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阿部重夫編集長ブログ「最後から2番目の真実」

2005年12月31日

ソニーの「沈黙」15――カイロに聞いてみた

カイロに電話した。サウジアラビアの富豪アル・ワリード王子が日経のカイロ支局長に語った「(現在投資を検討している企業は)世界で5、6社ある。一つはソニーだ」という発言が、どうしても気になったからだ。

王子にインタビューした支局長のK記者とは、ジャカルタで会ったことがある。彼が駐在員で、こちらは東京から出張した。むうっとする熱帯の温気(うんき)、アセチレンの揺れる屋台の人影、そしてスコールの雨。ああ、これぞアジアと思った記憶がある。それからずいぶん歳月がたった。だしぬけの電話なので、探りを入れる声になる。

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2005年12月30日

ソニーの「沈黙」14――新会長のつまずきは「蜜の味」

12月29日朝の御茶ノ水は森閑としている。澄んだ蒼穹。当方は来年の創刊を控えて、のんびり正月休みをとる身分ではないので、週末まで出社するつもりだが、たいがいのオフィスはきのうで御用納めだったろう。私個人は、手嶋龍一前NHKワシントン支局長を通じて知り合った若い人たちを前に、新雑誌がめざすジャーナリズムを語る会に出た。寒風の夜の巷はほろ酔いの人が多く、「歓喜の歌」を空耳で聞いた気がした。

「歓喜よ、美しき神々の閃光よ(Freude, Schöner Götterfunken)」

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2005年12月29日

ソニーの「沈黙」13――コンスピラシー・セオリーの温床

1997年に公開された映画「コンスピラシー・セオリー」(邦題「陰謀のセオリー」)は、メル・ギブソン演じるちょっとオツムの弱いタクシー運転手が、陰謀史観にとりつかれて客にのべつ吹聴し、その強迫観念にあわせて自宅のアパートも要塞のように改造してしまった場面から始まる。脳裏をよぎる三本の煙突の執拗なフラッシュバック。そしてジュリア・ロバーツ演じるヒロインをやみくもに守ろうとする行動。運転手は憑かれたように語る陰謀史観以外に何も覚えていない。

映画はその頓狂な非現実がしだいに現実に化していく恐怖を描くのだが、ほんとうはこの運転手の妄想が完成して外に出られなくなり、妄想どおりに秘密機関の追跡と恋人の救済という願望に閉じこもってしまったかと思える。

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2005年12月28日

ソニーの「沈黙」12――「リヤドの助っ人」の不自然な発言

12月22日付の日経朝刊国際面に載ったサウジアラビアの富豪アル・ワリード王子のインタビューについて、続きを書こう。

ひとつ、私的なエピソードを紹介しよう。私のロンドン駐在時代(1995~98年)に、カイロ支局の記者から興奮した電話がかかってきた。アル・ワリード王子と電話でしゃべったという。当時、サウジはビジネス目的なら入国できても、ジャーナリストはご法度という「鎖国」状態で、リヤドは外国人記者にとって砂漠の彼方の「幻の都」だった。商社マンが自在に出入りしているのを指をくわえてみているほかない。

「そいつはすごい!」と私はうなった。「で、何か聞けたの」

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2005年12月27日

ソニーの「沈黙」11――不可解な株価と最後の「びっくり箱」

1992年12月、あなたは何をしていた? 小学校の週休二日制が始まった年である。

英国王室はてんやわんやだった。この年、故ダイアナ妃とチャールズ皇太子の不仲のスキャンダルが火を噴き、ウィンザー城が火災に見舞われたのだ。エリザベス女王は恒例のクリスマス演説でAnnus Horribris(アヌス・ホリブリス、身の毛がよだつ一年)と回顧してみせた。ロンドン大火のあった1666年がAnnus Mirabilis(アヌス・ミラビリス、驚異の年)と呼ばれるのにひっかけた、いかにも英国らしいジョークである。

かの国の王室は負け惜しみでもこういう機知を飛ばす。さて、2005年はソニーにとって「ホリブリス」の1年だったのか、「ミラビリス」の1年だったのか、ぜひとも英国人のストリンガー会長から、思い切りジョークのきいた負け惜しみを聞いてみたいところである。

