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鹿島茂という人がいる。一応、フランス文学が専攻だが、あちこちに書いているから、ご存知の方も多いだろう。彼とは東大文学部の同期(?)だと思う。彼は仏文、私は社会学で、ともに留年して、卒業生のいない1973年に出た。その年に卒業式はなく、紙筒に入れられた卒業証書が、「勝手に持ってけ」とばかりに文学部の片隅に積み上げられてあった。彼もそこからひょいとつまんで”卒業”した口だろう。
顔の記憶は薄い(お互いに)。どちらも学校にろくに行っていないからだ。あちらは仏文、こちらは独文で、教室も違う。バイトやマージャン、映画館通いにそれぞれ忙しく、袖くらいすれ違ったかもしれないが、それぞれ勝手に生きて、名前だけ少し記憶していた。
その後も教壇と記者では交差するタイミングがなかった。あちらの文筆業が商売繁盛なのはめでたい限りである。ときどき彼の本を拾い読みしたが、なんとなく同時代の息吹が感じられて、バルザックやゾラなどキッチュが好きなこの蔵書家(愛書家)を遠くから眺めていた。
投稿者 阿部重夫 - 18:00| Permanent link | トラックバック (0)
1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。
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