編集後記「風蕭蕭」

2018年4月号 連載
by 知

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脱原発大賞と自然エネルギー大賞の受賞団体の代表に、賞状を渡して功績を称える小泉純一郎氏

「2011年3月の事故の悲惨な状況を見て、原発推進論者の言っている3大スローガン『絶対安全』『コストが一番安い』『クリーンエネルギー』が全部嘘だと分かったから、いかに総理在任中、必要だと言っていたとしても、『過ちを改めざる。これを過ちという』との論語の言葉を思い出して、反省を込めて、今は(原発)ゼロだ」

(小泉純一郎元首相、3月7日、脱原発大賞・自然エネルギー大賞の授賞式)

原子力発電を強力に推し進めてきた自民党のトップだった者が、原発の再稼働に反対する「さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト」や、毎週金曜日の官邸前抗議を今も続ける「首都圏反原発連合」などの代表に、次々と賞状を渡し、活動を称え、握手をしていく。福島で原発事故が起きるまで、いったい誰がこんな日が来ることを予想したであろう。

やはり首相経験者の細川護熙氏と手を携えて始めた反原発運動。この世界では新参者だが、今や、「敵は電事連」とのフレーズを掲げる「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」の顧問だ。

最初のころは、あまりにも突然の変身ぶりに、先人から「安倍政権を利するための分断工作ではないか」などと訝る声も聞かれたが、最近はほぼ聞かれなくなった。

企業の経営者や経済学者の間には、年を重ねた後に、環境保護や自然保護の思想に傾倒する人がたびたび現れるが、政治家の世界ではまれだった。それがいつの間にか、小泉総裁のもとで長く自民党国会対策委員長を務めていた中川秀直氏も、原自連に副会長として参加している。

「自然に無限にあるエネルギーを活用して、国造りを始め、経済発展を図るほうがはるかに良い国になると、確信を持ったから始めた」

小泉氏は日本が原発ゼロになると読み切って行動している。

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