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2005年12月26日

斎藤拙堂の「コンテンツ論」に図らずも感心した

面映いけれど、少し「手前ミソ」をお許しください。われわれが創刊する月刊誌「FACTA」と小生のことを書いた記事が、12月26日発売の週刊「AERA」(2006年1月3日号)に掲載されました。小生もインタビューに応じましたので、ご興味があるかたはどうぞ。たいへん温かい記事内容でかえって恐縮ですが、自分の夢の実現がこれから外部の目にさらされると思うと、身の引き締まる思いです。

ロンドン住まいのころ、クリスマス休み明けの「ボクシングデー」は、浮き浮きしてくる日だった。クリスマス・プレゼントの箱をあける楽しみばかりではない。緯度の高いロンドンの12月は冬至までは朝は暗いし、夕方はすぐ日が暮れるしで陰々滅滅の季節だが、冬至が過ぎると、急に空が明るくなる気がする。

せっかくそういう日なのに、暗い話ではバチがあたりそうなので、いっそのこと梅の話でも書こう。姉歯・市河氏弾劾の急先鋒である人気ブログサイト「きっこの日記」だって、ときに冬至のヒマネタを延々と書いて埋め草にしているじゃありませんか。

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2005年12月24日

ソニーの「沈黙」10――同じ愚を繰り返した「メディアマックス」

昨夜は忘年会のピークだったのか、都内の道路はどこも大混雑。切込隊長との飲み会に遅刻した。ほろ酔いで帰ったら、オフィスのセコムが誤作動したらしく、警備員が駆けつける始末。大家さんを叩き起こしてシャッターを開ける騒ぎになって、電話で平謝り。

風邪にお見舞いのメールをいただいた。「これ、笑えます」とあって、「Engadget」なるサイトの記事を紹介してもらった。なるほど、笑えます。

英国ソニーが発売するカーオーディオ用の新MP3プレーヤー「ギガパネル」の話。使い勝手が悪いいうえにどうみても欠陥品だったウォークマンAシリーズの楽曲転送ソフト「コネクト・プレーヤー」があっさりと採用されず、ドラッグ&ドロップで直接パソコンから転送できるそうだ。ははあ、日本でのクレームを聞いて、こりゃあかんと思ったんでしょうね。やればできるじゃん! でも、トホホなのは、英国ってストリンガー会長の母国。身内に見限られた「コネクト・プレーヤー」も浮かばれない……。

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2005年12月23日

ソニーの「沈黙」9――中身のない「門前払い」回答

このブログの初回(12月10日)で掲げたように、ソニーに対しては11月29日に質問状を送った。音楽CDに搭載されたコピー制限プログラムの問題について、日本のソニー広報センター コーポレート広報部名義の回答を得たのは12月2日である。

拝啓

 寒冷の候、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。また、平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
 大変遅くなりましたがソニーBMGの音楽CDに関して先日頂戴したご依頼内容につき回答させて頂きます。弊社法務担当者へのご取材につきましては、社内で検討致しました結果として、現在、ソニーBMGとして係争中の案件であり、取材は辞退させて頂きたく、ご理解のほど宜しくお願い申し上げます。誠に申し訳ございません。本件に関していただいておりましたご質問事項に関しては、以下の通り回答させていただきます。
 ご査収のほど、宜しくお願い致します。

敬具

以下、こちらの個別の質問についてQ&A形式で応えていくのだが、まず上記の文面にどんな印象を得ただろうか。「係争中の案件で法務担当者の取材には応じられない」という回答を、私は取材拒否、門前払いと受け取った。フィンランドのブログの告発から1カ月も経ちながら、顧客のパソコンの機能を損じるとまで言われ、テキサス州の州検察にスパイウエア禁止の州法違反で訴えられた問題に、なおダンマリとはあきれるほかない。

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2005年12月22日

ソニーの「沈黙」8――「E.T.」の目で眺めた惑星“汚染”

