プラズマコンセプト東京代表取締役CEO 宮原秀一

プラズマで「無限の可能性」作る

2019年10月号 BUSINESS [ヴィジョナリーに聞く!]

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宮原秀一氏

宮原秀一氏(みやはら ひでかづ)

プラズマコンセプト東京 代表取締役CEO

1977年東京都葛飾区生まれ、41歳。2005年東京工業大大学院博士課程修了。08年プラズマコンセプト東京を立ち上げ、09年3月に代表取締役CEOに就任。

――大気圧プラズマとは。

宮原 プラズマとは、固体、液体、気体に続く物質の第4の状態で、非常に強い化学的活性力を持っています。大気圧プラズマは従来の真空プラズマより作るのが難しいのですが、真空発生装置が不要なので、人が直接スプレーで対象物にシューと吹き付けるように使えるので急速にニーズが高まっています。

――何に使えるのですか。

宮原 プラズマ自体は、以前から半導体の超微細加工や、有害なPCBの分解、環境中の有害物質の検出、高温環境づくりに使われてきました。ここに「低温の」大気圧プラズマができたことで、内視鏡を使っての止血や、植物細胞へのタンパク質の導入、やけどや床ずれの治療に使う研究が一気に進んだのです。表面処理への利用も盛んで私も大学で電波を吸収する特殊な塗料の塗り直し技術に携わりました。この塗料は剥がれかけたところへの上塗りが難しいのですが、プラズマを吹き付けると表面に官能基という「分子の手」がたくさん立ち、上塗り塗料がしっかりくっ付くのです。

――どういう形でビジネスを。

宮原 うちの会社は「こんなことに使うプラズマを作ってよ」というお客様の要望をなんとか実現したい、というのがそもそものスタートでした。ですから、最初はラボにある有り合わせの材料でバラックのようなプラズマ装置を作り、それで細々と実験していただく、などというのも珍しくありません。その上でコンサルティングやライセンシングをします。大気圧プラズマをどんな気体からでも作り出すのがうちの会社の一番の特徴です。一番難しかったのは炭酸ガスプラズマです。用途を考えずに作ったのですが、とある材料メーカーの方が炭酸ガス環境の火星に突入するとき物質がどのような影響を受けるか実験しに来られました。低温プラズマというのは他社にもありますがうちにはさらにプラズマを通じて電気が外に漏れ出ない、やけども感電もしないダメージフリーのプラズマを作る技術があります。開発当初「触れる」とは「人体に照射できる」ということを第一に意識していましたが、火薬をプラズマでコーティングしたい、というご要望をうかがった時に、この技術の「無限の可能性」を感じました。

――今後の展開は。

宮原 日本では製造現場が元気をなくし、次に企業の研究力が失われ始めています。トップの方の技術への興味が薄れてきたと感じます。弊社はいろいろな会社とコラボレーションしてきましたが、今後も「よその国に負けない技術を自社で持っておきたい」と言うガッツのある会社のサポートをさせていただきたいと思っています。

(聞き手/本誌編集人 宮﨑知己)

   

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