阿部重夫発行人ブログ「最後から2番目の真実」

2005年12月10日 [ソニーの「沈黙」] [創刊に向けて]ソニーを包む「奇妙な沈黙」

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新雑誌「FACTA」で何をめざすのか。一例をあげよう。「2ちゃんねる」などネット掲示板ではソニーが袋叩きにあっている。携帯オーディオ市場で6割のシェアを奪ったアップルの「iPod」に対抗し、かつての王者ウォークマンが巻き返しの決め手として11月19日に発売したばかりの「Aシリーズ」に対する怨嗟の嵐が、ネットで吹き荒れた。

不思議なことに新聞・雑誌はそれをほとんど報じない。広告主ソニーに気兼ねしているのかと疑われてもしかたがない。この奇妙な沈黙はまた、ソニー自身が演出しているのだろうか。苛立ってネットに殺到するクレームはほとんど一方的に「ソニー憎し」で、返品をあおるばかりだ。同情的な声があっても「おまえはGK(ゲートキーパーの略語、「仮面をかぶった回し者」の意味)か」と一刀両断である。

ブログは怖い。ネットの“蛮人”たちは落ち目のブランドと見るや、ここぞとばかりに痛めつける。だが、なぜソニーに直あたりしないのだろう。「臭いものにフタ」式なら日光消毒になるし、意識的または無意識の世論操作装置と化している既存ジャーナリズムを破って風穴をあけられる。落書きみたいなソニーの悪口を掲示板に書きこむだけではあまりに悲しい。対象からのフィードバックを欠いたネットは、対人恐怖症の裏返しである。

それなら、と思った。幸い、人に会って喜怒哀楽を引き出すのは苦にならない。どんなジャーナリズムも、取材と回答の往復運動から生まれる。それをネットで見せればいい。ソニーの「沈黙」を俎上にのせよう。だが、ウォークマンAシリーズやコピー制限機能付き音楽CDという、ソニーにとって致命傷と思える問題が続いたせいで他意はない。

たまたま12月4日(日)付で熊本日日新聞の「論壇」面に「ソニー蝕む“ウイルス”」という記事を書いたら、即日、2ちゃんねるに「阿部重と熊本日日を称える」と題したスレッドが立ってしまった。だれかが提灯スレッドを立てたのかもしれないが、私のヤラセではない。面映いのと罪滅ぼしのつもりで、取材経過をこのブログで逐一さらしてしまおう。それが「FACTA」のめざす方向と一致していると信じるからだが、次第にソニーの「沈黙」の裏にあるものも浮かびあがってくるだろう。

ソニーに質問状を送ったのは11月29日である。そして12月1日、エレクトロニクス広報部O氏からその返答が来た。返答に窮す様子がありありと思い浮かんだ。つくづく広報とは気の毒な商売だなと思う。しかし、こういうやりとりは、ネット掲示板の一方的情報よりはましだと思う。彼らが誠実か不誠実かは、一目瞭然だから。

取材のお願い

ジャーナリスト 阿部 重夫

拝啓

暮秋の候、貴社ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。お電話で申し上げましたが、新潮社月刊誌「フォーサイト」の連載コラム「最後から二つ目の真実」(12月中旬掲載)、および熊本日々新聞の外部寄稿コラム「論壇」(12月4日掲載)の取材のため、下記の件につきよろしくご手配いただけますようお願い申し上げます。

1)ソニーBGMの音楽CDに搭載されたXCP問題について
・テキサス州が州法違反で訴えたこと、米国での集団訴訟に対するソニー本体としての見解、および製造物責任(PL)と著作権保護の整合性をどう考えますか
・最終的な責任は、XCPを開発したFirst4Internetにあるのか、ソニーBMGにあるのか、どちらとお考えでしょうか
・ネットメディアでは憶測が乱れ飛んでいますが、rootkit感染PCは世界で何台、日本で何台とソニー自身は推定していますか
・MediaMaxの感染度合いについてはなお詳細が不明ですが、ソニーはどう推定していますか
・日本での輸入版CD返品、交換は直近時点で何件に達していますか。PC感染についてのクレームはきているでしょうか