忘年会の連チャンで風邪を完治する暇がない。「髪に寝癖が」と言われるから、よほどヨレヨレなのだろう。いつのまにか風邪っ気を忘れた。そろそろソニーの話に戻ろう。

きょうはブロガーの怖いユーモアについて。11月15日、シアトル在住のフリーのセキュリティ専門家ダン・カミンスキー氏が、「ウェルカム・トゥ・ソニー・プラネット」(いらっしゃい惑星ソニー)と題したブログを掲載した。これは笑える。冒頭を翻訳すると、

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2005年12月21日

「コンパウンド」の報道2――言葉狩りのヴェールを破る

まだ風邪が癒えない。もう少しバグダードの話を書きたい。

米軍など駐留軍部隊やイラク移行政府要人、さらに多数派シーア派を標的にした反政府武装勢力のテロ活動を、英語では「insurgency」「insurgence」と呼んでいる。なぜ「revolt」「rebellion」「uprising」という日常語を使わず、ラテン語の「surgo」(立ちあがる)を語源とする難しい言葉をつかうのか。やはり「革命」や「蜂起」を連想させる言葉では正当化もしくは非難の響きがあり、それを無意識に避けようというバランス感覚が編集者や記者に働いて、ラテン系の難解な語彙で「韜晦」(とうかい)するのだろうか。

優れたイラク報道でピュリッツアー賞をとったアンソニー・シャディド記者(ワシントン・ポスト紙)もそこは変らない。でも、彼の著書「夜は近づく」の第5章「insurgency」の言いようのない暗さは、「言葉狩り」のヴェールを破ってイラクの現実を突きつけてしまう。ファクツ(事実)の前でレトリック(形容)は非力なのだ。たとえば、こういう会話だ。

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2005年12月20日

厳重警備の「コンパウンド」に守られる報道

風邪をひいた。喉が腫れて、節々が痛い。日曜は一日寝ていた。青く澄んだ空と、燦々とそそぐ日の光を、窓からふり仰ぐ。きょうはソニーの話はやめよう。

アンソニー・シャディド(Anthony Shadid)の「夜が近づく」(Night Draws Near)を読み始めた。シャディドはAP通信や「ボストン・グローブ」などの記者を経たのち、現在はワシントン・ポスト紙の記者である。2003年の米英軍イラク侵攻とその後の米軍進駐時、優れた現地ルポルタージュを送り続け、2004年にはピューリッツア賞、米国新聞編集者協会賞などを受賞した。

オクラホマ生まれだが、その名からしてアラブ系で、先祖はレバノンのマジューン出身だから、「中東は故郷であり、私はアラブのルーツを抱擁し、その言語を学んできた」という。「人種の坩堝」のアメリカで、亡国のバックグラウンドを持つ人間は少なくないに違いない。しかし、ワシントン・ポスト紙で一読したときから、彼の文章に魅せられた。

なぜだろう。説明できないもどかしさ。ルポが本になって出版され、年末の「The Economist」誌の2005年の良書の一冊にも挙げられたのを見て、アマゾンで買ってみた。読み始めてわかった。彼の魅力は、その耳にあると思う。

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2005年12月19日

ソニーの「沈黙」7――ツギハギに追われる蟻地獄

ワシントン・ポストの論調が、ソニーBMG製音楽CDのコピー制限プログラム(XCP)問題の帰趨を決めたといっていい。悪意はなかったと弁明しながらも、ソニーBMGの下請けであるソフト開発会社F4I(ファースト4インターネット)が、XCPの「覆面」機能を外すパッチ(修正プログラム)を無料配布しはじめたのは、「パソコン内にもぐりこみ、検知されないよう“雲隠れ”するなんて、一流企業にあるまじきハッカーの手口ではないか」と指摘されたのが利いたのだろう。

が、これがイタチゴッコの悪循環の幕開けになる。CDに仕込まれた「スパイウエア」を最初に暴いたフィンランドのセキュリティ専門家、マーク・ルシノビッチ氏が、11月4日に早くもこのパッチに噛みついた。またプリンストン大学コンピューター科の教授も、ブログでその脆弱性を指摘したのである。

