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念のために一言。前回書いたルシノビッチ氏のソニー音楽CDを告発するブログの内容は、邦訳文を転載したものではない。読み比べれば分かると思うが、セキュリティ専門家である彼がどんなツールを使ってスパイを突き止めたかには触れていない。それは彼独自の専門知識とノウハウに属する。ただ、彼がこのスパイウエア開発者に感じた怒りとアイロニー、その仮面をはぐ執念に的を絞った。それは、なぜこのブログがかくも共感を呼び、あっというまに世界で轟々たるソニー批判が噴出したかを実証しているからだ。
アメリカではこうしたスクープに敏感に反応する層がネット空間に存在する。日本でブログといえば私的日記の色合いが濃く、そこで飛び交うのはどこかの情報の孫引き……「2ちゃんねる」語でいう「コピペ」とリンクで循環しているにすぎない。海外では、ルシノビッチ氏のブログのようなプロが、単なるコメントだけでなく、「金無垢のファクツ(事実)」を提供するニュース系ブログが盛んである。新聞や雑誌など既存の商業メディアは、往々にしてそれを拾ってニュースに仕立てるのだ。
ルシノビッチ氏のブログ掲載の2日後、11月2日付のワシントン・ポスト紙がこの騒ぎを大きく報じたのがいい例だろう。私の管見する限り、有力紙ではこれがもっとも早い。ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の調査報道で有名な同紙は、そのヒーローであるボブ・ウッドワード編集局次長が「権力の番犬化」ですっかり評判を落としているが、さすがに早耳の伝統だけはいまも継承しているらしい。
この記事によって、ソニーBMGのスキャンダルはネット空間の外に広がった。最近、ワシントンから来た人に聞いたら「ああ、あの記事ね」と記憶していたから、紙媒体の読者にも衝撃を与えたのである。書き出しはこうだった。
投稿者 阿部重夫 - 06:00| Permanent link | トラックバック (1)
1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。
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