世界に羽ばたく! ファンケル・キッズベースボール

国際協力機構(JICA)がペルー日系人協会設立100周年を記念して野球教室を首都リマで開催。講師陣を率いる前巨人監督の原辰徳さんが抱負を語った。

2017年12月号 INFORMATION

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野球少年憧れの教室はキャッチボールから始まる!

11月19日、ペルー日系人協会の設立100年を記念して首都リマで野球教室が開催される。ペルーは1899年、南米で初めて日本からの移民を受け入れた国であり、現在10万人ほどの日系人社会がある。主催は青年海外協力隊のボランティア事業で知られる国際協力機構(JICA)。理事の鈴木規子さんは「ペルーはサッカーの人気が高いけれど、日系人にとって野球は日本とのつながりを再確認できる特別なスポーツです」と言う。

派遣される講師陣は、「総監督」の原辰徳さん(前巨人監督)をはじめ、元巨人の宮本和知さん、駒田徳広さん、元広島の西山秀二さん、元横浜大洋の久保文雄さんの計5名という豪華版だ。原さんは「言葉は通じないかも知れませんが、分かった時は『はい!』と言えるよう子どもたちに教えたい」と抱負を語った。原さんが推薦する元プロ野球選手がキャラバン隊となって全国各地を訪問し、野球教室を開催する社会貢献活動を続けてきたことが、今回の「ペルー派遣」に繋がった。

野球少年憧れの「ファンケルキッズ」

子どもたちが持ち寄った野球用具をあずかる原さんたち

無添加化粧品でお馴染みのファンケルの健康食品事業のパートナーを務めていた原さんから「子どもたちを笑顔にしたい」という野球教室開催の提案を受け、「ファンケル キッズベースボール」は2010年にスタートした。全国の小中学生を対象に、元プロ野球選手が「キャッチボール」「守備」「走塁」「打撃」と全てのカテゴリーを基礎から指導するイベントは人気を博し、8年目のこれまでに36回開催され、参加者が1万3千人を超え、野球少年憧れの野球教室になった。

「キッズの笑顔が世界の元気」をスローガンに掲げる、この教室の特徴は「野球を通してフェアプレーの精神を学び、用具を丁寧に扱うことによって物を大事にすることや、大きな声で元気よく挨拶することで、しっかりした礼儀を身につけることを目的としています」と、ファンケル副会長の宮島和美さんは言う。特筆すべきは、参加者が中心となって、使用しなくなった野球用具を持ち寄ってもらうことで、用具不足に悩んでいる国や地域へ寄贈する社会貢献活動に取り組んできたこと。「7年間に2万6106点の回収用具を世界15カ国と日本国内の外国人学校などに寄贈してきました」(宮島さん)

キッズベースボールとJICAが絆で結ばれるようになったのは3年前のこと。JICAが、子どもたちが持ち寄った野球用具の寄贈先になり、JICAから派遣された青年隊員がブラジル、ガーナ、ペルー、グアテマラなどへグローブやバットを運び込み、ボランティア事業に活用されるようになったからだ。

最近のキッズベースボール会場では、JICAから派遣された隊員が、子どもたちから寄贈された野球用具が、海外でどのように使われているかパネルを使って説明するなど、微笑ましい相互交流の輪が広がり出した。

「世界中の子どもを笑顔にすること」

ペルー大使館で開かれた記者会見

現在、JICAは東京五輪・パラリンピックに向け、スポーツ分野での国際協力を推進しており、野球講師陣のペルー派遣は、その目玉のプロジェクト。ペルーは2019年に開催される「パンアメリカン競技大会」のホスト国にもなっており、野球競技人口の増加が期待される。東京のペルー大使館で開かれた記者会見で挨拶に立ったフォルサイト・ペルー大使は「スーパースターに教えてもらえる子どもたちは大喜びだろう」と祝辞を述べた。原さん率いる講師陣は、日系一世が建設した東京ドームの2倍の敷地を誇るラ・ウニオン総合運動場で約100人の子どもたちや日本人学校の生徒たちに野球指導を行った後、日系人協会と交流し、JICAの防災協力事業やボランティア活動などを視察する。

原さんは「野球を通じてペルーの人たちにいい形のものを残したい。野球のレベルは高くないと思うが、種をまき、芽が出て、いつか大きな花が咲けばいいな」と語る。「『世界中の子どもを笑顔にすること』、それが多くの皆さんに支えられてきたキッズベースボールの最終目的です」(宮島さん)という言葉が耳に残った。

(取材・構成/本誌発行人 宮嶋巌)

   

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