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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

アメリカ番外――サイバーエージェントを「村八分」

2006年03月30日 [アメリカ]

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ついに、というべきか。3月21日にこのブログで書いた「アメリカ6――ウェブスパムにお灸」が、とうとう日本でもすえられたらしい。先に書いたのは、ドイツの高級車メーカーのBMW本体と、日本の複写機メーカーであるリコーのドイツ法人のウェブサイトが、突如、最大手検索エンジンのグーグルによって検索不能、つまり検索対象から削除された事件である。今度は日本で「お灸をすえられる」会社が出てきた。インターネット広告代理店のサイバーエージェントである。

インターネット空間の覇者であるグーグルが、ユーザーに「全知」を標榜しながら、実は「無知」の空間をつくる検閲作業を始めたことを意味するのではないか、と私は書いた。それは故江藤淳の書いた「閉された言語空間 占領軍の検閲と戦後日本」と同じことではないか、という危惧である。戦前の大日本帝国の検閲が、伏字という国家意思を明示する形式だったのに比べ、マッカーサーGHQ(制度としてはCCDの事前検閲)が行ったのが、どこが削られたのか分からない隠微な検閲であり、やがてそれは言語を去勢する自己検閲として定着したという指摘だった。

米国は、かかる憲法(言論の自由を保障する第21条を含む現行憲法)を日本人に採択させ、そのことによって少なくとも建前の上では、日本の言語空間を、合衆国憲法修正第一条の保障する言語空間と、ほぼ等質なものに改造したはずであった。しかし、その当の米占領当局が、みずから大規模かつ徹底的な検閲を実施し、しかもその事実を秘匿しつづけているというのは、どう考えても辻褄の合わぬ話というほかない。

江藤淳がそう書いたように、アメリカの“偽善”は何ほども変わらない。3月28日、「SEMリサーチ」というサイトで報じられた「検索エンジンスパムと判定か? サイバーエージェント系のWebサイト、Google検索結果から削除される」のニュースは、まさにそれを立証する。サイバーエージェント(CA)は、藤田晋社長の「渋谷ではたらく社長のBlog」で知られるインターネット広告代理店である。それが何の事前通告もなく、その運営するサイトの大半(以下の通り)が“抹消”されたとしたらコトである。

bank.cashing-loan.com
blog.melma.com
cashing.affiliate-net.jp
cashing-hikaku.com
consumer.cashing-loan.com
ecnavi.jp
keitaiclick.ne.jp
www.all-navi.jp
www.broadband-navi.jp
www.careerup-navi.jp
www.cashing-loan.com
www.cashing-navi.jp
www.creditcard-hikaku.com
www.e-cashing.net
www.franchise-navi.jp
www.hikkoshi-navi.jp
www.hoken-navi.jp
www.hosting-navi.jp
www.lifemile.jp
www.livein-tokyo.com
www.loan-navi.com
www.provider-navi.jp

これは大量虐殺にひとしい。「SEMリサーチ」によれば、

2006 年3月28日23:00現在も、例えばECナビ( ecnavi.jp ) や eキャッシングネット( www.e-cashing.net )、メルマ ( melma.com )、クレジットカードカード比較ドットコム ( www.creditcard-hikaku.com )、CAガイド( www.ca-guide.jp )など同社及び関連会社が運営していたWebの多くがサイト名で検索してもGoolgeに表示されなくなっている。該当するサイトのドメインで検索しても ( site:ドメイン名、link:ドメイン名)全く検索結果が表示されない状況で、該当サイトのPageRankもすべて0と表示されている。一方で Yahoo!検索では問題なく検索エンジンに登録されており検索可能だ。

問題はSEMリサーチも指摘する通り、「検索エンジンに登録されていない原因についての本当の原因はGoogleしかわからない」ことなのだ。しかし、ドイツの例を見ても、グーグル内部にはCCDのような検閲チームがある。CAはリンクの人気度を操作するため、自社サイト間で双方向で大量のリンクを張っていたと見られる。それをウェブスパムとみなしたグーグルが、「みせしめ」としてCAの村八分に踏み切ったのではないだろうか。

藤田社長の3月29日のブログは、大阪で行った社員採用面接の話で、一見平静を装っているかに見えるが、伊丹空港から帰京する際の言葉が、この村八分で消耗したことをうかがわせるのだ。

疲れた。

今日はもう誰とも会いたくなく、誰とも話したくありませんでした。

一人になりたい。

そんな日があるとすると、こんな日なのかも知れません。

その後、30日午前2時現在、CAのサイトはグーグル上に復活している。だが、この一時“抹殺”によって明らかになったのは、寡占のグーグルがすでにマッカーサーになっているという現実である。

投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (10)

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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