかどうかについても、ご意見をお聞かせください。

A5.当社の行う提携はその多くが事業シナジーの創出・発展を図るものであり、現在の広告取引への影響は無いと考えております。

事業シナジーなるものがどれだけ危うい橋を渡っているか、電通の本質が分かっていない(あるいは空とぼけている)空論である。影響が皆無と思うなら、ファイアウォールの存在を証明してからにしてほしい。

投稿者 阿部重夫 - 12:30| Permanent link | トラックバック (0)

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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