このパッチを入手する際、ユーザーがオンラインでフォームを送り、パソコンを修正可能な状態にするプログラムをダウンロードする仕組みだが、このときに「ソニーBMGやF4I以外に、ユーザーがアクセスした全ウェブサイトが、何でも好きなコードを送ってパソコンを乗っ取れるようになってしまう」。パッチ自体の出来も悪く、作動させるとパソコンがクラッシュ(機能停止)する可能性さえあるという。

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2005年12月17日

ソニーの「沈黙」6――さすが早耳、ワシントン・ポスト紙

念のために一言。前回書いたルシノビッチ氏のソニー音楽CDを告発するブログの内容は、邦訳文を転載したものではない。読み比べれば分かると思うが、セキュリティ専門家である彼がどんなツールを使ってスパイを突き止めたかには触れていない。それは彼独自の専門知識とノウハウに属する。ただ、彼がこのスパイウエア開発者に感じた怒りとアイロニー、その仮面をはぐ執念に的を絞った。それは、なぜこのブログがかくも共感を呼び、あっというまに世界で轟々たるソニー批判が噴出したかを実証しているからだ。

アメリカではこうしたスクープに敏感に反応する層がネット空間に存在する。日本でブログといえば私的日記の色合いが濃く、そこで飛び交うのはどこかの情報の孫引き……「2ちゃんねる」語でいう「コピペ」とリンクで循環しているにすぎない。海外では、ルシノビッチ氏のブログのようなプロが、単なるコメントだけでなく、「金無垢のファクツ(事実)」を提供するニュース系ブログが盛んである。新聞や雑誌など既存の商業メディアは、往々にしてそれを拾ってニュースに仕立てるのだ。

ルシノビッチ氏のブログ掲載の2日後、11月2日付のワシントン・ポスト紙がこの騒ぎを大きく報じたのがいい例だろう。私の管見する限り、有力紙ではこれがもっとも早い。ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の調査報道で有名な同紙は、そのヒーローであるボブ・ウッドワード編集局次長が「権力の番犬化」ですっかり評判を落としているが、さすがに早耳の伝統だけはいまも継承しているらしい。

この記事によって、ソニーBMGのスキャンダルはネット空間の外に広がった。最近、ワシントンから来た人に聞いたら「ああ、あの記事ね」と記憶していたから、紙媒体の読者にも衝撃を与えたのである。書き出しはこうだった。

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2005年12月16日

ソニーの「沈黙」5――暴かれた“密告”プログラム

ソニーBMGの音楽CDに仕込まれたウイルス性の「マル(悪質)ウエア」を暴いた、フィンランドのマーク・ルシノビッチ氏のブログは、それ自体が潜入した敵工作員を摘発するスパイ小説のようにスリリングである。

ルシノビッチ氏はコンピューターへの不正侵入をガードするセキュリティの専門家なのだ。ハッカー(クラッカー)の多くは、不正侵入を検知されないようログを改竄したり、裏口を設けてそこから出入りするなどの手口だが、そのための一連のソフトをまとめた「ルートキット」(rootkit)と呼ばれるパッケージがあって、ウインドウズなどの基本ソフト(OS)の中核部分であるカーネルに忍びこむから始末が悪い。ルシノビッチ氏はこの「ルートキット」に詳しく、力作リポートも書いている。

ところが、灯台もと暗し。ルートキット検知ソフトを自分のマシンで試してみたら、なんと「陽性」と出たのだ。おかしい。ふだんからスパイウエアやウイルスを拾わないよう、不審なウェブサイトには近づかず、用心してきたはずなのに、なんとしたことか。「元カレの元カノジョの元カレ……」と果てしなく続くエイズ防止の政府広告があるが、身元の知れた相手と付き合ってきたのにエイズ検査で「陽性」と出たようなもので、ルシノビッチ氏は一瞬バグかと思ったし、疑心暗鬼にも駆られたのである。

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2005年12月15日

ソニーの「沈黙」4――音楽CDの“無間地獄”