2)ウォークマンAシリーズについて
・「コネクトプレーヤー」のフリーズや、「ソニック・ステージ」との不連続など「価格ドットコム」などではかなりクレームが集まっていますが、顧客の返品要求は発売後直近まで何件くらいに達していますか
・ソニー・スタイルのサイトには、設計者辻本旬氏のインタビューが掲載されていますが、ドーナツ状の基板が「電気的に不利」「強度面でそうとうな無理」と語っています。これは具体的にどう不利で、強度は何を犠牲にしたということでしょうか
・So-netに載っていたpinkyの「ウォークマン体験記」は、ヤラセと指摘されたのち閉鎖されました。このサイトはソニーグループ社員または広告代理店と関係があったのでしょうか

質問のあらましは以上でございます。恐縮ですが、1)については12月6日までにできれば法務担当の方にお会いしてお話をうかがえたら幸いです。2)については熊本日日でとりあげるため、今週中に電話かFAXでもご回答がいただけたら幸甚です。

上記の連載コラムは加筆修正のうえ、将来書籍として出版される可能性があります。なお、小生は98年まで日本経済新聞記者で、99年から03年まで「選択」編集長でした。

敬具


ソニー広報センターの回答書

拝啓

 寒冷の候、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。また、平素は格別ご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 さて、先日お問い合わせいただきました2件のうち、ウォークマンAシリーズに関するご質問について、取り急ぎご回答申し上げます。ご不明な点などございましたら、いつでもご連絡いただきたく存じます。なお、ソニーBMGの音楽CDに関するご依頼に関しましては、弊社・コーポレート広報部より、別途ご連絡いたしますので今しばらくお待ちいただければ幸甚です。

敬具

―記―

(1)ウォークマンAシリーズ 発売後直近までの返品要求

 ウォークマンAシリーズは、初月生産では50万台強を、日本国内および欧州など一部海外向けに出荷致しました。しかし、誠に恐縮ながら、商品個別の現時点での販売台数や、お客様から販売店様への返品件数などの数字の公表は控えさせていただいております。なお、発売以降、コネクトプレーヤーのバグにより、一部お買い上げいただいたお客様にご迷惑をおかけしておりましたが、12月上旬にインターネットによる改訂版ソフトウエアへの自動更新を実施する予定です。下記URLおよび添付コピーをご参照ください)
 http://www.sony.jp/support/p.audio/contents/information/info_cdextra.htm

 このソフトウエア更新により、現時点で一部のお客様からご指摘いただいている問題は、解決するものと考えております。

(2)ソニースタイル・インタビュー中の「電気的な不利」「強度面の無理」について

 基板に穴を開けることで、不要輻射と呼ばれる不要な電磁波が発生しやすくなります。これを電波障害法の規定の範囲内に押さえこむノイズ対策に、通常以上の設計パワーを要しました。もちろん、発売中の商品では解決されており、全く問題ございません。

 また、商品としては、強度は何も犠牲にしておりません。基板に穴を開けることで、物理的に基板自体の強度は若干低くなります。しかし、危機は金属製の外装に守られ、落下衝撃の社内基準をクリアしておりますので、発売中の商品は全くございません。

(3)So-netの「ウォークマン体験記」について

 「ウォークマン体験記」は、ソニーマーケティング(株)」が企画、So-netの場を借りて実施した、ブログ形式のモニター体験レポートです。ウォークマンのプロモーション活動の一環として、カタログなどでは伝えきれない“実際に使用した体験”をお伝えすることを意図していました。

 この企画を実施するにあたり、ソニーマーケティング(株)より製品の貸与は行いましたが、ブログ内の体験レポート記事はあくまで“各モニター個人の体験”に基づくもので、pinkyさんの体験によるコメントに、ソニー側からのコントロールや「ヤラセ」を行った事実はございません。

 しかし残念ながら、pinkyさんのコメントや画像が一部の方々に誤解を与え、それに対する様々な憶測のコメント、議論が急拡大する結果となりました。最終的には、当初の企画趣旨とは全く異なる方向へと発展したため、企画しましたソニーマーケティング(株)の判断で、「ウォークマン体験記」は終了させていただいた次第です。

以上、宜しくお願い申し上げます。

※一部の表記につきましてはウェブの形式に変更しています