いつまでも道草をしていると、変に勘ぐられるので、そろそろソニーの本論を再開しよう。発端から書くことにする。

11月半ばの週末だった。場所は東京・飯倉のロシア大使館近くのライブハウス。ポルトガルの哀愁を帯びたファドの歌が流れる暗がりで、だしぬけに「知ってる?」と言われた。

「ソニーの輸入盤音楽CDに“ウイルス”が仕込まれていて、パソコンが感染すると機能不全になるんだって。シリコンバレーは騒然としていて、ソニーが憎まれっ子になっているのに、どうして日本では報じられないんですかあ」

相手は国立系研究機関につとめる通信の研究者で、同じライブを聴きにきていた知り合いだが、せっかく赤ワインと音楽で陶然としているのに無粋なヤツ、と思いながらも、単なる素人の聞きかじりではないので聞き流せなかった。

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2005年12月14日

「最初のジャーナリスト」とトマス福音書

サーバーの容量アップにしばらくかかるので、ソニーの話題に戻るのにもう少しお時間をお借りします。

ソニー論のブログを読んだ読者のなかに、「直あたり」という言葉を理解していただけない人がいたらしい。どうもマスコミの業界用語を不用意に使ったようで、要すれば「取材」という意味である。その延長線でジャーナリスト論を試みよう。

人類の歴史で一番古い職業は「娼婦」、二番目は「スパイ」と、おおよそ相場が決まっている。では、ジャーナリストという職業はどれくらい古いのか。

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2005年12月13日

自分の恥部に「ぼかし」を入れるジャーナリズム

このブログに「想定外」のアクセスが殺到、サイトにつながりにくくなっていることをお詫びします。サーバーの容量を上げるなどの対策をとります。

少し湯ざましに道草をしよう。本当はソニーBMGの音楽CD「スパイウエア」問題を続いて取り上げる予定だったが、このまま過熱状態だとアクセス障害が続くので、「本物のスパイ」の話に寄り道したのちに本題に戻ることにします。

とは言っても、生ぬるいネタにはしたくないので、日本のブログ、とりわけニュースの断片に飛びついて過激なコメントを書き連ねるブロガーに苦言を呈する内容にしよう。

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2005年12月12日

ソニーの「沈黙」3――血祭りになったヤラセ「体験日記」

ウォークマンAシリーズの発売4日前に始まった「メカ音痴の女の子のウォークマン体験日記」は、近来まれに見る企業広報の壮大な失敗だった。ブログをつかった安手の世論操縦が、どれだけ痛烈なしっぺ返しを食うかを思い知るべきである。

致命傷は写真だった。pinkyというブログの主人公が、届いたウォークマンを手にした写真をネットに公開したのである。いかにも素人っぽく撮ってあるが、ネット空間にはいくらでもプロがいる。影がふたつあることから、タングステンハロゲンランプとスタンドを使っていると見破られた。そんな重装備で撮影するなんて素人であるはずがない。

このpinky嬢、自分の顔は見せない(一度、写真が載ったそうだが本物?)。それにしてはあざといことに、「早速音楽をダウンロードする予定が、自分のパソコンがmacだったことに気づき、撃沈。。。 windowsのパソコンを買って、やっとダウンロードしてみました」と書いた。ウォークマンを使うのに、パソコンを買い換えるなんて不自然。しかも、ウォークマンの不倶戴天の敵iPodのメーカーであるアップル製のMac パソコンをけなすにひとしい。ところが、写真の背景に映っているキーボードはウィンドウズのもので、それを指摘されて狼狽した。

嘘は重ねるほどボロが出る。

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2005年12月11日

ソニーの「沈黙」2――切込隊長の辛らつな「抑制」

前回の続き。ソニーの尻尾をつかむために、取材で一歩一歩問い詰める第二編である。

質問状で触れたウォークマンAシリーズの「コネクトプレーヤー」とは、パソコンに組み込む楽曲転送ソフト(iPodではiTunesにあたる)で、その不具合がAシリーズへの不満の中心だった。その改訂版提供の発表は質問状を送った11月29日に行われ(実施は12月2日)、ソニー自身が認めた「問題点」は以下のように10項目と多岐にわたる。

  • 再生中や録音中にコネクトプレーヤーで他の作業を行うと“不正な処理のエラー”が表示されたり、フリーズすることがある。
  • CD EXTRAを認識しない。
  • 大量の曲の転送を何度も実施した後に、コネクトプレーヤーのライブラリの曲が表示されないことがある。
  • コネクトプレーヤー上でウォークマンAシリーズ内の曲のメタデータを編集しても、ウォークマンAシリーズに反映されないことがある。
  • 約1000曲のチェックアウトを連続して行うと、転送が正常に完了しないことがある。
  • 「Gracenote CDDB(r)の登録」に失敗すると、その後登録ダイアログが表示されない事がある。
  • Windows2000環境で、曲にジャケット画像を登録するとコネクトプレーヤーが動作しなくなることがある。
  • コネクトプレーヤーでウォークマンAシリーズのフォーマット中に、アプリケーションエラーが発生することがある。
  • ライブラリで曲の並び順を変更後にほかの分離を表示すると、変更した並び順が反映されない。
  • その他の改善

ボロボロじゃないの。これだけ多いと、やはり「欠陥商品」と言われてもしかたがないのではないか。ここから浮かび上がるのは、ソニー技術陣のソフト開発力がえらく低下していること、製品発売前の事前のチェックがおざなりなことである。ある関係者にいわせると「1000曲以上の転送ができない」なんて致命的なバグ(欠陥)は、チェック段階で数百曲の転送しかしなかったことを示すもので、ソニーのMP3の旧ソフト「ソニックステージ」で1万曲保存などザラという現状を自覚していなかったのではないかという。ソニー信者が怒り心頭に発したのも無理もない。

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2005年12月10日

ソニーを包む「奇妙な沈黙」

新雑誌「FACTA」で何をめざすのか。一例をあげよう。「2ちゃんねる」などネット掲示板ではソニーが袋叩きにあっている。携帯オーディオ市場で6割のシェアを奪ったアップルの「iPod」に対抗し、かつての王者ウォークマンが巻き返しの決め手として11月19日に発売したばかりの「Aシリーズ」に対する怨嗟の嵐が、ネットで吹き荒れた。

不思議なことに新聞・雑誌はそれをほとんど報じない。広告主ソニーに気兼ねしているのかと疑われてもしかたがない。この奇妙な沈黙はまた、ソニー自身が演出しているのだろうか。苛立ってネットに殺到するクレームはほとんど一方的に「ソニー憎し」で、返品をあおるばかりだ。同情的な声があっても「おまえはGK(ゲートキーパーの略語、「仮面をかぶった回し者」の意味)か」と一刀両断である。

ブログは怖い。ネットの“蛮人”たちは落ち目のブランドと見るや、ここぞとばかりに痛めつける。だが、なぜソニーに直あたりしないのだろう。「臭いものにフタ」式なら日光消毒になるし、意識的または無意識の世論操作装置と化している既存ジャーナリズムを破って風穴をあけられる。落書きみたいなソニーの悪口を掲示板に書きこむだけではあまりに悲しい。対象からのフィードバックを欠いたネットは、対人恐怖症の裏返しである。

それなら、と思った。幸い、人に会って喜怒哀楽を引き出すのは苦にならない。どんなジャーナリズムも、取材と回答の往復運動から生まれる。それをネットで見せればいい。ソニーの「沈黙」を俎上にのせよう。だが、ウォークマンAシリーズやコピー制限機能付き音楽CDという、ソニーにとって致命傷と思える問題が続いたせいで他意はない。

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* 発行人 阿部重夫 *

編集長 阿部重夫

1948年、東京生まれ。東京大学文学部社会学科卒。73年に日本経済新聞社に記者として入社、東京社会部、整理部、金融部、証券部を経て90年から論説委員兼編集委員、95~98年に欧州総局ロンドン駐在編集委員。日経BP社に出向、「日経ベンチャー」編集長を経て退社し、ケンブリッジ大学客員研究員。 99~2003年に月刊誌「選択」編集長、05年11月にファクタ出版株式会社を設立した。

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